3。 精霊王になっても働きたくない
3。 精霊王になっても働きたくない
はぁー。
精霊王なんて立場だと絶対なんか仕事とかあって忙しいだろ。
働きたくねぇ……働きたくねえよ。
しょうがない……思い切ってそこら辺のことをルシルに聞いてみるか。
「精霊王ってさ」
『はい』
「そのー仕事とか……忙しいでしょ?」
すると、ルシルは首を傾げた。
『いえ、そんなことはありませんけど』
「え? マジで?」
働かなくていいの!?
精霊王なのに?
『他の属性の精霊王の方々は何かしらしているそうですが、風の精霊はその性格から向いていないので、仕事とかは風の精霊の中でもしっかりした者たちがしています。 現に前代の精霊王様は特に何もしなかったので私が代わりに精霊たちをまとめていました』
ヒャッホーウ!
マジかよ、働かなくていいのか!
ラッキー!
てか、前代の精霊王は何もしてなかったのか。
我と同類だな!
なんかシンパシー感じちゃうわ。
「てことは我が望めばルシルが今まで通りに風の精霊たちをまとめてくれるってこと?」
『精霊王様がお望みとあらば』
よっしゃあ!
我は心の中でガッツポーズした。
いやぁまさか精霊王になっても働かなくていいなんてなぁ。
しかも、よくよく考えれば風の精霊全部が我の手下になった様なものだろ?
最高じゃねえか!
……ん?
まてよ……精霊王になったということはだ。
手下を手に入れただけでなく、強大な力を手に入れたということでもないか?
ほら、具体的にいえば魔法とかそういうのだよ。
「そういえば我は精霊王になったのだから、そのー魔法とかって使えちゃったりするの?」
『もちろん使えますよ』
マジかよ!
やべえ……忘れたはずの黒い歴史が蘇りそう。
『というか精霊王様ほどの方になれば身体の一部の様に思うがまま自由に風を操れると思います。 もちろん鍛練すればより強い力も使えるようになるかと』
「マジ?」
『とりあえず、やってみましょうか。 まず右手を出して掌を上に向けてください』
「こうか?」
我はルシルに言われた通りに右手を出して掌を上に向けた。
『そうです。 あとは掌の上に風を集めようとして下さい。 軽くですよ』
「わかった」
我は右手の掌の上に意識を集中して軽く風が集まるようにやってみる。
すると、段々と周囲から風が集まるのを感じ、やがて掌の上に小さな風の渦が出来上がった。
「本当に出来ちゃったよ」
『おめでとうございます。 流石は精霊王様ですね。 いきなり成功してしまいました』
「あ、ありがとう」
マジで出来ちゃったよ、魔法。
本当に精霊王ってのは凄いんだな。
それとも我の才能が半端ないとかか?
……それよりこの風の渦はどうしたらいいんだ?
「ルシル、これどうしたらいいの?」
『そうですね。 どこかに飛ばしたりも出来ますが、今は周囲に散るようにしてみてください。 それで消えます』
ルシルの言った通りに風の渦を周囲に散るように、周りに馴染むような感覚でやってみる。
すると、風の渦はすぐに周囲に溶けてなくなるように消え去った。
『完璧です。 これが風の基本です』
「いやー簡単だな。 やっぱり我は才能があったりするのかなー。 なんつって」
『……』
「いや、そこは何か言ってくれよ」
『今の精霊王様なら周囲の風を自由に感じることが出来るはずです。 目を閉じて意識を集中してみてください』
「……はい」
微妙にルシルにスルーされた我だが気にせずに目を閉じて意識を集中する。
すぐにこの部屋の中だけでなく色々な場所の風を感じることが出来た。
ただ、少しだけ気分が悪くなってくる。
『どうやら出来たようですね』
「なんか気持ち悪いんだけど」
『慣れていないのにいきなり遠くの風を感じ過ぎているからです。 とりあえず一度やめてください』
言われた通り我は風を感じるのをやめて目を開いた。
『本来であれば少しずつ風を感じられるようになっていくのですが、精霊王様はいきなり精霊王となったので力が強過ぎて頭が付いていけてないのでしょう。 慣れれば無意識でも風を感じられるようになるはずです』
「そうなのか」
ん?
今のルシルの言い方だと、まるでいきなり精霊王になるようなことは珍しいと言っているような。
「もしかしてだけど」
『はい』
「いきなり精霊王になってしまうのって珍しいの?」
『普通はあり得ないことですね。 通常、精霊王に選ばれる存在というのはその属性の中でも強力な上級精霊が選ばれるのが殆どですから』
あー、やっぱりそうなのか。
というか、そりゃそうだよな。
ポッと出の奴がいきなり精霊王に選ばれる訳なんて普通ないよな。
『それに人間が精霊になったなんて話は数千年間なかったと思います。 もしかしたら精霊王になった人間は精霊王様が初めてかもしれません』
うわぁ……マジかぁ。
人間が精霊になったりはしないのか。
もしかして、これって周りの精霊に良く思われていないんじゃね?
「我は精霊の中でどう思われてんの? もしかして風の精霊たちが反乱とかしない?」
『それは大丈夫だと思います。 風の精霊はそこら辺適当ですから』
「よかったー」
いきなり風の精霊たちが反乱を起こして我を殺しにくるとかはないのか。
『ただ』
ん?
『他の属性の精霊たちが精霊王様をどう思っているかは知りませんがね』
「え? それって大丈夫なの?」
『まぁ精霊王というのは基本的に絶対の存在なんで大丈夫だと思いますよ……多分』
いや……えー。
多分とか言っちゃう?
そこは我を安心させるとかじゃないの?
『少しでも早く精霊としての力を使いこなせるようになってください』
「……はい」
結局は早く自分の力を使いこなせるようになって自衛しろということですね、わかりましたよっ!
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