2。 精霊という存在
2。 精霊という存在
「うぅん……はっ」
我は唐突に目が覚めた。
というか何で我は眠っていたんだ?
ここはどこだ?
まぁとりあえず言っておかねばならないことがある。
「知らない天井だ」
よしっ言ったぞ!
言ってやったぞ!
てゆうか本当にここは何処なんだよ?
我はゆっくりと身体を起こして周囲を見る。
どうやら我は知らない部屋で知らないベッドに寝かされていたことがわかった。
あとベッドの傍に母ちゃんが穏やかな顔で寝息を立てていた。
「母ちゃん……ッツ!?」
母ちゃんの顔を見たことで我はすべてを思い出した。
母ちゃんと見知らぬ男たち。
それにあの精霊王という存在。
現実とは思えない出来事。
あと精霊王という存在と交わした契約。
あれはよかったのだろうか?
でも、母ちゃんは助かったんだよな。
現に母ちゃんは気持ち良さそうに眠っているし。
それなら結果的に良かったのだろう。
……しかし、今でも信じられない。
「あれは本当にあった出来事なんだろうか? それとも夢?」
『いえ、すべて現実の出来事ですよ』
「ッツ!?」
突然、母ちゃんが眠っている位置とは反対側から声を掛けられた。
驚いて我は声を上げそうになったが、なんとか止まる。
我は恐る恐る声がした方向に首を向けた。
すると、そこには緑色の透き通った半透明の女性が空に浮かんでいるではないか。
「……」
見つめ合う我と浮かんでいる女性。
そこで我は高速で頭の中を回転させる。
その結果、一つの答えが我の中から導き出された。
もしかして、こいつ精霊じゃね?
我はその女性に声をかけることにした。
「あのー……もしかしてなんですけど……精霊さんだったりしちゃいますかね? ハハッ」
『はい。 私は風の上級精霊でルシルといいます。 おはようございます新たな精霊王様』
うわーマジかぁ。
マジで精霊なのかー。
やべえなぁどうしよう。
なんか精霊王とか言ってるけど、どう考えても我のことだよなぁ。
すげー面倒なことになりそう、
「えっと……ルシルさん?」
『呼び捨てで構いません精霊王様』
「あっはい」
『敬語もいりません』
「わかり……わかった」
『それでどのような御用でしょうか?』
「あのー我がその新しい風の精霊王ってのになったのは、なんとなーく理解したんだけど、精霊ってなにさ?」
『はい。 精霊というのはですね』
ルシル曰く、精霊というのは自然の化身のような存在で、この星が生まれてから存在し、何処にでも居るらしい。
普通の人間には姿も見えないし、感じることも出来ないと。
精霊にはそれぞれ属性があり、主な属性は【火】【水】【風】【土】の4つだとか。
そして精霊には位があるようで、下から【玉精霊】【下級精霊】【中級精霊】【上級精霊】【精霊王】順になっていて上にいくほど力が強いらしいよ。
ただ、精霊王は各属性に一体しか存在せず、精霊王と同じ属性の下の精霊たちは皆精霊王に従うのだってさ。
ハハッ……笑えねぇ。
『わかりましたか?』
「あっうん」
ここまで聞いていて全くわからないことがある。
それは何故我がその精霊王とやらになったのかだ。
だって、どう考えたっておかしいじゃん。
今まで我は特別な力を持っていたとか、そういうことも無く、精霊の存在も知らないただの平凡なニートだった筈だ。
それがどうして突然に精霊王になるんだよ!
「聞いていい?」
『はい。 何でも聞いてください』
「ぶっちゃけ何で我が精霊王になったの?」
『前代の風の精霊王様が指名したからです』
「いや、それは分かるんだけど何で我が指名されたの? それと前代の精霊王はどうしたのさ?」
『前代の風の精霊王様は新たな精霊王を決めた後でお亡くなりになりました』
「え?」
前代の精霊王死んじゃったのかよ!?
『風の精霊というのはマイペースでのんびりな性格の者が多いのですが、その例に漏れず前代の風の精霊王様もとても自由な方でした。 そんな性格なので今まで自らの後継者を指名していなかったのです』
それでいいのか風の精霊王?
『しかし、月日が経ち前代の精霊王様は自分の死期が近いことを悟りました。 そこで前代の精霊王様は自分の後継者を探していたらしいです』
「はぁ?」
『そこで見つけたのがアナタだったそうです』
「……ん?」
いやいやいや、ちょっと待て。
そこでどうして我が出てくる?
『前代の精霊王様は死の間際に私に言いました。 幼い精霊王を助けてあげなさいと。 そしてこうも言いました。 ……ぶっちゃけ後継者とか誰でもよかったから近くにいた奴を選んだ、反省はしていない……と』
「おいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
何適当に決めちゃってんの風の精霊王!?
そこはもっと大事な理由があったりするところじゃないのかよ!?
それに誰でもいいなら自分の死期を悟る前に後継者決めておけよ!
ていうか我じゃなくてもっとやる気のある奴を指名しろ!
「……うーん」
あっ!
やべえ、つい大声を出してしまった。
母ちゃんが起きてしまう!
「むにゃむにゃ……コッペパンマン……くー」
……ふー、どうやらセーフのようだ。
てか、コッペパンマンって誰だよ。
どんな夢見てんだ母ちゃん。
それより精霊王のことだ。
絶対このまま精霊王なんてやってたら面倒なことになるに違いない。
なんとか辞められないか?
「精霊王って辞めることとか『無理です』知ってた」
我はベッドに力なく倒れこんだ。
「……知らない天井だ」
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