この作品を語るにあたって真っ先にお伝えしたいのは、この物語の世界観が、架空のものとは思えないほどのリアリティを持っているということです。
チートな転生者が「救った」後の社会の貧富格差、迫害されて人間に恨みを持つようになったゴブリンの残虐性、種族間の文化の齟齬——
見たことも触れたこともない世界が「確かに存在する世界」として、いつの間にか私の中にしっかりと像を結んでおりました。
登場人物も非常に魅力的です。
物語は、流れ者の女用心棒・クロウと、彼女の依頼人であるエルフの青年・ロランを中心に展開していきます。
世間擦れしたクロウと、世間知らずなロラン。
最初はソリの合わなかった二人ですが、幾たびものピンチを潜り抜け、互いのバックボーンを知り、信頼関係で結ばれていきます。
この、一言では名状できない二人の関係が、身悶えするほどツボに入りました。
また、アクションシーンも非常に読み応えがあります。ひたすらに格好いいです。お手本にしたいぐらい。
作者様の確かな知識によって綴られるバトルは、疾走感と躍動感、そして重厚感があり、まるで目の前で起こっている出来事のように脳裏に描き出されます。
クロウの異名である『ファントム』が表す通り、彼女の残像の幻を見たような気すらしました。
紙の本で読みたいと思えるほどの、素晴らしい作品。もっと多くの人に読んで頂きたいです。