第3話
「……つきましては社長、次の会議の予定の件についてですが……」
「あぁ、それなら問題無い。こちらで既に手配済みだ。」
とある日の社内での会話。
来週大手食品会社との共同開発の予定があるらしい。
昼食の時間を忘れ、ただ一心に仕事に取り組む。三日分、一週間分、普通ならそれ以上になるであろう仕事量を、ほぼ1日だけで終わらせた。
この会社に''無駄''はいらない。
実力の無いものは落ちていくだけ。
社会なんて、人なんてそんなものだ。
そういえば、すべてを切り捨て、社員ですら時に冷酷に扱う自分を
「怪物と比喩する人間もいたか。」
ふふっ、と呆れた笑いが零れた。
「……おい、聞いたか?うちの社長。」
「あぁ知ってるよ。あの香山大学をトップで卒業して、浅見高校も確か全国模試、テスト共に1位で通過してた人だろ?」
「ほんっと怪物だよな……どんな頭脳してんだろ。」
「社員をまとめあげるカリスマ性もあるし、あぁいう天才にはかなわないんだろうな。俺たちは。」
一週間後
例の食品会社との仕事帰り、普段は滅多に入らないが、久々に家のコーヒーメーカーで作ったコーヒー以外のものも口にしたくなり、カフェに入った。
窓際の席に座る。
このカフェはとても居心地がよく感じた。
店員にブレンドコーヒーを一杯頼み、待っている途中、以前一度部下の女に結婚はどうするのかと尋ねられたことをふと思い出した。
恥ずかしいことに自分には恋愛経験が26になった今でもない。
好意を寄せられたことはあるが、どうも相手を好きになれないのだ。
ただ、唯一好きという感情を抱いたのが……
「おまたせしました。ブレンドコーヒーでございま……あっ!」
……彼女だった。
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