第2話 素晴らしい高校生活とは…
あれから一週間が過ぎたある日のこと。
俺の引き出しの中に一枚の封筒が入っていた。俺はその封筒を誰にも見られないように、こっそり中を開けた。封筒だけはでかいのに、中に入っていた紙はとても小さかった。紙によると、
『今日、放課後に体育館ウラで待っています。
なるほど。岡野からの呼び出しの文書か。でも、なんでまじめな岡野がこんな俺を呼び出すのだろう。まさか…そんなわけないよな。
放課後までずっとそのことを考えていた。そのせいで授業が全く頭に入ってこなかった。そもそも、俺が思うに、素晴らしい高校生活とはこういうものなのではないのか?それを一言で表すと、ズバリ青春。恋愛がある日々って最高に素晴らしいじゃあないか。
放課後。
俺は手紙の通り、体育館ウラへ行った。何を言われるのか気になって、自然と鼓動が速くなっていく。
「ごめん…待たせたか…?」
「ううん…。呼び出したりしちゃって…ごめんね…」
「何の用?」
岡野は赤くなった顔を髪の毛で隠しながら、少しうつむいた。…何も考えなしにそんなことを訊いた俺がバカだった。わざわざこんなところにまで呼び出しているんだから、『告白』に決まっているだろうが。
「あ…あのね…私、中学の時から高田君のこと…す、好きで…それで…私と付き合ってくれませんか…?」
「だめよ!」
突然、荒々しい声が割り込んできた。後ろを見ると、浅海が立っていた。いつからいたんだ、こいつ。
浅海はゆっくりとこっちに歩いてきた。
「付き合っちゃだめよ」
気の弱い岡野は、告白を他人に聞かれて顔を真っ赤にするどころか、ちょっとキレたらしい。
「なっなんで、浅海さんにそんなこと言われなきゃいけないの!?け、権利なんかないくせに」
「権利はある」
浅海はポケットからモデルガンを取り出して、俺の頭の横につけた。俺を殺す気か…お前…!お前がここ一週間しょっちゅう俺に話しかけていたのは、それが理由か…!?
「こいつは私の獲物。あなたにいろいろ言われる必要はないの」
それを聞いて、岡野は涙を流した。よっぽど悔しいのか?乙女心ってやつは分からないなあ。
「高田くん…あの…また今度ね!」
岡野は走ってどこかへ行ってしまった。残されたのは俺と浅海。浅海はふうっとため息をついた。
「さてと…あなたは私と付き合う義務があります。高田圭人」
「はあ?なんでだよ!?というか、なぜフルネームで呼び捨て…」
「あんまりうるさいと、これ引くわよ」
浅海は笑顔のままモデルガンを持つ手の力を強くする。分かったから、殺さないで…。
俺のあせった表情を見て、浅海はけらけらと笑った。でも、それだけで終わりじゃなかった。あまりの至近距離に目をそらしていると、浅海の顔がどんどん近づいてくる。
「ちょっ…浅海…それだけは…やめ…」
たちまち俺は押し倒され、意識を失った。薄れていく意識の中、かすかに浅海の声が聞こえた。
「契約完了。せいぜいあっちの世界でがんばってね、高田くん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます