第9話〜未来への一歩〜

「サクラ、起きてる〜?って、ごめん、取り込み中だった?」

 そう言ってアスカちゃんがいきなりテントに入ってきた。私たちはびっくりして、お互い体を離した。

「ごめん、ごめん。サクラ全然起きないからさ、ちょっと心配だったんだよ。」

「え?どれくらい寝てたの?」

「なんと、丸2日!」

「2日!?」

 そう言われてびっくりする。2日も寝てたんだ・・・。

「まあ、起きてよかった。それで、色々思い出したの?」

「うん。あの日の事も、思い出した。」

 あの日、私はたしかにアスカちゃんと約束した。叶わないかもしれない夢を。

「ベスト王国の、再建。」

「・・・うん。」

 あそこでの日々は幸せだった。だから、もう一度、この国を復活させたい。

「色々終わったら、またみんなで考えよ。」

「そうだね。」

 今は、目先の問題を解決しなきゃ。

「ねえ、二人とも第五艦に所属してる『ヒンメル・アンジェロ』って人知ってる?」

 私がそう聞くと二人とも首を傾げる。う〜ん、どうしよう・・・。本部長に聞いてみようかな?

「その人が、あいつらをなんとかする鍵なの?」

 フウくんがそう聞いてくる。私はしっかりと頷いてから話した。

「そう、その人のご先祖様と、私のご先祖様があいつらの事を突き止めたんだ。向こうはその記憶はないらしいけど、多分力になってくれるかもって・・・。」

「そうか・・・。」

 そう言って二人は悩む。当たり前だけど、こんなところで不確定要素を入れたくないんだと思う。

「・・・もしかしてその人って、アンジェロ王国のお姫様?」

 そう聞いたのはアスカちゃんでも、フウくんでもない。カエデだった。

「カ、カエデ!いつの間に!」

「いや、今来たんだけど、聞いたことある名前だなって思って。」

 カエデは平然とそう言う。え?待って、今・・・。

「カエデ、聞いたことあるってどこで!?」

「え?う〜んと、あのベルゼブル・マルベイって奴らの下で働かされてる時に聞いたんだ。『あの姫の捕獲は失敗したらしい。ならば、我らが成功させなければ・・・。』みたいなのを・・・。ってか、俺の質問!あってんの?」

「あ、うん。そうだよ。アンジェロ王国のお姫様。」

「ふん!やっぱりな!」

 そう言って誇らしげなカエデはなんだか可愛かった。でも、今はそんな事言ってる場合じゃなくて。

「なら、カエデ!その人どこにいるか知ってる?」

「ん?たしか、MEAが保護したって聞いたぞ。今度はその人探すのか?」

 カエデがまさかの情報を出してくれたおかげで、思ってたよりも上手く行きそうな気がしてきた。まずは本部長に掛け合って、会わせてもらえるようにお願いしよう。とにかく、会わないと何も始まらないから。

「そう。とりあえず、本部長に確認して本人と会わなきゃね。」

「分かった。その辺は任せる。あ、フウも一緒にいた方がいいんじゃない?」

「そうだね。一通りは話せるし、とにかくまずは一度会おう。会って話して、それから考えよう。これからの事を。」

「ああ。俺、やっとサクラたちの役に立てそうな気がしてきた!」

 こんな風に話してると、なんだか懐かしい感覚に襲われる。前世の記憶がなかった頃はもっと漠然としてたけど、今は違う。ずっと昔にこんな事があったって確信が持てる。その事が嬉しくて、少しだけ、ほんの少しだけ、笑ってしまう。

 そして目に入るのは、ご先祖様、サクラさんからもらった弓。これをしまうのは、きっとこの指輪だと思って、フウくんにもらった指輪にしまう。

「そうと決まれば善は急げだね!サクラ、行くよ!」

 そう言ってフウくんが私の手をひく。いつも通り、優しく。

「うん!」

 そして、私も一歩踏み出す。今までとは違う、未来への確かな一歩だと、信じて・・・。

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