最後の戦い
第1話〜協力〜
本部長に掛け合って、第五艦の艦長とも話し合って、ようやく今日、ヒンメル・アンジェロ姫こと、三波そらさんに会えることになった。
「いよいよだね。」
「うん、いよいよ。」
フウくんとそんな話をしながら到着を待つ。向こうは少し遅れてるみたい。なんだかソワソワするな。
コンコンッ。
そのうちにノックの音がする。
「どうぞ。」
「失礼します。」
先に入ってきたのは顔の整った男の子。二人で来るって言ってたからそっちには驚かなかったけど、続いて入ってきた女の子にびっくりした。
「失礼します・・・。」
とても可愛い顔立ちだったけど、それにはふさわしくないほど、目の下には真っ黒な隈が出来ていて頬も少し痩けていた。
「魔導師専門管理局第五艦所属、ワタル・リッターです。」
「同じく、三波そらです。」
二人は私たちの前に来るなりそう挨拶してくれた。
「ご足労ありがとうございます。魔導師専門管理局本部所属、フウ・ガルディアンです。」
「同じく、サクラ・フルールです。突然の呼び出しに応じていただき、ありがとうございます。まずは、座りましょう。」
私たちも同じように返す。それから、話しやすいように座るように言うと、二人は「失礼します」と言ってからソファに腰掛けた。こう見ると二人とも私たちと同い年くらいに見えた。
「さっそく、今回出向いてもらった理由をお話します。」
そして、私たちは事の経緯を説明した。二人とも真剣に聞いてくれて、時には質問もしてくれたからスムーズに話は進んだ。
「なるほど、それで、そらが必要なんですね?」
基本的に、ヒンメル・アンジェロとしての記憶を持たないそらさんのために、現在の名前を使って話すことになっていた。
「そう。協力してくれますか?」
私がそう聞くと、二人は悩んでいた。当たり前だよね。いきなり、知らない人たちに自分の前世が関係している事件が起きてるって言われて、それに協力しろなんて言われても、よくわかんないよね。
「あの、今の話と関係ないかもしれないんですけど、少し、私の話を聞いてくれますか?」
そう言ったのは意外にもそらさんだった。さっきまではあまり話さなかったけど、何かあるのかな?
「そら、大丈夫?まさか、あの話?」
「うん。でも、大丈夫だと思う。」
ワタルさんも少し心配していた。本当に何かあるのかもしれない。
「聞かせてくれますか?」
「はい。」
そらさんはそう言って深呼吸をしてから話始めた。
「実は最近、夢を見るんです。アンジェロ王国に一回行った事があるんですけど、そこでの夢。」
そこまで言うと、もう一度深呼吸をした。
「今、アンジェロ王国は再建中なんですけど、完成したアンジェロ王国が、どんどん壊されていく夢。」
それは、かなりの悪夢だと思う。一度行った事があるなら、もしかすると大切な人がいるかもしれない。その人が、頑張っているかもしれない。でも、それを全て壊されたら・・・。
「その夢の中で私何も出来なくて、ただ、見てるだけなんです。それで、その壊してる人が振り返った所で、いつも目が覚めて、おかげで寝不足なんです。」
これで、目の下の隈の説明も出来た。そして、もう一つ。
「あの、その人ってこの中にいますか?」
それは、ベルゼブル・マルベイとディーアブル・マルベイ、そして、この二人を作り出した人の画像だった。
「あ、この人です!この人に似てます!」
そう言って指差したのは作り出した張本人。
「やっぱり。」
フウくんと顔を見合わせる。この事件、二つの次元が関係してる。
「同じ人物が、二つの次元で事件を起こす可能性があるって事ですか?」
「そう言うことです。」
ワタルさんの問い掛けに、私たちは頷いた。ここまでくれば確信だと思う。早く手を打たないと、手遅れになってしまう。
「それ、どうしたらいいんですか?」
そらさんが不安そうに聞く。どうすればいいのか、まだよく分からない。でも、やるしかない事もあるのは事実。
「それは、一緒に考えられたらいいと思っています。協力、していたたげますか?」
もう一度、確認する。
「私は、協力します。・・・ワタルくんは?」
「俺も、協力します。」
「ありがとうございます。」
これで、一緒に戦う仲間が増えた。
「これから、よろしくお願いします!」
お互いにそう言い合って、この日は解散となった。
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