第10話準決勝(上)

「やっときたか。霧飛 羽矢人。」

「待たせた。轟 優香。」

なぜか僕ではなく響華が答えた。

「お前には言ってないのだがな。綾瀬響華。私が呼んでいるのは霧飛 羽矢人貴様だ!それじゃあ行くぞ!せやああああああ!」

「私を放って羽矢人のところには行かせない!綾瀬式水面撃ち!」

響華の撃った銃弾はその名の通りまるで水面を滑るかのように轟へと向かって行った。(響華が使っているのはゴム弾。)それは見ているものもまるで時が止まっているかのようなとても綺麗な撃ち方だった。

「準決勝までは技も使っていなかったのか…凄いな。」

だが、凄いのは響華だけでは無かった。

「そんな弾私に当たるわけがなかろう…轟流剣術一の太刀。」

そう言って轟は剣を払った。そしてその後に聞こえたのは真っ二つに斬られたゴム弾が後ろの壁に当たる音だった。

「私の剣は後の先。先に仕掛けたお前はもう負けだ。轟流剣術後の太刀。」

「うっ…くっ…」

「響華!大丈夫か!お前…よくも響華を!」

「羽矢人…私なら…大丈夫。羽矢人は下がってて…これは私の戦い。羽矢人、私を信じて。」

「響華…」

「まあそもそも霧飛 羽矢人貴様が弱いせいではないのか。さあ立て綾瀬 響華。まだ終わってないぞ。このままだとこの弱いだけで脳がないお前の大切な霧飛 羽矢人が死ぬぞ!」

「羽矢人は私が守る!あの時そう誓った。私は羽矢人に守ってもらった。今度が私が守る番だ!」

そう言って響華は自分が愛用しているイーグルの横の突起に手をかけた。

「ただ何も知らずに、何も背負わずに戦っているあなたと私は違う!そんなあなたには私は負けない。行くよ。イーグル!リミッター解除!」

すると響華の周りの空気が波となって広がった。

「ほう。それが綾瀬家の奥義か…一筋縄では行かなそうだな。」

そう轟は言うと刀に手をかけた。

「それではお手並み拝見といこうか。轟流剣術颯の太刀。」

するといくつもの斬撃が響華へめがけて飛んで行った。何処にも逃げられないと思った。だがしかし、

「綾瀬流極 弾嵐!そんなものか轟!ならば私から行かせてもらう!秘技 霧撃ち!」

「バカな…斬撃を全て打ち返すだと。ふっ面白い轟流剣術後の太刀。」

響華から放たれた銃弾は無数の残像に分かれ轟を襲った。たしかに後の先はカウンターに秀でていて、先に仕掛けた響華の攻撃は受け流され攻めと受けが逆転するはずだった。ただ一つ違うところがあるのなら今の響華はパワーのみならず速さまでを全てを轟を上回っていた。

「ぐわああああああああ!」

「くっ…」

「響華!大丈夫か!無茶しやがって…こんなにボロボロになってまで…どうして…」

「羽矢人は2年前に私を助けてくれた…私はそんな羽矢人を守りたい…いや守らせて欲しい…」

「でも…響華、そんな体じゃ…」

こんなんじゃだめだ…俺はこんな可憐な女の子に守られていては…

「響華…俺は…俺は響華に傷ついて欲しくない…俺が響華を守るから!響華を…」

「羽矢人…ありがとう。だけどだめ。私は羽矢人を守ると決めた。だから羽矢…」

だがその時だった。俺たちをめがけて無数の斬撃が飛んできた。

「甘いな綾瀬 響華!そんなことで私がやられるとでも思ったか!轟流剣術覚醒!」

すると轟の剣の周りに龍のオーラがまとわりついた。

「私の家は龍神と契約した家。この覚醒した龍の力、目にものを見せてやる!轟流龍の太刀!」

龍が俺たちを回っている。この光景何処かで…あの日、2年前、俺は…


「羽矢人。私と一緒に週末吉祥寺に買い物行こうよ!」

「なあ轟買い物じゃなくてその…俺は井の頭公園に遊びに行きたいんだけど…」

「ねー羽矢人。轟じゃなくて優香でしょ!もうせっかくのデートなのに…か〜い〜も〜の〜にい〜き〜た〜い〜」

「ああもうわかったわかったから。な。一緒にPARCOでも行こうか。優香。」

「うん!私ね私羽矢人に服を選んで欲しいの。」

そうだあの日俺は優香と一緒にデートに行って…

「しかしほんとにこのPARCOはいつ見てもいろんな店があるよな。」

「そうね私もあんまり全部は見れてないかな。」

「優香でも見てない店があるのか…じゃあ今日はそうゆう店も見て回ろうな。」

「うん。あっ羽矢人私あの店行きたい!」

おいおい行ったそばからこれかよ…きょうは帰りが遅くなりそうだな…とほほ…

「羽矢人!この服似合うかな?」

「あー似合うと思うよー」

「何で棒読みなのよ!もっと見てよ!ほらこっち。」

「ばっばか。優香ちょっまっ。てうわあああ。」

優香はそう言って俺を更衣室に…って何で!?

「私は羽矢人の彼女…じゃなくて許嫁なの。他の女の子に目移りしちゃだーめ。」

「いやまあ確かに優香は俺の許嫁だけど…更衣室の中には…ほら俺も一様男だし…ね。」

「良いもん。羽矢人なら別に…その…私の着替えてるところ下着姿を見られても…ほらだってこの後…ホテルでその…ごにょごにょ。」

「まっまてなんか誤解があるぞ。というかこの後そんな…こと…するつもりだったの!?」

「うっうるさい!羽矢人は私だけをみてればいいのよ!ほら…早く選びなさいよ…全く。」

この後も俺たちは色々な店を回った。(ほとんど優香の服選びだったけど…)そしてその後に俺たちはカフェに行ったんだ…

「このチョコバニラストロベリーナットウスムージー美味しいね!羽矢人!」

「ちょっと待て。いま何か変なの混ざってなかったか?」

「そうかなぁ?私はとても美味しいと思うけど…ねえ羽矢人。」

「どうした響華!そんなに真面目な顔して。やっぱりさっきのスムージーに変なものが…」

「そんなに私って真面目に見えないかな〜?それよりも羽矢人、少し話を聞いてくれるかな?」

「ああなんだ響華?」

「あのね…私…いや轟家はね鎌ヶ崎陣営につくことになったの。」

「優香…どうして!」

俺の家霧飛家と轟家は本家と分家の関係。ただ霧飛家の縮小問題で分家と本家を合併することになってそれで…俺たちは許嫁の関係に…

「羽矢人実はね…ううっぐすん。」

「おい泣くなよ。どうしたんだ!」

「実はね…私の妹が…ね…鎌ヶ崎家に人質に取られてて…それで…私は羽矢人の許嫁になれなくなっちゃって…」

わーい\(^o^)/やったー。

「なんで羽矢人は…私のこと好きじゃないの!それで…今日鎌ヶ崎家は反乱を起こすつもりで…」

「それってつまり…学園にも影響が出るんじゃ…」

「うん。私たちは今から学校内の羽矢人たちの仲間を捕らえて人質にしないといけないの…だから羽矢人には逃げて欲しい。私には羽矢人が傷ついている姿を見たくないの!」

「優香…俺はお前にとってそんな存在だったのか?」

「違う…私は羽矢人に…」

「だめだ優香俺はお前を救う!俺はお前の彼氏だろうが!俺を信じろよ!優香!」

「私は…私は…私は羽矢人と一緒にいたい。ただそれが叶わないことくらいわかってよ!私に淡い期待を抱かせないでよ!喜ばせないでよ…」

そう言って優香は走り去って行った。

「おい!優香!待てよ!」

俺は優香を追いかけた。ただそこには優香はもう居なかった…

「なんで…なんで優香は…」

その日は入学式と同じくらい空が澄んでいて気持ちのいい日だったのに…

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