第2話 感無量と胸騒ぎ


ちからが使えないのは・・・まるで、体の機能が整っていないみたいだ。


俺は・・・今、自分と戦っているのか?


やめろ、やめろ・・・ただ、俺は能力を取り戻したいだけなんで。


どうしたらいいんだ。教えてよ・・・・母ちゃん。


――――最悪、いや、さいわい、俺は今あやめのとなりにいる。


俺の高校時代の同級生にして、陸上部の部員の俺と、マネージャーの

あやめの腐れえん、いや、関係だ。

俺らは、よーく分かり合える仲なのだ。


銀河ぎんがくん、大丈夫?水分とる?」

「ああ・・・ありがとう、そうする」


まるで、その時・・・部活でのやり取りのようだ。

俺はあやめから、駅のホームで買ったペットボトル飲料をもらう。

いったん、水分をとって気を落ち着ける。


俺はここのところ、ご自慢の能力・テレパシーが使えないのだ。

その悪影響で、体調もかんばしくない。病気ではないんだが、

たまに耳鳴みみなりがしたり・・・立ちくらみがしたり・・・・

今は、あやめのおかげで大分だいぶ楽になった。


なんにせよ、これから一応、同窓会どうそうかいに出なければいけない。


ともに青春をすごした、IイベントCクリエイトCサークルの仲間たちに会いに・・・・


東京某所ぼうしょの駅を南口に降り、俺とあやめは飲み会の会場へむかった。


徒歩とほで10分。そう遠くない。午後5時だから、3時間もあれば十分、

終点にも間に合う。


「どこかわかるか?」俺はまたも、あやめを頼って、声をかける。


「うん、ちょっと待ってよ。このまままっすぐ・・・

 ああん、向きがかたむいちゃった!」


あやめは、タッチパネル式の携帯電話に映るGPS機能を見ている。

俺たちは南口から出てきたんだから、北も画面に書いていてあるなら、方角くらい

見当けんとうがつくはずなんだがな・・・・


かくして、俺たちは25分かけてようやく、目的地に到着した。


「へ~ええ、もうへとへとだよ・・・・」


―――唐草からくさあん


東京都内の料亭りょうていとしては、唯一3つ星をいただいているらしい。


食通しょくつうもうなる大将たいしょうの料理の腕は、口コミを通じて有名だ。


I・C・Cの部長・峰岸みねぎし良太りょうたの兄、良平りょうへいさんを通じてこの店を紹介して

もらった。やはり、良平さんは顔が広いや。


「ねえ・・・」「ん?」

あやめが、静かに声をかける。


「――倉敷くらしきくん、元気だといいね?」


「ああ・・・・・」


元部員のことを気遣っているようだ。も、出席しているはずだ。


俺たちは、みょうな胸騒ぎでのれんをくぐる。


――――――――


「あ、来た来た。」


「よお銀河くん、佐世保させほさん。こっちこっち」


「あ・・・・お久しぶりです!」


峰岸部長に手招きされて、俺とあやめは予約部屋に入ってきた。

空間は和室で、緑のたたみがかれている。

たたみのふくよかな香りがただよい、だいだい色がかったふすまには、伸びている枝に

小鳥がとまっている水彩画の描かれた、だいぶ風流ふうりゅうを感じられる部屋だ。


さて、出席しているのは・・・


峰岸良太、藤崎奈那なな横島よこしま絢斗けんと下村しもむら克嗣かつじ、北島康広やすひろ・・・

そして・・・・倉敷くらしきみつる


ついでに言うと・・・顧問の山縣やまがたのじいさn・・・先生もいた。


欠席は、平手ひらて茉莉まつり


「あー、せんぱーい。ちょっとふとうなりましたぁ?」


と、関西弁でいうのは、お笑いを目指す下村だ。ほっとけや。


「その点、あやめ先輩はべっぴんでかわらへんなあ」


と、下村につづいて、彼とはコンビを組んでいる北島が言う。


「やんだー、北島くん、オンナ見る目ある?」と、調子に乗るあやめ。


しかし、なんだろう。みんなふざけているのに、この・・・わが家へ

帰ってきたような感覚。

ほっとするような・・・そんな感無量かんむりょうにしたっていた。


「さ、いいから座って座って~」


と、いつとなく元気にこちらへ誘うのは、奈那さん。

たぶん、俺の初恋の人だ。こんなこと言ったら、あやめは怒るだろう。


そして、肝心かんじんな倉敷は・・・?


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