アネさんと理想の結婚相手 2

「お金は、ほどほどがいいですね」

「ほどほど? お金持ちがいいでも、愛さえあればお金なんて関係ないでもなくて? なんで?」

「ええと、やっぱり生活するには、お金は必要だと思うし。保険金とか、子どもを育てる前提なら学費とか、そういうのはちゃんと貯金しとかないと……」

「真面目だなあ」

「えー? じゃあ、なんでお金持ちはだめなの?」




「ダメっていうか……お金多すぎると、税金の計算大変そうじゃないですか」




 ……教室が、一分ほど静まった。


「……そんな理由ぅ⁉」

 教室にいた全員が突っ込んだ。二宮は思わぬ反響に驚き、戸惑いつつも理由を述べる。

「え、だ、だって、今の日本は、給料が多いほど所得税取られるんでしょ? でも給料が多くても税金でごっそりとられて大変だから、家族がいる場合は扶養家族とかいろいろしないといけないって聞いたような気がする……んだけど、違ったかな。由緒あるお金持ちだったら、遺産相続問題で親類ともめそうだし、相続税とか、生前贈与とか、やっぱり計算が大変そうだし……私計算苦手だから」

「妙に現実的のような、そうじゃないような、計算苦手なことを気にするんだね二宮さん⁉」

「やっぱアネさん、考えるところが私たちとは違うわ……」

「あ、でも、やさしい人っていうのは大事だと思うよ⁉」


 自分が学校生活で少々ずれていることは薄々知っていたが、ここまで驚かれた二宮は完全にビビっていた。慌てて緑川エリの(おそらく)一般的な意見に賛成する。もちろん、本心からもそう思っている。


「あとは……私は結構ずれているから、それを訂正してくれるしっかりした人がいいな。それで、気が長い人。私の話を喜んで聞いてくれて、私に喜んで自分の話をしてくれる人。……会話がなくても、その沈黙すら楽しかったらいいな、なんて」



 欲張りだねえ私、と二宮は笑った。

(天使か――……)

 中々拝めない彼女の笑みとことばに、クラスメイトたちはなんとなく心が洗われた気分になった。


 その理想が、だということに気づいた人間はいなかった。


 余談だが、結婚相手の理想の一つに、

「狩猟免許持っている人がいーなー! 猪さばくー!」

 と言った女子もいた。

 最近の結婚相手の理想も、結構バリエーションが増えている、かもしれない。

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