アネさんと理想の結婚相手 1
どのような流れでそうなったのか。
2‐Aで行われていた保健の授業中、突然結婚の話になった。その話になったのが授業が終わる十分前だったので、すぐに終わったのだが。
昼休みに突入した後も、教室はその話題で盛り上がっている。
「やっぱり、結婚する相手だったら、お金持ちがいーなー」
「えー。なんかゲスイ考えだなあ」
「愛があってもー、お金がなかったら苦労するよー。それでー、高学歴で、スタイルよくて、イケメンでー」
「そんな人、いてもあんたじゃ捕まらないでしょ……」
「そういうエリの理想はなんなのー?」
「え、私⁉ ……そ、そりゃ、やさしい人が……」
「はいはい乙女乙女ー。……カマトトぶって」
「ボソっというのやめてよ!」
「私はねェー、シャルル君がいいなぁー」
「あ、あんた抜け駆けずるいわよ!」
「シャルル君かー。私はショタくんと結婚したいー」
「あ、わかるわかる! かわいいよね、彼! それに気さくだし、結構優しいし。英語もすごくできるから、海外とかで働きそう」
「えー。あたしより身長低い男はパス」
(田月くん、モテてますなあ)
卵焼きを食べながら、二宮
が。
「ねぇそう言えば、アネさんって、ショタくんと付き合ってんの?」
お金持ちと結婚したいと言っていた女子に会話を振られ、彼女は卵焼きを弁当箱に落とした。
「ちょ、ちょっとチエミ! そういうこと聞くのは、」
「何よエリ。ちょっとした世間話でしょー」
「二宮さんビックリしてかたまってるじゃない! そういう話は、人を選んで!」
「あらま、本当ー。彫刻みたい」
「ち、違うよ!」
なんだかからかわれる流れになりつつある。
我に返った二宮は、すぐに否定した。
「つ……付き合ってナイ、ヨ?」
……残念なことに、声が裏返っている。視線も明後日の方向だ。
それを聞いて――。
そうなんだと正直に受け止める天然な人間が、十パーセント。
そうであってほしいと願う人間が、三十パーセント(男子含む)。
絶対付き合っている、と思い込む人間が五十九%。
ああ、両片思いなんだな。と、推測する人間が一パーセント。
その中で、両片思いだと判断したクラスメイトの緑川エリは、二宮のために少し話の軌道をそらすことにした。
「じゃあさ、二宮さんは、結婚相手はどんな理想を思ってるのかな?」
「私ですか? 私は……」
今までの会話を振り返り、考える二宮。
興味ありませんと装いつつ、必死で耳を澄ます男子たち。彼らにはまったく気づかず、彼女は『理想の結婚相手』について続けた。
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