アネさんについて
二宮
しかし悲しいことに、彼女の顔は全く制服が似合わない。
どちらかというと、彼女には着物を着て、キセルを持たせた方が似合う――と、どこぞの誰かが言ったことから、ついたあだ名は『アネさん』。
本人は、実年齢よりも上に見られることをかなり気にしている。
そのことを彼女がぼやくと、田月が軽く返すのが常だった。
「別にいーじゃん。みんな違ってみんないい、って金子さんも言ってたし。身長があるなんて羨ましいー」
「えー……。田月くんは嫌じゃないの? 実年齢より下に見られるの。今日だって前髪が犠牲に」
「うーんまあ、さすがに小学生に思われたのは心外だったけど、別になあ。犠牲にって単にヘアゴムでちょんまげされただけだし。まるでハゲたかのように言うなよ」
「常に女子に弄ばれ」
「弄ばれてはない。遊ばれてるだけだから」
「あだ名は『ショタくん』と呼ばれ」
「褒められもせず、苦にもされず、」
「「そういう者に私はなりたい」」
「……宮沢賢治になっちゃったね」
「まー、人気者の宿命ってことで、いいじゃんか。あだ名で呼んでるのは一部の奴だし、そういう奴だって俺たちをバカにして言ってるわけじゃないし」
「悪気がないことは知ってるけど……でも田月くん、一年の最初は、『ショタくん』って呼ばれたら『「う」を抜かすんじゃねえ!』って食いついていたよね」
「あー、まあ……でも、そこまでこだわることじゃねえかなって、三日で飽きた」
(大雑把……)
「俺のあだ名よりかわいそうなのは、河野さんだよ。俺のクラス、
「
「そゆこと。で、不真面目な先生は訂正しないし、逆に真面目な先生はフルネームで呼ぶんだけど、名字が入れ替わってたりするんだよな」
「呼ばれるたびに混乱するね……」
「面倒くさくなって、すでに担任の先生は名前だけで呼んでいる」
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