7
男の声は力いっぱいハリーに訴えかける。耳を近づけないことにはわからないほど、枯れ果てた声だった。
「こ、ここは……」
「アルファシェルターだ! オッサン、助かったんだ!」
「こ、この……シェルターに、ハイ……・ヴェルノという、男は……、いるか?」
ハリーは興奮した。思わず大声で応えた。
「俺だ! 俺がハイリンだ!」
と、男の拳をぐっと力を込め、掴み握り締めた。男はハリーをじっと見つめた。安心したのか、荷物を指さすと最後の力を振り絞り彼は囁いた。
「さ、探したぞ、荷物の中に、て……を……受け取って……くれ!」
静かに眼を閉じようとするとき、男は『ありが……はかせ』と呟いたようにハリーは聞いた。
「お、おい、しっかり、しっかり、おいっ!!」
男の顔は満足そうな顔だった。最大の目的を果たせたのだと感じた様子だった。
ハリーは茫然と立ちつくし、
「おい、ハリー、おいっ!」
と、急に呼びかけられ我に返った。
サムがハリーの腕をつかみ、
「男は、男はなんて言ってたんだ?」
気になった様子でハリーを見た。
「この人は、俺を探していた」
「なんだって!?」
「それに、荷物の中に手紙を、受け取っ……」
(手紙……?)
男の指さす方向にあるサックの荷物を引っ掻き回し、茶色い封筒を取り出した。
『アンソニー・ヴェルノ』という
(おやじ……)
ハリーの両手は震えていた。
怒りと同時に嬉しくもあった。二十年間忘れられたのではないか、死んだのではないか、と思われた自分だったからだ。読まずにはいられなかった。今、何をしているんだろうか、どこにいるのだろうか、本当に気象タワーには、たどり着けたのだろうか、疑問が次々と湧いて出た。
手紙は、数枚に渡って事細かに書かれていた。利き腕ではない手で書いたのだろうか、所々読みづらく、理解に苦しむ文面もあった。紛れもなく人の心がある字だった。
8へつづく
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