1-4


「そうだ、そうだ」

と、エルシェントはいいかけ、机の引き出しを開けた。珍しい紋様のはいった小箱を取り出す。

「忘れるところだった! アンソニー博士からの贈り物を渡さねば……」

「えっ、親父からの?」

 いぶかしげな顔になり父親からの《贈り物》というのが、想像がつかない。

 小さな鍵で小箱をあけたエルシェントは中身を取り出す。奇妙な形をした銃をハリーに手渡した。

「『渡したいもの』というのはこの銃だ! これは博士が旅立つ前に、熱心に造っていたお前専用の武器だ!」

(俺、専用の?)

 見るからに無骨な形をした奇妙な銃だった。一般的な銃の形状は変わらない。ただ、銃口はあるものの、取っ手部分の後部にはセーフティガードとなるスイッチのようなたぐいがあった。

 ハリーは試しに、トリガーを引いてみた。反応はない。吸引口だろうか、幅三センチほどの穴が確認できた。発射するものもどうやら吸引口と関係がありそうだが、わからない。はたして本当に銃なのか。彼は銃のエネルギーが金属の弾でないことはたしかなのではと、考えたがどうみても奇妙さがいなめなかった。

 不安になり顔を引きつっている。

「変な形だね」

「こ、これって、本当に銃なんですか?」

「私は詳しいことは聞いていないが、博士が言うには『大人になったときに使える銃』ということだけだ!」

(大人になったときに使える銃?)

「他に何か聞いてますか?」

「そうだな、受け取るときに呟いていたのは『子供に持たせても意味がない』ぐらいだな!」

 子供には危険ということなのだろうか、と率直に思うしかなかった。


 四日間の滞在はあっという間に終わる。最終日、ハリーが久しぶりに訪れたことで、ベータシェルターでほんのひと時の小さい宴会が開かれることになった。彼は、いっときの寛ぎを満喫した。集会のときにいた隊員の面々も顔を出し、キャサリン、エルシェントたちと談話した。だが、その中にウォルターの姿がなかった。

 アルファシェルターから運んできた物資を食料配当管理者に渡す。ハリーはサックの中を軽くした。

 キャサリンの出発の準備が整うと、エルシェントがシェルターの入り口付近まで見送りに来た。彼は、一瞬だが彼女の防寒着姿を寂しそうな眼差しで見つめた。

 エルシェントの彼女に向ける視線がつらく感じた。数年間であるにせよ、一緒に親子同然で過ごしてきた彼には、この上ない寂しさを感じたに違いないだろうと、彼の気持ちに同調した。

「ハリー、キャサリンと一緒に鍛えて待ってろよ! 当日はお前のシェルターに迎えに行ってやる。久しぶりに兄さんにも逢いたいしな」

「それじゃ、義父さん行ってくるね。身体には気をつけてよ!」

「お前に心配されちゃ、オシマイだな」

 冗談で返された言葉を、彼女は真顔で「本気で心配しているんだからね」と浮かべる。エルシェントとキャサリンが抱き合いながらも、心が通じ合っているのだなとハリーは黙って見守った。

「ハリー、娘をよろしく頼むぞ!」

 肩を叩かれ、「はい!」とハリーはエルシェントに力強く返事をした。

「そろそろ行こう、キャシー」

 防寒具に身を包むと白銀の海原へと歩みを彼らは始めた。

 凍てつく風は、やむことなくハリーたちを容赦なく襲った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます