プリプレイ④「TRPGってな~に?」

「とりあえず、詳しくは座って話そうか。好きなとこ座って」


 拓也に促され、私は手近な椅子に腰かける。拓也も適当な、それでいた私にほど近い椅子を見つけて座る。

 イリスは先ほど出したジオラマをそのままに、元いた椅子に戻り、食べかけだったお弁当に手を付けていた。

 残りの一輝は、適当な椅子に座ると鞄から弁当取り出し、広げていた。


「それ、食べながらで構わないから、聞いてくれるかな。詳しい説明をするから」

「あっ、はい」


 拓也は私が手にしたまま、まだ口を付けていないサンドイッチを指さし、食べるように促す。

 せっかく貰ったものなのだからと、私は慌ててサンドイッチに口を付ける。今まで学校では一人で食事をしていただけに、誰かに見られながらの食事は少し恥ずかしかった。


「えっと、じゃあ、説明していくね。僕達はゲームサークルで、ゲーム、主にTRPGで遊んでいる」

「あ、あの~う。TRPGってなんですか?」


 説明を始めた拓也に対し、私は恐る恐る手を上げ質問する。


「TRPGっていうのは……RPGは分かるかな?」

「ゲームのジャンルですよね。テイルズとか○Fとかの、ジャンルですよね」

「うん、そう。TRPGと言うのは、テーブルトークRPGの略で、先言ったテイルズやF○の様に電子的なハードやソフトウェアを使わず、紙とペン、それから会話を使って行うRPGの事」

「えっと、つまりどういう事です?」


 紙とペンと会話で行うRPGと言われても、いまいち想像がつかなかった。


「口で説明するのは難しいな……。RPGは今でこそ、電子的なソフトウェアで、プレイヤーの行動によって何が起こるか、シナリオがどう進むか、ダメージ計算などの処理が行われているけど、もともとはそういったものを用いず、ダメージ計算などは紙とペン、プレイヤーの行動によっておこる事や、プレイヤーやNPCの会話はなんかは実際の参加者の会話なんかで行っていたんだ。そういった、原始的なRPGがTRPGなわけだ。何となく、分かったかな」

「一応?」


 改めて説明を受けても、いまいちピント来ない。RPGで電子的、コンピュータが処理している部分を人がやる、と言う意味だろうか? それって、ただ面倒なだけでは?


「今、何でそんな面倒なゲームを遊ぶのだろうかって、ちょっと思っただろ」


 拓也に図星を指され、顔に出ていたのかと慌てて表情を取り繕う。


「いいよ。実際、計算や、何をしたらどうなるかっていうのが、高速演算されているわけじゃ無いから、面倒だし、時間はかかる。けど、なぜこんな原始的なゲームがいまだに存在し、遊び続けられているか、それは、それだけ魅力があるって事だからだよ」

「魅力、ですか……」

「無限の冒険。テイルズやF○なんかのRPGは基本的に最初に用意された一つストーリーにそってしか話が進まない。途中選択肢によって、少しだけ話が変化したり、近年のオープンワールドの様に、色々な選択肢が用意されていても、それでもとれる選択し、用意されたストーリーは限られている。

 けど、TRPGにはそれがない。人が話を考えられるだけ、思いつくだけ、多くの、無限と言えるような話が容易でき、世界が作られる。そこで起こる事、それらも人の想像力が許す限り適応され、一つの話でも多彩に変化する。それがTRPGの魅力の一つだ。つまり」

「つまり」

「僕達だけの冒険、物語が有るってことだよ」

「私達だけの……冒険」


 トクン、トクン。また、鼓動が高鳴る。

 私達だけの、私だけの冒険。それは、ずっとずっと追い求めていたものだ。それが、ここにはあるのだろうか? そう思えてしまった。


「やっぱり、良い目してる」


 小さな笑い声を共に、そう声をかけられた。声をした方を見ると、一輝がこちらを見て、嬉しそうな笑みを浮かべていた。


「やっぱり私の目に狂いはなかった。一緒に冒険、して見ない?」


 一輝は再び問いかけてきた。

 私はそれに、今度ははっきりと「はい」と答えた。


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拓也「ちなみに今日本でRPGと呼ばれている物より、TRPGの方が先にできたゲームなんだけど、日本ではRPGの方が先に広まった関係で、TRPGを、RPGと区別するために、こう呼ばれるようになった、って経緯があり、TRPGって言葉は和製英語だったりします。

 テーブルトークRPGという以外にも、テーブルトップ卓上RPG、ペンPペーパーPRPGなんて呼び方もあります」

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