おでかけ、おそろい、おかいもの
ふと目が覚めて時計を見ると、昼の十二時を過ぎていた。
どういうわけか、ヒヨ理ちゃんは僕の腕を抱き枕にして眠っていた。
「ん、んん……っ」
僕が起きたことで振動が伝わったのか、薄目を開けたヒヨ理ちゃんが、ぼんやりとした眼差しを僕に向ける。
「おはよう、ヒヨ理ちゃん」
そう声をかけると、ヒヨ理ちゃんはみるみるうちに笑顔になった。
「……夢じゃなかった」
「そうだね」
「ゆーじくんがいる」
「いるね」
「しあわせ」
「僕もだよ」
「おはようございますっ、ゆーじくんっ」
「おはよう、ヒヨ理ちゃん」
寝起きのヒヨ理ちゃんは、また一段と可愛かった。
起きて早々、僕たちは大掃除ならぬ大洗濯に精を出した。洗濯物をベランダに干し終えたころには、一時を過ぎていた。
「お腹すいたね」
「うん、ぺこぺこ……」
「どうせ家にはなんにもないし、なんか食べに行こっか」
「はいっ」
「そのあとはお買い物だね」
「うんっ、楽しみっ」
というわけで、僕は部屋で普段着に着替えた。財布を開いてお昼を何ドナルドにするか相談していると、ヒヨ理ちゃんがとたとたと、制服の上からカーディガンを羽織った姿でやってきた。そっか、ヒヨ理ちゃんは私服持ってきてないんだった。
「ゆーじくんの私服姿かっこいいっ」
「ヒヨ理ちゃんの制服姿も似合ってて、とっても可愛いよ。毎日見てるのに全然飽きないし」
「……そ、そうなんだっ」
そうやって照れる姿も、何度見ても飽きそうになかった。
「で、でもねっ、今日の格好はいつもと違うのっ」
「え? そうなの?」
どこが違うのかさっぱりわからない。強いて言えば、髪の毛がちょこっと跳ねてるところかな?
「どこが違うか、ゆーじくんわかる?」
「え〜っと……」
もっとよく見てみる。じ〜〜っ。…………あっ。
「わかったかも」
「はい、ゆーじくんっ」
「……いつもより可愛い?」
「そういうの、いいからっ」
ますますほっぺたを赤く染めるヒヨ理ちゃん。それしかないと思ったのに。
「ヒント」
「……すーすーしてます」
「すーすー?」
……って、そういうこと?
「ヒヨ理ちゃんさ、もしかして、替えの下着持ってない?」
「は、はい。その、おむつをたくさん持ってくるつもりでいたのでっ」
「なるほどね。じゃあ答えは……パンツ穿いてない?」
「……せっ、正解ですっ」
自分からノリノリで出題しておいて、すごく恥ずかしがってる。どういうこと? よくわからないけど可愛い。
「てかヒヨ理ちゃん、そんなのわかるわけないよ。見えないんだから」
「……ゆーじくんなら、見てもいいよ」
「えっ」
「見てもいいです、ゆーじくんなら。……今から見る?」
見るって、覗いてもいいってこと? ノーパンなのに? 急展開だなぁ。どうしよう。というかいいのかなぁ。なんか悪い気がする。でも、本人が見てもいいって言ってるわけだし、やっぱり……
「や、やっぱり今のなしっ!」
ばっ! と両手でスカートを押さえつけるヒヨ理ちゃん。
「そんなー」
と言いつつも、なんだろう。なんていうか、自分でも不思議なんだけど、ヒヨ理ちゃんとはエッチなことをしたいというよりも、こうやってずっとイチャイチャしていたいという気持ちのほうが強かったりする。
「で、話は戻るけど、昨日のシャワーの後からずっとノーパンだったってこと?」
「は、はい……」
「言ってくれたら買ってきたのに」
「言うの恥ずかしくてっ」
それはそうかもしれないけど、今ノリノリでクイズを出してきた人の台詞とは思えない。
「そういうことなら、今からコンビニで買ってくるけど?」
「いえっ、男の人にそんな恥ずかしいお買い物させるわけにはいきませんっ」
「いや別に。僕そういうの気にならないし」
「で、でもっ、悪いですしっ」
「そうは言っても、穿いてない状態でお出かけするわけにはいかないでしょ? まさか、僕のパンツを貸すわけにもいかないし」
「そっそれです!」
閃いたとばかりに、ヒヨ理ちゃんが食いついてくる。
「ゆーじくんさえよければ、ゆーじくんのパンツ、わたしに貸してほしいですっ」
「僕はそれでもいいけど……ほんとにいいの? ブリーフならまだしも、トランクスだし……」
「問題ありませんっ」
ということらしいので、ヒヨ理ちゃんに僕のパンツを貸してあげた。ヒヨ理ちゃんは僕の目の前で、うれしそうにトランクスに脚を通すのだった。
なんといってもまずは腹ごしらえということで、ふたりで近所のリーズナブルなハンバーガーチェーン店に入った。それほど混んではないけど、多少は並ぶみたいだ。
列に並びながら、今日これからのことを考える。具体的には、お金のことだ。どれだけ使うことになるかわからないけど、果たして足りるだろうか? 予算は多くない。最悪、ヒヨ理ちゃんに借りることになるかもしれない。それに足りたとしても、明日からの生活費は切り詰める必要がありそうだ。正直厳しいけど、ヒヨ理ちゃんの笑顔にはかえられない。
「ゆーじくんゆーじくんっ」
「うん、なぁにヒヨ理ちゃん?」
ヒヨ理ちゃんはうんと背伸びして、僕の耳元に顔を寄せようとしてくる。僕は少しだけかがんで、自分からヒヨ理ちゃんの口元へ耳を近づけた。
「ちゃんと穿いてるのに、まだすーすーしてますっ」
ヒヨ理ちゃんが小声で囁く。
「トランクスってこんな感じなんですねっ、はじめて穿いたので知らなかったですっ」
「それはヒヨ理ちゃんがスカートだからだよ。上にズボン穿いてればそんなでもないよ」
「そうなんだっ、納得っ」
「あと、そもそもぶかぶかだろうしね」
「そうなんですっ。気を抜いたら落ちてきちゃいそう……っ」
「よく穿けたね」
「工夫しましたっ」
そんな他愛のない会話をしていると、順番が回ってきた。ふたりでメニューを覗きこんで、相談しながら注文を済ませる。それから、財布を取り出そうと、ズボンのポケットに手を入れて――――えっ!
ない。財布がない。
反対のポケットと上着のポケットを探してみても、やっぱりない。部屋で中身を確認したあと、ちゃんとポケットに入れた記憶はあるんだけど……。もしかして、盗まれた?
僕がモタモタしているうちに、ヒヨ理ちゃんがササッと支払いを済ませてくれていた。
「ごめんねヒヨ理ちゃん、助かったよ。実は財布が、」
「ごめんなさいゆーじくん」
「えっ?」
番号札を受け取ったヒヨ理ちゃんが、邪魔にならないようカウンターの端に寄る。僕も倣う。
「ゆーじくんのお財布、ウチに置いてきちゃいました」
「え!」
ヒヨ理ちゃんが? いったいいつの間に。全然気がつかなかった。
「ゆーじくん優しいから、わたしのぶんもお金出そうとしてくれてたんだよね? 食事代だけじゃなくて、きっと、このあとのお買い物でも……」
「まぁ、ね。やっぱり男としてはカッコつけたいっていうか。ほら、僕ってヒヨ理ちゃんの彼氏だからさ」
「だからこそ……です」
「え?」
「ゆーじくんの彼女にしてもらえたからこそ、わたしは、ゆーじくんの負担にはなりたくないんです。一人暮らしで生活が大変なこと、知ってるから」
「……」
「彼女だからこそ、そばで支えてあげたいんです」
「……それは、でも」
「お願いしますっ、お金はぜんぶわたしに出させてくださいっ! 大丈夫です、わたしあんまりお金使わないのでっ」
……まあ確かに、生活が苦しいのを隠してまで、見栄を張るものでもない、か。
「わかったよ。ヒヨ理ちゃんがそこまで言ってくれるのなら、お言葉に甘えようと思う」
「はいっ、ぜひ!」
やっぱりどうしても、情けない気はするけど。まあ、素直に厚意を受け取るのも、思いやりのひとつではあると思うし……。
だけどその代わり、僕がちゃんと働いて、しっかりと稼げるようになったら。そのときは、ヒヨ理ちゃんが喜ぶものをたくさん買ってあげよう。そう決めて、この件に関してはこれで、自分の中で折り合いをつけた。
「おいしかったなぁ、ハンバーガー」
「まだ言ってる」
「だっておいしかったからっ」
「確かにね。あの味であの値段は安すぎる」
電車に乗って中心街までやってきたはいいけど、これといった目的のお店があるわけではないので、僕たちはぶらぶらと駅ナカを見て回っていた。
……それにしても、よかったなあ、財布。失くしたんじゃなくて。最近の僕は物(というか箸)をよく失くすし、今度はついに財布まで失くしたのかと思った。
ヒヨ理ちゃんに余計な心配かけたくないから、話題には出さないけど。
「そうだヒヨ理ちゃん、買う物だけど、歯ブラシだけじゃなくて、もっといろんな生活必需品を揃えようよ。箸とかさ」
「お箸っ! うんっ、そうしよっ!」
「あ、そこの店にでも入ってみる?」
そうして僕たちが足を踏み入れたのは、どこにでもあるような百円ショップだった。
ヒヨ理ちゃんと一緒に、入口付近の棚から順番に見て回る。
「あ、マグカップだって。いるかな?」
「うんっ、お揃いにしよっ。ゆーじくんどっちの色がいい?」
「歯ブラシ見つけたけど、どうする? ここで買っちゃう?」
「お揃いある?」
「うん、これとこれでワンセットって感じかな」
「じゃあそれにするっ!」
「ゆーじくん見て見てっ、このお茶碗っ」
「可愛いね」
「でしょっ! じゃあこれとこれセットで買っちゃうねっ」
「おーいヒヨ理ちゃん、こっちこっち」
「待ってゆーじくんっ」
「あったよ」
「あっ、お箸っ!」
例によって、お揃いのお箸を見繕ってカゴに入れる。今度こそ失くさないようにしないと。なんたって、ヒヨ理ちゃんとお揃いなんだから。
「それにしても、ヒヨ理ちゃんはほんとにお揃いが好きなんだ?」
「うんっ、大好きっ」
「もしかして、ペアルックとかしたい人? 恋人同士で」
「うんっ、したい……ゆーじくんは、嫌?」
「ヒヨ理ちゃんとなら嫌じゃないよ。そうだ、今度服でも見に行こっか?」
「お洋服っ! お揃いのお洋服っ! 行きたいっ!」
「今からでもいいけど、この調子だとかなりの荷物になっちゃいそうだし、来週なんてどう?」
「次のお楽しみにしますっ!」
ヒヨ理ちゃんはお揃いが大好き。彼氏として、これは覚えておこう。
結局、あれもこれもと生活に必要ないものも含めて大量に買いこんで、店を出た。
「あとほかに、なんかいるものあったっけ?」
「……あ、あのっ」
「?」
急にもじもじと言いづらそうにしながら、ヒヨ理ちゃんは隣のドラッグストアを指さした。
「……ちょっと、買いたいものがあってっ」
「うん、わかった。入ろうか」
なんだろう、ヒヨ理ちゃんの買いたいものって。
早足で店の奥へと向かうヒヨ理ちゃんに、僕も続く。ヒヨ理ちゃんは突き当たりの、とあるコーナーの前で立ち止まった。……なるほど。
ヒヨ理ちゃんは、陳列されている商品のうちのひとつを、迷わず手に取った。それが普段から愛用しているやつなのかもしれない。
ピンク色を基調としたパッケージで、小学生くらいの女の子たちがカメラ目線で微笑んでいる。パッケージの前面には、女の子用、パンツタイプ、スーパービッグ……そんな文字が並んでいる。
それを抱っこするみたいに抱えたヒヨ理ちゃんが、僕に向き直る。
「あのっ、これっ、ゆーじくんのお部屋に置かせてもらってもいいですかっ?」
ほんのりと頬を赤くして、上目遣いに見あげながら訊いてくる。
「家に帰ればストックはあるんだけどっ、ウチにも予備があれば安心できるからっ」
「うん、もちろんいいよ。ヒヨ理ちゃんの私物とかも、好きに持ちこんでいいから」
「……ありがと」
「その代わり」
僕は半ば強引に、ヒヨ理ちゃんの抱えたそれを奪い取った。代わりに、百均の買い物袋を押しつけるようにして手に持たせる。
「これは僕が買って、ヒヨ理ちゃんにプレゼントすることにしたから」
「えっ、えっ、えっ」
「えっなんでっ、なんでそんなっ」
「そうそれ。ヒヨ理ちゃんの、そういう可愛い反応が見たかったから」
「意味わかんないっ、意味わかんないっ」
ヒヨ理ちゃんがぽかぽかと僕の胸元を殴ってくる。が、パッケージごしなので衝撃が吸収されて全然痛くない。
「そういうわけだから、悪いんだけどお金貸してくれる? 帰ったら返すから」
「返さなくていいから、それ返してっ」
「どうしても僕からプレゼントしてあげたいんだ。今回だけにするからさ、お願い」
「うぅぅ……」
ヒヨ理ちゃんは渋々といった様子で、お金を貸してくれた。かなり恥ずかしそうにしている。
僕はそのまま、レジに直行した。
会計を済ませているあいだ、ヒヨ理ちゃんはすぐ隣で僕の服の裾を掴み、顔を真っ赤にして俯いていた。
店の外に出て、店員さんが外から中身が見えない袋に入れてくれたそれを、ヒヨ理ちゃんに手渡す。
「はいこれ。僕からのプレゼント」
「…………ありがとう」
「顔、真っ赤だよ」
「だって、恥ずかしいもん……自分で買うより全然恥ずかしいっ……」
もんだって。ちょっと信じられないレベルで可愛い。
ヒヨ理ちゃんと付き合うことにして本当によかった。
その後もいくつかお店をめぐって(途中、ヒヨ理ちゃんに下着を買うことを勧めたが、ゆーじくんのを借りるからいいと却下された)、心ゆくまでウィンドウショッピングを楽しんだのち、家の近くまで戻ってきた。
僕たちは夕飯の買い出しのため、近所のスーパーに来ていた。敷地面積が広くて、食材ならわりとなんでも取り扱っているお店だ。
店に入って真っ先に向かったのは、中華食材のコーナーだった。なんでも、今日はヒヨ理ちゃんが中華料理を作ってくれるらしい。昨日のチャーハンのお返しとのことだけど……
「これと、これと……あとこれもっ」
豆板醤を始めとした調味料、鶏がらスープの素、見たことのない水煮缶や聞いたことのない香辛料、謎のソースなど……ヒヨ理ちゃんは躊躇なく、ポンポンとカゴに放りこんでいく。
「ねぇヒヨ理ちゃん、そんなに買ってお金大丈夫? けっこうな値段になると思うけど」
ヒヨ理ちゃんの手料理が食べられる喜びよりも、まずはそこが気になってしまう貧乏人の僕だった。
「へいきですっ、わたしお小遣いたくさんもらってるからっ」
「そうなんだ? いくらくらい?」
「ひ、引かれたくないので、黙秘します……」
「そんなになんだ。もしかして、ヒヨ理ちゃんの家ってお金持ち?」
「た、たぶん……。あの、ゆーじくん、鼎グループって知ってますか?」
「え? そりゃもちろん知ってるけど…………えっ!!」
鼎といえば、日本人なら誰でも知ってるレベルの大企業だけど……まさか?
「そのトップが、うちの親なんです。恥ずかしいから、ほかの人には言わないでね?」
「じゃあ、ヒヨ理ちゃんってお嬢様だったんだ」
「なのかも……?」
そんなに自覚はないらしい。
「でも、そっか。なんか納得かも」
以前から育ちのよさみたいなものは感じていたから、驚きよりも納得のほうが大きい。
「ヒヨ理ちゃんって、何気ない仕草とか佇まいに品があるんだよね」
「そうですか? 自分ではよくわからないですけど……あっ、でも」
未知の食材をカゴに追加する手を止めて、ヒヨ理ちゃんは言う。
「言葉遣いに関しては、子どものころからけっこう厳しくしつけられてました。家では絶対に、敬語で話さなくちゃいけなくて。わたし本当は、ゆーじくんとはもっとフランクにお話したいのに、なかなか長年の癖が抜けきらなくて……よそよそしかったら、ごめんなさいっ」
確かに、丁寧なのとフランクなのが入り交じった不思議なしゃべり方だとは思っていたけど、そういう理由があったんだ。
「大丈夫だから」
僕は言う。
「ヒヨ理ちゃんはヒヨ理ちゃんだから。どんなヒヨ理ちゃんでも可愛いよ」
「はぅぅ」
「これからも、ずっと僕のそばにいてね」
「はいっ、ぜったい放しませんっ」
そんなわけで。
その日の夕飯は、ヒヨ理ちゃんとお揃いの箸で、ヒヨ理ちゃんの手作り料理を堪能した。満漢全席さながらの豪華な食卓は、ただ眺めているだけで楽しかった。そして肝心の味はといえば……どの料理も、文句のつけようがないくらい絶品だった。
こんなにおいしいごはんをこれからも食べられるのかと思うと、僕は幸せを噛みしめずにはいられなかった。
完食したあと、食器を下げようと立ちあがった僕を、ヒヨ理ちゃんはどこか慌てた様子で呼び止めた。
「わたしやりますからっ、ゆーじくんはお部屋で休んでてっ」
「いや、でも洗い物くらいは」
「しなくていいですからっ、休んでてくださいっ」
ヒヨ理ちゃんは僕の腕を掴んで、それから、片付ける前の食器類にちらりと目を向けた。
なんだろ。なんか怪しい。
けど、まあ別にいっか。
「それじゃ、お願いするね」
僕はお言葉に甘えて、部屋で休むことにした。
夜。
結局今日も一度も家に帰らないまま、ヒヨ理ちゃんは僕と同じベッドで横になっている。
「明日は一旦帰ったほうがいいんじゃない? おうちの人心配してない?」
「へいきっ、ちゃんと連絡はしてるからっ」
「そっか、ならいいんだけど」
「……ゆーじくんは、わたしと一緒にいて、へいき? ずっと一緒だと疲れちゃうとか、たまには一人の時間がほしいとか、そういうのがあったら言ってね? そういうときはわたしっ、ちゃんと空気読んでっ」
「ずっと僕のそばにいてねって、言ったよね」
僕は、その華奢な身体をそっと抱きしめて、耳元に顔を寄せた。
「いつでもどこでも、僕はヒヨ理ちゃんのそばにいたいよ」
「……ふぇぇ」
「ヒヨ理ちゃんは違う?」
「わたしもっ! わたしもおんなじでっ……わたしも、ずっとゆーじくんと一緒がいい!」
言いながら、ヒヨ理ちゃんは僕の背中に腕を回して、ぎゅっと抱きついてくる。
「明日は一日じゅう、おうちでのんびり過ごそうか?」
「おうちデートっ! うんっ、楽しみっ!」
僕たちは、互いの温もりを感じながら……いつしか、眠りについていたのだった。
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