3.両作品の主人公たちがネグレクトを受けている(育児放棄されている)可能性

 これも両作品の片方でもプレイされた人なら誰もが疑問に思われるでしょうが、『親は一体何してんの?』という話です。


 1作目では姉が行方不明になり、小学生の妹がそれを探して深夜の町にくり出すというストーリーですが、この時点で親を呼ばないのがあまりにも不自然です。犬を死なせてしまったことを姉にも言えなかったことを考えれば、怒られるのを恐れたとも考えられますが……。

 しかもその挙句に主人公は片目を失って帰ってくるわけで、普通だったらこの時点で親から夜間の外出禁止令が出るはずです。それどころか「誰がやったの?」を巡って警察沙汰になるものでしょう。にもかかわらず、クリア後のサブイベント消化とアイテム集めのために主人公は今日も元気に夜の町へくり出し、お姉ちゃんも「左目は大丈夫?」などと心配しつつも、「またお外に行くの?」というのみで、特に止めようとはしません。

 一体この家はどうなってんだと思われますが、これが1つめで考察したように『大人は町にオバケがいることを知っている』なら、それで警察が動かない理由にもなると思います。おそらく夜間の外出は『自己責任』ということになっていて、子供にそれを教えていない家庭、夜間の外出を禁じていない家庭の子だけが被害にうのでしょう。そう考えれば、1作目の主人公姉妹が親からネグレクトを受けていることの証左にもなります。


 2作目のほうはもっと分かりやすく、ダブル主人公のうちの1人であるユイが親から虐待を受けていると思われる描写が随所に登場します。(そもそもビジュアルが怪我だらけですし)

 これだけを見るならもう1人の主人公であるハルは普通の家庭の子のようにも思われますが、それもEDのえげつなさを見ると急に怪しくなってきます。

 なにせ小学校低学年(と思われる)少女が深夜に山へ入り、片腕失くして帰ってくるんですよ? ユイの霊が腕の根元を縛って止血してくれていたとしても、山の麓で夜明けまで、それこそ新聞配達の人が発見してくれるまで倒れたまま放置です。

 しかもあの場所は近くに子供を虐待していたユイの家しかなく、それより先は山とダム(しかも行き止まり)しかないことを考えれば、人が通る可能性は限りなく低いといってもいいでしょう。有能犬チャコが誰かを呼んできてくれたとしても、普通なら出血多量で死んででもおかしくありません。

 常識的に考えて大事件ですよね。

(作者がこのエッセイを書こうと思ったのは、実はここが一番引っかかったからです)

 

 普通なら警察が動き、ハルの証言に従って山狩りがなされ、ユイの死体やハルの腕も発見されるでしょう。仮にオバケの存在が大人たちの間に知られていなかったのなら、逆にそうならないほうが不自然です。

 そしてハルの家庭がまともなら、夜間どころか引っ越すまでは昼間も娘を外に出さくなるはずでしょう。にもかかわらず、ハルは1作目の主人公同様、クリア後のサブイベント消化とアイテム集めのため今日も元気に夜の町へ(以下略)なわけです。

 そもそもこの2作品、家の中を走り回るだけで結構音が響きます。小学生の娘が深夜にドタドタ走り回り、家の引き戸をガラガラ開けながら行ったり来たりを繰り返す……これで何か言わない親がいるでしょうか?

 さらに2作目は図書館や廃屋からのセーブとして、家に電話をかけています。それが必ず『家の留守電に伝言を残した』となることを考えても、この作品の家庭が抱える闇がどれほど深いか想像できると思います。

 たまたま事件の日だけ親がいなかった……という可能性も考えられますが、ハルの怪我の事件性を考えれば親が呼び戻されないほうが不自然です。それなのに後日談ともいえるクリア後でも状況は変わらないので、多分そうではないと推察できますね。


 いかがでしたでしょうか?

 以上が『夜廻』そして『深夜廻』において、作者自身が『これっておかしくない?』と思った疑問点についての考察です。

 色々無理やりな点もあり、『いや、それでもおかしいだろ』と思われる方もおられるでしょう。ですが、作者なりに『これなら説明がつく』もしくは『こうじゃないと説明がつかない』と頭を捻ったつもりです。


 最後に、作者はこれらのおかしなところを『駄目なところ』として責めるつもりは毛頭ありません。むしろこれだけ考察の余地を残しているという点において、かなり素晴らしい作品だとさえ思っています。

 実際この2作品は最近すっかりゲームをやらなくなり、そのうえ主人公が敵への反撃手段を持たない『逃げホラー』があまり好きではない作者が、久々に『面白い』と感じ、トロフィーコンプまで時間を忘れてやり込んだぐらいですので。

 この作品を世に送り出してくださったメーカー、及び制作陣の皆様に感謝いたします。

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考察『夜廻』シリーズ @FLAT-HEAD

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