第2話魔王、街へ行く。

 勇者が来て、それを追い返す。

 それが俺の異世界生活。

 異世界生活とはなんだ?

 俺は元の世界で読んだ異世界ファンタジーでは、魔王を倒すべく勇者してパンツ盗んだり、助けてくれた女の子に恩を返したいと身を挺して守って膝枕してもらったり、ゲームで王様になってゲームで女の子手に入れられたり……何かしら目的があるんじゃないか?

 それに比べて俺はどうだ。既に最高到達点、魔王と言う名のてっぺんに立っております。

 そして一つ、異世界にて最も重要なもの、、その一要素が足りないだけで俺の、いいや全世界の異世界転生者がやる気をなくすだろう。

 そう、答えは一つ……

 ヒロインと言う唯一無二の存在である。

 俺がこの世界に来てあった女子といえばアサインの人しか知らないんですけど?もしかしてあの方ヒロイン?それとも別の人か、いいや、あの人以外会ったことないな。

 俺にヒロインイベントが発生しない理由は大方検討がついている。

 よく考えれば簡単なことさ、それは俺が魔王だから。

 俺が望むヒロインは容姿、顔がいい、これは外せないよな。そしてだ、まぁ、ある程度の強さはこの世界で生きていくために必要だろう。まぁ見た目的にはこんなもんであろう。

 確かに、これだけ見れば魔王軍にもこんくらいいんじゃね?と思うだろう。現実は甘くないんだこれが……

 よく考えてみろ?魔王軍の四天王になれる程の実力を持った女子がそんな簡単に見つかるはずがないだろ?

 この簡単な理由により俺のヒロインイベントは消去されている。


「なぁイト……俺200年ぶりに街に出てみようと思う」


「あ、うん良いんじゃない」


「イトも一緒に行かない?」


「なになにデートのお誘い?」


「なんで男をデートに誘わなきゃならんのだ」


「僕女だよ」


 …………!!??

 二百年越しのカミングアウト!

 こいつ女だったのか!

 今まで全く気づかなかったぞ、だって髪短いし声もなかなか男の子っぽいし、あ、でも顔立ちやらは少し可愛いなと思っていたが……

 でもやっぱなんか胸とか胸とか胸とか胸とか女の子っぽくないし……


「おい今考えてる事をはっきりと言って貰おうか」


 ぴくぴくと口角をゆらしながらこちらへ殺気のこもった言葉をかけてくる。

 何故だ?と思ったのだが、その理由は一瞬でわかった。

 俺は知らぬ間にイトの胸近くまで接近していたらしい。


「全く、僕が女だと分かった瞬間変なことして……まぁ欲求が不満だったんだね……なにせ二百年も女の子と触れ合いがなかったんだだからね」


「いや別にロリ体型のお前に発情するほど俺はロリコンでながはぁ!?」


 俺がイトの言葉を訂正していたら突然飛び蹴りを食らわしてきた。

 俺は即座に起き上がろうとしたが、時すでに遅し。イトは俺の上にまたがっており、俺は手も足も出ないままにイトに殴られた。


「へぇ~、君は僕が女だとわかった瞬間僕の事をロリ認定したのかァ~、それはいただけないなぁ~♪」


 ニコニコしながら顔面に握り拳をガスガスぶつけてくるイト……なかなか痛い。


「や、ちょま、違います、あの、がふっ、話を、ぐへっ、聞いてくださあふぅん」


「アハハ~、聞こえないなぁ~♪」


「ちょ、ほんま、あの、ほんとすんませんした……」


 ****


 なんとか許してもらえたものの、次やったらきっと死ぬな…。

 心に出来るだけ『ロリ』という発言はしないようにと訴えずけ、街へ行くための装備錬成をしていた。

 街に魔王が来たら大変な事になると思われるため一応装備は中級~上級装備に変えておく。

 イトは準備が終わったようで俺の椅子に座りながら「はーやーくー」とボヤいていた。


 俺も準備が終わり街へ行く用意が出来た。

 街へ行くにはここからイトの元へ行ってイトの方に触る。

 これだけ、だって転移魔法使えるんだものイトさんまじパネェす。


「じゃあ行くよー」


「おう、バッチコイやぁ!」


「よっしゃー、じゃあいくよー!」


 そう言ってイトは、空中に魔法陣を書き、叫んだ。


「転移!始まりの街、カルシム!」


「あ、あそこカルシムって名前なの?」


「え、知らなかったの?」


「知らなかった」


「あっそう」


「うん」


 ……。

 魔法陣が光だし、俺とイトを包み込む。

 そして……


「転移完了、ついた……よ?」


「おいイト」


「ねぇカイト」


『ここどどこ!!』


 俺達は声を揃えて言った。

 イトは確かに転移魔法を使った。だがしかし、現在俺達が立っているのは広い平野で、街がある気配は一切無い。

 つまりはこうだ。


「転移……失敗ししたのか?」


「失敗なんてしてないヨー、僕はただ運動不足の魔王さんを運動させようと思ってわざとここに落としたんだヨー」


「失敗したんだな?」


「してない」


「正直に」


「してない」


「したんだよなぁ?失敗、失敗したのにそれを認めないなんて魔王の右腕としてはずかしくないのぉ?ねぇ?どーなんですかそこんところぉ」


 あ、やばいなにこれ楽しい。

 イトは普段俺を虐めてばかりなのだが現在!俺は今こいつの失敗をいじり倒してる!なんだこの高揚感は!最高か!

 さぁ、まだまだ行くぜぇ!


「魔法失敗したのにごめんなさいもなしですかぁ?無理な意地張ってないで失敗を認めて『すいませんでした失敗しました魔王様』と言ったらどうなんだァ!」


 あは……アハハ、アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!!!!なにこれたっのしぃ!楽しすぎてやばい!

 が、楽しい時間はすぐに過ぎ去ってゆく……それが世界の決まり、なのである。

 ざぁっと、俺の顔の目の前に大きな太刀が現れた。

 その太刀は見事な手さばきで俺の首元へとやって来た。

 そしてその大きな太刀を操る主、イトは言う。


「ねぇカイトォ?僕は失敗なんてしてないんだよ?分かる?そもそも転移魔法使えないやつが何をほざいてんだこら、しばくぞ♥」


「すいませんでした調子に乗りすぎました許してください何でもしますから」


「今なんでもするって言ったぁ?♥」


「気のせいですねはい」


 ちっ、と舌打ちをするイト、どうやら俺を殺すのは辞めてくれたそうだ。

 そこはどうでもいいのだが、いや、まぁどうでも良くはないんだけどね?

 それより問題はここどこって事だ。

 早い話もう一度イトが転移魔法を使ってくれればいいのだが。


「なぁイト、もっかい転移魔法使って街まで……!?」


「こめんねカイトー、転移魔法場所によって魔力の消費量がちがくてさぁ、ここは僕の魔力がほほ無くなるほど遠いらしいんだよー、だから僕を運んで街までGo!」


 ぐっと親指を立てながら地べたに顔面を埋めるイト、何とも醜い姿だ……。

 正直からかってやりたい所なのだが、弱ってるやつをいじめるほど俺は人間出来てなくない。

 しょうがなく弱ったイトをおぶり、街がありそうな感じの方へ歩き出した。

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役職魔王の異世界生活 烏丸 ノート @oishiishoyu

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