Die弐話 重い思いに
目醒めは最悪だった。
睡眠薬は吐き戻され、激しい異臭で、さらに咽て吐いた…。
ボロいアパートで、温度調整もロクにできないシャワーを浴びる。
部屋を掃除して…窓を開けた。
肌寒い秋の昼。
「呪いか…」
思えば金が手に入る。
キャッシング枠も無い俺の口座に金が振り込まれるとでも言うのだろうか…。
バカらしい。
6畳のフローリングに寝転がる。
床からは、まだ微かに胃液の据えた匂いがする。
自分の叔母の顔を思い出していた…そもそもコイツの妬みから始まったのだ、俺への嫌がらせは…。
考えれば、考えただけ腹が立つ…空っぽの胃が熱を帯びた様に熱く痛くなる。
性格が悪く、2度の離婚歴がある。
なんの努力もしないが、ただ他人の足を引っ張ることに至上の喜びを感じる。
自分が貧乏で不幸なのは、周りのせいだと信じ込んでいる。
自分が上がれないから、他人を引きずり込む。
悪意の具現化した女。
50歳を過ぎて20歳と張り合う、惨めで醜悪な女。
こんなのが、同じ会社にいたのが、俺の最大の不幸だ。
「コイツさえいなければ…いなければ…普通にそれなりに幸せだったはず」
胃が熱くなる…。
立ち上がり…拳を握る。
「憎い…憎い…憎い…このババアさえいなければ…こんな奴が親戚でなければ…化粧臭いだけの腐った色魔…コイツだけは幸せにしたくない…笑ってほしくない…一生惨めに歳を取り続けて欲しい…」
「その恨み…300万で買い取ろう」
目の前に、昨夜の男が現れた。
「オマエ?」
「ん?忘れてはいないだろ、契約だ。その恨み300万で買い取った」
男は、スーツの胸ポケットから3束僕の足元に放ってよこした。
「なんだ?」
「両腕と両足…目玉2個で300万だ」
「本当だったのか…」
「当たり前だ、悪魔は契約は謀らない…天使より遥かに信用できる存在だ」
俺はニタッと笑う男に背筋が凍りついた思いがした。
例えるなら背骨が氷柱に差し替えられたような身体の心からくる震え。
「今頃、なんらかの原因で、不幸が訪れているだろう…1週間もしたら確認してみるといい、手足を捥がれて、視力を失っているはずだ、そのババアは…ハハハッ」
笑い声と共に、男はかき消すように目の前から消えた。
1週間が経った。
俺は実家に電話してみた。
叔母が交通事故を起こして、両手両足を切断、フロントガラスを突き破った際に破片で失明したと母親から聞いた。
会社に黙ってクラブでバイトしていたらしい。
酒を飲んだまま帰宅しようとして、トラックに突っ込んだ。
「これが…呪い」
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