眼下に広がる街
桜雪
壱話 夢の間に魔に…
会社を訴えて…数百万のお金を得た。
その代わりに、職を失い、再就職も上手くいかないまま3年が過ぎた。
40歳を超え…バイトすら決まらない日々。
法の説く『正義』ってなんだろう?
法は僕に味方したのに…僕は失うばかりで、僕を追いだした会社は未だに存続している。
俺を妬み、何年も嫌がらせをしてきた連中は未だに会社で務めている。
俺は…治らない鬱病を引きずりながら生きている。
死ぬ気力すら湧かない…死を強く意識して解ったことがある。
死ぬということは、前向きな行為なのだと…。
睡眠薬で僅かばかりの眠りを得る。
ただ意識が混濁として眠っているのかと疑問に思うほど気持ちの悪い寝起きを迎えるために。
もう目覚めなくていい…そう思って、睡眠薬をありったけ飲みこんだ。
意識が遠くなる…気分が悪い………目の前の男は誰だろう…。
「こんな薬じゃ死ねないな…」
男がボソリと呟いた。
「じゃあ…オマエが殺してくれよ」
「ハハハッ…死ぬ勇気もないか…情けなくてつまらん男だなオマエ」
「あぁ…だから…それでいいから…もう、生きていたくないんだ…殺してくれよ…」
「殺すのは簡単だ…だけど、オマエ本当は生きたいんだろ?」
俺は…何も答えられなかった。
「そうだな…ひとつ契約してやろう、オマエが呪う社会で、その呪いを金に変えてやろう」
「何を言ってるのか解らないな…」
「うん、そうだな…こういうことだ…オマエがヒトを呪う、その強さに応じて呪われたヤツには不孝が訪れる…いいか?」
「呪いってのはそういうものだろ…」
「ここからが契約だ、対象者の身体を500万として換算する、オマエが呪えば、対象者は身体のどこかを失っていく…指かもしれないし…目玉かもしれない…そのパーツの対価をオマエに金として渡そう、どうだ?」
「なんだソレ?」
「ただし…命は奪えない…いいか、命は奪えない」
「バカらしい…」
「そう言うな…俺は悪魔だ、人助けはしない。恨まれた人間の魂には価値がある。そして恨み続けて汚れた魂には、もっと価値がある…オマエには、その資質がある、だから契約するんだ」
「夢だろ…どうせ…いいよ…契約しよう」
「決まりだ…オマエは心で強く…ただ強く恨めばいい…対象者は死なない…不幸な事故で身体を欠損するだけだ、そして、寿命をまっとうするだけ…安心して呪え、呪い続けろ…金さえあれば生きていけるだろ」
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