第3話

「三つにまつわる話」


二葉が家に来て3ヶ月が経った。

この子も家に馴染んできて、僕自身子育てにも慣れてきた。

言い出したらキリがないほど苦労した。

ここでは伝えられないほどに一人での子育ては大変なものだ。

ここまで育ててくれた両親を心底尊敬出来るようになった。

今度墓参りする時は二葉も連れて両親に感謝を伝えたい。


この3ヶ月で三つ二葉の事がわかった。

まず一つ目は、名前の由来となったアザのこと。

あれは蒙古斑と言って3歳頃には消えてくるらしい。

中には大人になっても残る場合もあるそうだ。


二つ目は、二葉はよく笑うという事。

話し掛けると喋れない分笑顔で返してくれる。

それなりに愛着も湧いてきたからなのかどんなにクタクタでしんどい時もこの笑顔で疲れも吹っ飛ぶ気がする。

笑顔は万能薬だ。


三つ目は、こんな小さな子でも必死に生きようとしているということ。

最初出会った時に泣き叫んでいたのも。

この小さい体で当たり前のようにしている呼吸も。

当たり前のようですごい事なんだと気付かされた。

子供は一人じゃ生きられない。

だから親が必要なんだ。

幸い大きな病気もなく、今のところすくすく育ってくれていて一安心だ。


次に自分自身の事も三つわかった事がある。

一つ目は、僕は子供が好きだという事。

今まであまり子供と関わる機会が無かったのもあり、二葉と出会い世の中にはこんなに可愛い天使が居ることを初めて知った。


二つ目は、僕は独り言が多い。

一人暮らしもしているし、誰にも言われないので気付かなかったが何気なく独り言を言っている時に二葉が返事のようなタイミングで喋ったので気が付かされた。

外では独り言が出ないように努力しよう。


三つ目は、僕も一人じゃ生きられないということ。

今まで周りの人間に支えられそれに知らず知らずのうちに甘えていたのかもしれない。

二葉の笑顔を見てそれに気付かされた。


子供を育てているようで子供から学ぶことは多い。

僕も大人になってやっと成長出来た気がする。


それと三つ辞めたことがある。

一つ目は、アルバイト。

二葉の面倒を見る為に貯金を切り崩し生活をしている。

一応保育園に入るまでの間はこの生活を続けるつもりだ。


二つ目は、大学と就活。

アルバイトと同様に二葉の世話をする為に辞めたが二葉が悪いわけでもないし後悔もしていない。

周りからは結構反対もされたし、引き止められたりもしたが、僕が決めたことだから誰のせいにするわけでもない。


三つ目は、タバコだ。

二葉には健康でいて欲しい。

今まではストレスを感じたり不安になるとすぐタバコに手を伸ばしていたが、二葉と出会いタバコを吸う余裕もなく知らぬ間に3ヶ月が経っていた。


大変で忙しいし二葉が寝てくれない日はクタクタで先に寝てしまう時もあるが、たぶんこれが幸せなのだろう。

一緒に成長していければいい

この幸せがずっと続けばいい、そう思っていた矢先に

一年前、僕の前から姿を消した

【三月(みつき)】から連絡が来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る