第2話
「二つ葉のクローバー」
え?なになに?どういう事?
昨日酔った勢いで誘拐でもしたのか?
いやいや、それは無い。
冷静に考えよう。
無理だ、赤ん坊の泣き声が気になって集中出来ない。
こういう時はどうしたらいいんだ?
おむつ?ご飯?
いや、まて
そんなものこの家には…
「あれ…?ある…?」
なんでかはわからないが、
幸いミルクもオムツもある。
とりあえず両方済ませるか。
「オムツってどうやってやるんだ…?こんな感じでいいのか…?」
不慣れな…いや、全くと言っていいほど経験のないオムツ替えに苦戦しつつも何とか取り替え終わり、ミルクを作る事にした。
「えーっと…分量は…」
ミルクは簡単だ、とりあえず粉をお湯で溶けばいいだけだろう。
お湯が沸き上がり粉にお湯を注ぐ
「とりあえずこれでいいかな?」
粉が溶けたのを確認し赤ん坊にあげる。
「ぎゃあああ!ぎゃあああ!」
先程より泣き出した。
どうすればいいんだ。
もう1度ミルクを飲ませようとした時に気が付いた。
温度が高くて飲めないんだ。
そりゃそうだ、熱湯を注いだんだから。
冷水で哺乳瓶を冷やし、再度飲ませることにした。
「さっきはごめんな…これで大丈夫か?」
今度は飲んでくれたようだ。
ひとまず安心?なのかな?
そんな事よりなんだこれ。
昨日何があった?
飲みに行って解散してから駅でトイレに行って
それから…
そこでポケットに違和感を感じた。
家の鍵かな?
いや、鍵は机に置いてある。
確認の為にポケットに手を突っ込む。
取り出してみるとコインロッカーの鍵だった。
「あれ…?昨日荷物を取り出し…あっ!」
昨日トイレに行った時に拾ったコインロッカーの鍵は自分の鍵を落としたのではなく
別のロッカーの鍵を拾っていたのだ。
その後にコインロッカーに荷物を取りに行き拾った方の鍵でロッカーを開けてそこに入っていたのが…
「お前か…」
そうだ…思い出してきた…。
最初はリアルな人形だと思い抱き上げたが、肌の生暖かさで赤ん坊だと気が付いた。
「こんな首が座ったばかりの赤ん坊を捨てるなんて、世も末だな…そんな親のとこに戻らなくていい!僕が育ててやるよ!」
酔った勢いでそう言い放ち、
ロッカーの中に赤ん坊と一緒にオムツやミルクが入っていて、それを持ち帰ったんだ。
「僕は馬鹿か…でも仕方ない、酔っていたとはいえ決めた事は全うするか…こんな幼い子を元の場所に戻せないしな。」
そうは言ったものの、子供の育て方なんて全くわからない。
とりあえずネット検索で知識だけでも入れておくか。
子供がミルクを飲み終わるまでに色々調べる事にした。
「なるほど、ミルクを飲んだ後はゲップをさせるのか。」
そうこうしているうちに、丁度ミルクを飲み終わった赤ん坊をゲップをさせる事にした。
「げふっ」
何とか綺麗に?出てくれたみたいだ。
トントンと軽く背中を叩いたり摩ったりしてあげるとゲップするのは、
ちょっと可愛いかもしれない。
「これからどうするかな…就活もあるし子供の面倒ばかり見てられないし、放っておく事も出来ないよな。」
決めた事とはいえ現実的に考えれば難しい問題だらけである。
とりあえず沐浴用の桶と子供用シャンプーを買いに行かないと。
赤ん坊とはいえ風呂に入らなきゃ気持ち悪いよな。
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帰宅してすぐに赤ん坊風呂に入れる事にした。
桶にお湯を張っている間、赤ん坊を抱きながらネット検索で出てきた動画を見て沐浴の方法を学んだ。
普通の湯船と違い子供用の風呂のお湯はすぐに溜まった。
動画は最後まで見れなかったので動画を見ながら見よう見まねでやってみることにした。
「おーい、脱がすぞー」
赤ん坊の服を脱がせて、驚かないようにぬるめのお湯にそっと入れる。
まずは頭を洗ってあげた。
意外にも嫌がらない、こんなにすんなり入ってくれるものなのか?
よっぽどお風呂が好きなのか、それとも僕が上手なのか。
ていうか、お前女の子だったのか。
「次、背中洗うぞー」
前の方を洗い終えて、背中を向けさせる。
背中を洗っている時に珍しいアザを見つけた。
恐らく暴力などで付いたものではなく、生まれつきのものだろう。
「ハートが二つ?いや、クローバー?」
そのアザは、二つ葉のクローバーのように見えた。
風呂を済ませ服を着させた。
子供のお風呂はこんなに大変なものなのか。
ナマモノを扱っているようなそんな緊張感がある。
いや、色んな意味で生物か。
「少しは落ち着いたか?まぁ聞いても仕方ないか。」
自分も物凄い展開で焦ってはいたが、先に子供の心配をした。
「そういや名前がまだ無かったな、そうだな…」
背中のアザを思い出した
「二葉(ふたば)、今日からお前は黒田二葉だ!」
二葉と名付けたその子が少し微笑んだ気がした。
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