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ちらりと頭目は母親に目をやる。頭目の視線に、母親は、ぎくっと身を強張らせた。
「な、なんだい、その目は?」
「お母さん……」
頭目は静かな口調で話し掛けた。母親は驚きのあまり、大声で叫んだ。
「お母さん、だってえ! お、お前、そんな呼び方、一度だってしなかった……」
頭目は、ゆるゆると首を振った。
「お母さん。僕は今まで、とんでもない間違いを犯していたことに気付いたんだ。僕は今、生まれ変わった気分だよ」
頭目は喋りながら、手を挙げ、自分の髪の毛をさっと撫で上げた。今までぼうぼうの蓬髪だったのが、いつの間にか、きっちりとした七三の横分けになっている。
「狂送団、なんて馬鹿な集団の頭目に収まって、今までさんざん他人に迷惑の掛け通しだったことに気付いたんだ。もう、あんな馬鹿な真似は金輪際やめる。これから、僕は、しっかりと更生して、立派な人間になると約束するよ。お母さんにも苦労は掛けない」
「偉いっ!」
不意に聞こえてきた声に、世之介と頭目は振り向いた。
そこには変身した──いや、元の姿に戻った──風祭が立っている。ひょろりと痩せていて、抜けるように色白の風祭は、
風祭の頬は、興奮に真っ赤に火照っていた。
「さっきから聞いていたけど、君の言うことに、僕は全面的に賛成するぞ! 僕も今まで、馬鹿な真似ばかりしていたからね。今日から生まれ変わった気分で……いや、本当に生まれ変わったんだけど……。兎に角、僕も今日から番長星を変えるために、一生懸命、頑張るつもりだ!」
頭目と風祭は歩み寄り、がっしりと手を握り合った。お互い、感動で両目から滂沱と涙を溢れさせている。
「何て気分の良い言葉を聞いたんだ! ぼ、僕は物凄く感動しているぞっ! 番長星を変える! そうとも、それ以外、僕らの目標は、ありっこないんだ!」
頭目は鼻水を啜り上げつつ、叫ぶ。風祭も、しきりに「うんうん」と大きく頷いている。
「番長星を変えるって、本当かい?」
また妙なのが出てきた……と世之介が視線をやると、現れたのは「セイント・カイン」の五人だった。
五人は校舎の裏手にある出入口からのこのこと出てきて、風祭と頭目の話を聞いていたのだろう。リーダーと思しき、真っ赤な制服を身に纏ったセイント・レッドが、つかつかと二人に近づく。
「我々セイント・カインの五人の使命は、番長星から暴力で総てを解決しようという風潮を無くすことにある。君らも同じ気持ちだと見える。良かったら、協力してくれ!」
「おお、同志よ……」
「何て感動的……」
風祭と頭目は顔を真っ赤に染め、次々とセイント・カインの五人と握手を交わした。
「さあ、今日が番長星の変革の始まりだ!」
朗らかに歌い上げるような口調で、セイント・レッドが宣言する。風祭と頭目は満面に笑みを浮かべ、両目をキラキラさせ頷いた。
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