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「ちょっと……どうなってるんだい?」
頭目の母親、ビッグ・バッド・ママは不満に唇をへの字に曲げ、唸るように呟く。ギロリと物凄い視線で世之介を睨みつけた。
「息子をおかしな考えにしたのは、あんただね! あの〝伝説のガクラン〟に、何か仕掛けたんだろうっ!」
世之介は肩を竦めた。
「さあね。俺は、ガクランを必要ないと言った。欲しがったのは、あんたらだ。結果については、俺の責任じゃないよ」
「ぐるるるる」と、母親は凶暴な野良犬のような唸り声を上げる。両手が掴みかからんばかりに、持ち上げられた。
やる気かな? と、世之介はほんの少し、身構えて見せた。
と、ふっと母親は肩の力を抜いた。世之介を睨みつけていた視線を外し、顔を背ける。
「やめとこ。あんたには、勝てそうにないからね……」
忌々しげに呟き、背中を見せ、がっくりと項垂れる。ガクランを身に着けていない世之介の、何が母親のやる気を削いだのか?
世之介は自分の感情を探った。思い出してみる。ガクランを身に着ける自分の気持ちを。
思い出せない!
いや、というより、ガクランを身につけていないに関わらず、世之介の感情はまるきり変化をしていない。さっきだって、母親の挑発を受け止め、いつでも喧嘩ができるよう、身構えていた……。
そうか! 自分はもう〝伝説のガクラン〟を本当に必要としていないんだ! 自分の中に〝伝説のガクラン〟は確乎として存在しているのだ!
新たな展望が開け、世之介はいつまでも呆然と立ち尽くしていた。
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