閑話 『白燕の勇者』   



 ※今回の御話に主人公レギ・アンド安堂礼儀は、一切登場いたしません。

 時系列的に、主人公が新たな人生の第一歩を踏み出し、やっと王城を出た3~5話あたりの。本当の『勇者』六人組の修練の日々の、始まりの御話です。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――





  …――"安堂あんどう礼儀れいぎ"改め、"レギ・アンド"が……

いち「エヴェドニア王国兵」としての新たな人生の"初めの一歩"を踏み出し、御付きの召使"マルナ"と共に。漸く絢爛豪華な王城から出て、「募兵試験」へ挑んでいた頃――…。




 ――真に「勇者召喚の儀」に……『神』に"選ばれた"。

異界"地球"の「日本」から呼び出された、優秀な少年少女――高峰たかみね蒼汰そうた藤城ふじしろ百花ももか早宮はやみや浩二こうじ千騨せんだ智春ちはる波木なみき成哉せいや明野あけのめぐみの六人は。


 …""に備え。広大な王城の一角にある、限られた者にしか立入る事の出来ぬ……。王族の居住空間が存在する一層華美な「王宮」の更に奥、"王族専用"の小規模ながら十分すぎる広さの確保された中庭――「鍛練場」へと、足を運んでいた――――。

 


「――っと、これから最低でも3年から5年間。『勇者』の皆様に"武術"に"魔法"……"一般常識"から、エヴェドニア王国と他国間の"地理・歴史"を教授する。専属の「師範」と「教師」達です。どうぞ"来るべき日"に備え、ご精進下さい。……私も僭越ながら、細々とですが御力にならさせて頂きます故……。」


「いえっ。何も知らない僕らの為に、此処までしてくださって。本当にありがとう御座います、メルディア殿下。」


「ええ。私からも、本当に有難う御座います。」


「私達、一生懸命頑張りますッ!!」


「ああ、これだけの御膳立てされて。出来ないなんて、ありえないよな。」


「……浩二…メルディア殿下の前だぞ。少しは言葉に気を付けろ…。」


「まぁ、まぁ……メルディア殿下、これからのこの"ご恩"に報いれる様私達全員。全力で、取り組みさせて頂きます…。」



 暖かな眩しい太陽の光が降り注ぐ、静かで華美な装飾の排された。"清貧"なる美しさを誇る、この王族専用の広い中庭の鍛練場で。メルディア第一王女直々のこれから一通りの武術・戦闘訓練や、いずれ知らなければならないこの"異世界"での知識を補強・補填する。エヴェドニア王国最優の、魔法・武術の師範と教師陣を紹介され。気持ちを新たに、其々の意気込みを口にしていく蒼汰達は。



 今だ、人間……"人種ひとしゅ"達の確固とした「仇敵」――『魔皇まおう』の脅威を知らず。自身等が置かれている立ち位置が、一体どれ程"危険"と"死"と隣り合わせなのかを。まだ、はっきりとは理解しきってはいなかった……。



 ……そうした、まだ拙く無知でありながらも。『勇者』という"絶対の善性"の体現者としての、強い"正義感"を持ち。並の人間よりも優れた才覚と資質を持ちながら、其れに胡坐を搔かく事無く。誠実に謙虚に教えを請い、"努力"を怠らない堅実さと賢さを持った。まさに『勇者』に"成るべくして成った"六人の前へ……。見事な装飾の成され、貴重な金属の合金と強力な魔法による守護の施されし。優美且つ強固な"白銀の全身鎧フルプレートアーマー"を身に纏った、「騎士」の"青年"が。一人、進み出くると。流麗で良く通る声音を振わせ、蒼汰達の意気込みへ感銘の言葉を述べ始める。



「――流石は我らがエヴェドニアの「守護神」、女神ヴェリタリスが選定せし『白燕の勇者』…。私も、教えがいが御座います。」



 ――蒼汰等より頭一つ分高い逞しい体格に、短く品よく切り揃えられた淡い金髪と薄い水色の瞳。常人ではありえない程整った若々しい顔立ちと、まるで内から光り輝いているかの様なその身に纏う雰囲気に。男女問わず、思わずほうっと息つく六人……。



 まさに、御伽話に登場する様な「騎士ナイト」を彷彿とさせるその青年――"アーサンダー・ディルナ・コメン・ガラディア"は。エヴェドニア王国国軍・第一軍、王家直轄近衛騎士団『白金しろがね騎士団』""であり。古くから、エヴェドニアの"国防"を担ってきた「武家」の筆頭一門として。平時ではあるが……狡猾で強力な「野盗」による辺境の悲惨な人的災害や、危険な中型・大型の魔獣の多くを粗方討伐せしめた武勇に。将来を大いに期待される、次代の「若き騎士団長」であった――。



 そんな"騎士"として、いち"武人"として。名実ともに『エヴェドニア最強』の一角を担う、正真正銘の"実力者"である彼に。同じく六人そろって憧憬の眼差しを向けながらも………その優れた才能と、『勇者』としての破格で最上級の資質故に…。其の"高き頂"に至るまでの道の険しさに、早くも気づかされ。自身等と段違いの"経験値"と"地力"の差を悟り、蒼汰はゴクリ…っと生唾を飲み込む……。



「……そう気負う事はありません。『勇者』様方は、まだこの世界へ召喚されて間もない。此れからですよ。」


「…!…は、はいッ。」



 蒼汰達の気負いと不安を敏感に感じ取ったアーサンダーから、そう励まされ。六人は互いに顔を見合わせ、表情を明るくする。


 それをアーサンダーから一歩後ろで見ていた、紫紺色に金糸の装飾が施された豪奢な天鵞絨ビロード外套クロークと同色のケープを羽織った男は「…ふん。」っと鼻を鳴らし。その男のすぐ隣に立っている、純白の生地に金の装飾の法衣と同じく装飾された深緑の帯を掛けた法衣を着込む男性は、何やら少し困った様に紫紺の外套クロークの男を見ていた…。


 

 ――紫紺の外套クロークを纏う、黒髪のショートカットに魅惑的な透き通った葡萄色の瞳。騎士であるアーサンダーと比べると細身な体は、独特な"色気"を醸し出し。キリッと少し吊り上がった眼光は冷く鋭い……が、その容姿はまさに「」に相応しい"美麗さ"と"気品"を放っている。


 そんな少々気難しく冷酷そうな表情を張り付ける"青年"――"マクシミア・レットン・コメン・コントロウ"は。エヴェドニア王国最高・の『筆頭・王宮魔導士』であり、生家は武家のガラディア家と"双極"をなす「文家」の筆頭一門。エヴェドニアの政権を陰ながら支え、又優秀な"魔導士"すら輩出する「魔導家」でもあり。古き時代の強力な魔導士達が"知識の集積"と次代の"新たな魔導師"の育成のため、立ち上げた巨大な"学府"――「フルーディンス独立魔導都市国家連合」に存在する世界的な魔導学院『フルーディンス魔導大学院』を「首席」で卒業した"天才"。



 そして、そのマクシミアの隣で法衣を纏い立つ……淡い長い金髪を緩く後ろで纏め、つぶらで優し気な光を灯す明るいブラウンの瞳に。柔和そうな何処までも優しく、誠実そうな雰囲気を常に纏い。見ていると何故か心が洗われていく様な錯覚を起こしそうになる…他二人より若干素朴で整った顔立ちの"青年"――"ローレント・ユルナ・ホエンス"は。


 エヴェドニアの"守護神"にして"庇護者"……遍くこの世界の"魂の流転"と新たな"魂の再生"を司り、時に残酷なまでに厳しく、時に母の如き大いなる"慈愛"を向ける女神・ヴェリタリスの教えを説く――「尊影そんえい教」の信徒であり。マクシミアと同じく最年少の、『聖尊影教会』「司教」序列第四位の職位を授かるほぼ最高位の"僧侶"の一人であり、有能で強力な「神官」兼「治癒師」であった――。

 

 

「――でわ…申し訳ありませんが、私はこれで一旦下がらせて頂きます。

……『白燕の勇者』に、"尊き影ヴェリタリス"の白き導きがあらん事を…。」



 …断りの言葉を述べ、六大神の全教会共通の「簡略礼拝」――胸元の中心で左手を上にして軽く"×ばってん"の様に腕を組み、頭を僅かに下げ。「尊影教」系の教徒が多用する一文を最後の言葉に添えると、従者の召使と騎士達を従え。鍛練場を後にするメルディア第一王女……。


 其れに合わせ、初日の習練として。今現在朝の"四刻半午前8時"から昼の"六刻半午前12時"までを、この異世界では極々基本的な魔法と治癒術の基礎知識と。比較的…習得が容易で、よく他国でも広く使用されている武器等の扱いを学ぶ事となり。他の知識担当の教師陣達も又、何処へ姿を消し。そうして先の三人の男性だけがこの習練上に残り三人で少し話し合った後、先ず初めにマクシミアから蒼汰達への教授を始めた。



「先ず、確認しておきたいのだが。…は一体、「魔法」というものを理解している?」


「えっと…"魔法"、ですか……。」



 ……マクシミアの……何かしらの"色"や"感情"の乗らない、酷く平坦な声に。今まで接して来た"貴族"と同じ雰囲気を纏いつつ、けれど何処か毛色の違うものを感じ。若干…気持ち身を引き、其の問い掛けに即答出来ずにいると。それに少々顔を顰めたマクシミアへ、少しの時間を貰いながら六人其々の「魔法」についての認識を語った。



「…僕は、何と言うか魔法は「摩訶不思議で便利な力」だと思っています。」


「私も、蒼汰と大体同じですね。……空を飛んだり、姿を消したり、物を浮かせて引き寄せたり……。」


「あ、あと「何処からともなく美味しい食べ物を出す」とか。「手も足も使わず一瞬で服を着替える」とか、すっごく便利って感じだよね。」


「…うーん…俺的にはやっぱ魔法は"ファイヤーボール"とか、"サンダーボルト"とかの。カッコよくて強いってのが、一番しっくりくるなー。」


「俺はあまり、そういうな事は考えないんだが…。まぁ、イメージとして魔法は「出鱈目な現象を引き起こす架空の技術」……だな。」


「私は結構好きよ。でも…いざ"魔法"とは、って言われると困るわね……。

よく…周りが言う感じで言えば、魔法は「何でもありな幻想」かしら……。」



「…ふむ、なるほど……。」

 


 "六人と色"な其々の微妙に異なる「魔法」というものの見解に、興味深そうに目を細めるマクシミアは。数瞬…時間を置き、口を開く――…。




 …――の、「魔法」とは。


 この・魔獣も含め全ての"魂"が存在する生物が保有する、所謂"生命の力"の余過剰分である『魔力オド』と。空気中に常に漂い対流・滞留する、所謂"大自然の力"そのものである『魔素マナ』を。『霊体アムス』を介し、互いに結合・溶け合わせ。其処へ確固とした"強い意志"を乗せる事での、"望む現象"を発現・発生させる「神秘の技法」である……。


 

「…「技法」…そういった見解で言えば。の言った、「出鱈目な現象を引き起こす架空の技法」という認識が一番近いだろう……。とは言え、お前が思っている程出鱈目でも、全くの法則性がない訳ではないがな。」


「そうなのか……って、あの…俺"波木成哉"です。「波木ナミキ」が"姓"で、「成哉セイヤ」が"名"です。」 


「ほぉ…姓と名が逆なのか、ふむ……ん?"姓"だと?貴様…まさか、「貴族」なのか?」



 突然マクシミアの口から飛び出た「貴族」っという言葉に、若干驚きの顔を見せ。顔を見合わせる蒼汰達。そして一瞬呆けていた成哉は、ハッ!っとなって"否定"の言葉を述べるが……。



「は?え…いや、僕らは普通の「一般人」でしたが……。」


「…ならば"姓"ではなく、ただの"家名"と言え。"姓"は王家から直々に"爵位"を与えられし、「忠臣の血統」である"敬称"だ……ただの「」が、軽々しく使ってくれるな。」

 

「…ッ…。」



 成哉を咎め、マクシミアの睨み据える様な鋭い"拒絶"の視線……。


 これまで"歓迎"こそはされたものの、"拒絶"を示された事は。この異世界に来てから、そして"日本"でさえもほぼ体験した事のない『超人気者』であった蒼汰達六人は。マクシミアから向けられる僅かな"怒り"と"軽侮"……そして、一度も"悪さ"なんてした事もない蒼汰等を"咎める"様な、真っ直で力強い葡萄色の眼光……。


 一瞬、訳が解らず。その視線を一番に向けられている成哉は、息を呑み僅かに一歩後ずさる…。其処へローレントが前へ進み出てて、成哉を庇うように立つと。マクシミアへ、困ったような起こっている様な顔を向けながら。ローレントとアーサンダーも加わり、マクシミアを咎め始める。



「……マクシミア、その様な言い方をしなくとも様でしょうに…。貴方の"悪い所"です。」


「私は、解らいでもないが……。とは言え、『白燕の勇者』にその"言葉使い"はないだろう…。」


「どうせ知る事に成る事…増長するよりはまだまし……………

…アーサンダー…人前で、"マーシー"と呼ぶなッ!この馬鹿がッ!!」


「ははははっ!!馬鹿とは酷いな"マーシー"!。」


「お前……アーサンダー、覚えておけよ…。」


「おっと、それは恐ろしいな…。」



 「すまんすまん。」っと軽く謝罪するアーサンダーに、「チッ!」っと舌打ちを返すマクシミア達の……嫌に"親密"そうな掛け合いに。六人が目を白黒させていると、ローレントからもその二人へ言葉を掛ける。



「まったく……もう子供ではないのだから、喧嘩はやめてください。…いいではないですか、"マーシー"なんて……、ずっとましでしょうに……。」


「「……。」」



 ローレントの、二人を咎めているのか……"自虐"しているのか、よくわからない言葉を聞いた途端押し黙り…。ローレントを直視しないよう目を泳がせ、視線を外しだすアーサンダーにマクシミアの二人……。


 その間蒼汰達は「え、この人達何なの?」っという思いと、「あの人…一体どんな"愛称"で呼ばれてたんだろう……。」っという思いを胸に。漸く落ち着きを取り戻し、冷静になった三人から再び教授してもらい。


 当然と言えば当然な……『勇者』として授けられた、膨大な魔力オド保有量と。『六大神の"ちから"』により、本来日々の神々へ捧げる"祈り"と"信仰心"によって得られる"力"――『信力』さえも持ち得る蒼汰達は。…個々によって、ある程度偏りはあったものの瞬く間に初等魔法から"第三級"魔法までを習得し。その中でも恵は、今現在の他五人をも凌ぐ"第一級"魔導士マクシミアに迫るほどの魔力量を誇り。百花はローレントの用意した「適正試験」の際、高い治癒術と神聖術への適性を見せ。次点で高い治癒術の適性と、百花をも超えた神聖術の適性を見せる蒼汰……。


 まさに、『白燕の勇者』の名に相応しい才能と資質を目の辺りにした。マクシミア他アーサンダー、ローレント達は。内心……"嫉妬"すら霞む、蒼汰達の歴然たる"偉容"に舌を巻きつつ。「彼らならば…。」っという大きな"期待"を、胸に留める……。




 最後にアーサンダーから、本当に"触り"程度に。基本的な武器防具類、片手剣ショートソード両手剣ロングソード骨筋弓オスルス・アルス長槍ロンム・ハスタ小盾スモールシールド大盾ラージシールド短剣ダガー戦棍メイス長杖スタッフ等を見せられ。


 蒼汰達へ「一番しっくりくる」「興味を惹かれる」ものを数種類選ばせると。アーサンダーの見立てで、軽く振ったり構えたりした時の挙動・姿勢を見て。六人の男女として肉体能力、そして性格や魔法・治癒術・神聖術等の適正を鑑み――。



 個々の要望を満たした武器類が六人へ宛がわれ、「例え気に入っていても、その武器が合わなければ。此方で見繕った"適正の武器"に変更する。」っとアーサンダーから釘を刺された後。元々日々"剣道"と"弓道"を部活動で習っていた蒼汰と成哉は。初めて握る真剣の重い西洋剣や、エヴェドニア王国に古くから伝わる伝統の

「複合弓」――"骨筋弓オスルス・アルス"を更に簡略化した弓、"合成長弓コンポジットロングボウ"を持ち。見慣れぬ……其々使い慣れていない得物に、暫く不安気な顔を見せていたが……。アーサンダーから構えや引き方を習い、実際に振って撃っていくにつれ。より腰が入り命中率があっていく様を、アーサンダーに感心され。


 早々に蒼汰には「剣士」としての、"天武の才"が見出され。「剣道」という盾なしの習練法を考慮され、片手半剣バスターソード一本をこれからの"主武器"とし。成哉も同じく「弓使い」として秀でた才能にある事から、合成長弓コンポジットボウを扱う事が決まり。


 「魔導士」としての才能が高い恵には。低位高位とわず…生成される"結晶"――『魔石』の中でも。恵の最も得意とする"火"のと親和性の高い二等「"赤"魔石」の嵌った、魔導士の魔法行使を補助し助ける長杖スタッフを。そして「神官」兼「治癒師」の才能のある百花にも。エヴェドニア王国ひいては、女神ヴェリタリスの"貴色"である。「白」の丸い石英が先端に籠めら、最下位から最上位の神官が持つ「祈りの神具」である"短杖ワンド"が渡され。


 又蒼汰・成哉と同じく「運動部」の中でも体育会系の"陸上"と"柔道"に入っていた智春と浩二は。その高い肉体能力を生かし。健脚と持久力には自信がある智春には臨機応変に動きやすい、片手剣ショートソード小盾スモールシールドを。筋肉質で体格・体幹の良い浩二には、鈍重だが最も体力・柔軟性がモノ言う戦斧バトルアックス大盾タワーシールドを主武器とし――…。




 …――漸く。昼の"六刻半12時"を知らせる鐘の音が鍛練場へ響き、全員が程よく体を動かし汗を掻いてきた頃…。


 たった数時間の訓練で、まだ実践経験は皆無だが……エヴェドニア王国軍・第一軍の、並の「騎士見習い」に匹敵する練度にまで迫った蒼汰達六人は。予定通り今日の処の訓練は終わり、アーサンダー等と別れ。掻いた汗と汚れを落とす為控えていた王宮召使達に連れられ、浴場へ予め用意されたたっぷりの湯で体をサッパリとさせると。『勇者』専用に用意…された食堂へ赴くと。席に着くと、召使達が昼食を運び込み初め。食堂内はあっという間に、腹の空く芳しい香りに包まれる……。



 ――黄緑のぺーストが塗られたこんがりと焼かれスライスされたパンの「突き出し《アミューズ》」と。五種の野菜の彩が綺麗なテリーヌの「前菜」。


 透き通った美しい黄金色のコンソメスープに。半分に割られたイセエビの様なの香草焼きに、オレンジ色のソースの掛かった「魚介料理」。


 「口直し」の小さくざく切りされた"林檎"の入った氷菓に。真っ赤なジャガイモのマッシュポテトの添えられた、何かジビエっぽい骨付き肉のソテーの「肉料理」。


 最後に可愛らしいほんのりピンクのクリームのケーキに、飴絡めされキラキラと輝く赤い真ん丸の甘酸っぱい小さな果物。いれたての良い香りの紅茶?と、ラングドシャの様なクッキーの「デザート」――…。


 

 美味な昼食をたっぷりと頂き、その前に入った湯浴みですっかり疲れが取れリラックスする蒼汰達…。


 暫く楽しい会話を楽しみ、今日習得した初めての魔法についてや其々の主武器についての話に花を咲かせつつ。そろそろという時間に、食堂へ控えていた召使の誘導で別の部屋へと移り。午後からのエヴェドニア王国の"地理・歴史"についての授業を専属の教師から受け。


 これから毎日続く「修練の日々」を思いながら。まだ見ぬこの異世界に広がる"未知"と、いずれ渡り合う事となる『魔王まおう』や魔獣の脅威に。六人は、又恐れながらも…。目の前に積み重ねられた"今やるべき事"に集中し、一心に取り組んでいく彼らは。今はまだ未熟だが、決して…"努力"を忘れない――全ては、自身等に課せられた"正義"――…。




    ――『世界を救う』その務めを、果たす為に……。


 


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