割と魔王はポジティブです!!

-思想空間 最果ての駅-


この世界は全ての存在が走る列車に乗り込んだように決められたレールの上を進んで決められた駅で降りたり乗り換えたりする。しかし魔王。君はもうどんな列車も止まることの無い「最果ての駅」で降りてしまったみたいだね。(著者カミさまの声だけが囁くように聞こえる。あたりは古ぼけた無人駅のようだ。永遠に続いている線路を薄い霧が包んでいる。遠くから暖かい日差しと少し肌を刺す風が吹いている。)


-つまりたったそれだけのことであろう。-


いやいや、そんな軽んじちゃいけないよ魔王様。だって君はもう偉大なるジピルアの魔王でも何でもないんだよ。ただ存在する概念としてここに立っているんだ。


-ならば我はどこへ向かおう。魔王でなくなったのでは気が楽で仕方ないな。-


強がりはいけないよ魔王様、君が実はジピルアに戻りたい気持ちがあることは僕には一目でわかる。そして僕だってこの世界に落ちたことがあった。


-ならば著者カミさまもここから抜け出す方法を知っているのであろう。-


まあ、成功するかわからないけど一つだけあるよ。


-我にその方法を教えて頂きたい。-


とりあえず「進む」それだけだよ。


その時不思議と永遠に見える線路道が少しだけ短くなっていく気がした。


-意外と簡単なことなのだな。-


これが意外と難しいんだよね、まあ頑張ってよ魔王様。


魔王は線路道を歩きだした。次第に薄い霧が濃くなっていき、魔王様の背中をかき消した。


-ジピルア 北の霧の海 半壊した魔王城前-


ミギウデは目の前の状況に気が動転している


「くそッ!間に合わなかった!閣下の偉大なる夢の支えになるどころか閣下をこんなところで死なせてしまうなんて!!!」


絶望するエレナの横からデビルワイトが顔を出す。


「こ、これは恐らくブヒッ!転送封魔の長槍ウォマンイーフだブヒッ!」


魔王様の屍に突き刺さっている鈍い青光りを放つ長槍の匂いを嗅いだ雄豚デビルワイトは鼻を鳴らした。


魔王の屍の前で手をついて項垂れていたミギウデはデビルワイトに鋭く紅い眼を向ける。


「では閣下は…!」


「ブヒブヒッ!ウォマンイーフの槍で「其々の果て」に閉じ込められているだけブヒっ!助かる方法はあるブヒッ!」


残された魔物達の虚ろな表情に一筋の光明が見えた。


「一体どうすれば!!?」


デビルワイトはその臭い豚のような顔を曇らせて言う。


「これはただの言い伝えであるのブヒッ!だが」


残された魔物の皆が夕陽に照らされているデビルワイトの真剣な面持ちに息を飲む。


「封印された者の願う物を用意するんブヒッ!だ」


その瞬間からミギウデは嗜好の逸品達を、皆は各々に魔王様が欲しがりそうな物を探しに各地に散らばって行った。残されたデビルワイトとエレナは屍となった魔王様の側で落ちる夕陽に照らされている。


「まだ私、閣下と呼ばせて頂いていないのに…」


デビルワイトの頭を撫でたエレナ。


「大丈夫ですよエレナさま、きっと閣下は帰ってきて下さいます。ちょっと遠くに出かけただけですよブヒ」


エレナは返事もせずに魔王様の亡骸をただ見つめて涙を流している。



魔王様に近付いたエレナの手の指先が魔王様の角張った顔を優しくなぞる。


陽が落ちてあたりにいつもより静かな静寂の夜が訪れる。



-サカエテル王国 ギルドの酒場-


今サカエテルのギルドを騒がせているクエストがある。まさに勇者である俺が今承ったこのクエストがそれだ!それも簡単なのにクエスト報酬が莫大ときている!


「迷い兎探しクエスト?」


ルカジマ☆ドーザウィは疑念の眼差しを酔っ払って話す勇者に向ける。隣のルディは新しく購入した謎の劔を入念に手入れしている。もちろんこの前のタコガエルの報酬は殆どパアになった。


ルディは劔を手入れしながら勇者に言う。


「兎くらいなら、こいつで八つ裂き。いや千切りだな」


勇者は奮い立った。


「そうだ!迷っている兎を探して見つけるだけのクエスト、なっ!楽勝だろ!!?てかDカップ?殺したら報酬はゼロどころか俺たちが殺されるぞ」


ルディはその銀色の長い髪を風に揺らす。


「どういうことだ?」


勇者は持っていたクエストカードをルディに見せた。


「-依頼主- ジュゼット ジュワンゼール二世-。ってこいつジピルア騎士団の団長じゃないか!!」


ルディの色黒の肌が冷水を浴びたがごとく青ざめる。


「なんだ?こいつお前の知り合いか?」


ルディは顔を引きつらせている。


「…その名は忘れはしない!ジュワンゼール一世は、その…若い頃の俺が騎士団にいた頃の戦術指導教官だ」


勇者がほうほうと興味ありそうな表情を浮かべ、ルカジマは細い目でルディを見て言う。


「ルディさん、そんな頃から職を転々として……」


ルディは恥ずかしそうにもじもじしている。


「うるさい魔法少女!!俺が職渡りをするのは経験値を他人より沢山得るためであって!!別に自分に見合う職が見つからないとかそーいうー!」


ルカが話の腰を折る。


「だって今度はギルド酒場のウェイトレスやってんのにまさに今ここでサボってるじゃないですかあ」


「ぐぐぐっ!」


手入れしていた劔を危うく落としそうになるルディ。


「まあ、そりゃあDカップなんだから何処の店主もお前を雇うだろ、なあ」


ゆう店主との面接時の光景が頭に浮かびそうだ。


しかしルディは勇者を見下すような眼差しを送る。


「だがなあ、勇者なんて所詮無職のニートみたいなもん-!?」


ルカジマがハッとしてルディの口を塞ごうとする。


「な、なんなんだ魔法少女!?どうかしたか!?」


目を丸くして驚くルディ、ルカジマは…


「それ言ったらこいつめんどくさくなるからやめてルディさん!」


勇者はやっぱり酔っ払ってウヨウヨしている。


「2人ともどしたー!?ういー!ういっ!ういー!」


とりあえず次のクエストに行こうか、とルディ。


ルカジマは「さっさと行きましょう、こんな酒カスは置いて」と返して2人は泥酔した勇者を酒場に1人で置いて行ってしまった。


「うぃーっ!ういっ!ういー!!」



-果ての駅-


深い濃霧の中線路上をたらたらと歩き続ける魔王様。


「んまあ、ずーっと進んでりゃなんとかなるっしょ」


魔王様は両手を広げて伸びをする。


「ういー!ういっ!ういー!!!っとお」



死んだはずだけど、なんか違うんだよなあ、清々しいというか何というか。平面だった世界に奥行きが出てなんか自由な感じがするというか。



ふと立ち止まり、振り返るとなった魔王様。



「-あっ!勇者オーマの冒険の新刊!!買ってねえええええええええ!!!!」













割と魔王はポジティブです!







「いやっ!これどー読んでも誰が読んでも打ち切り展開でしょ!!著者出てこい!!著者ああああああ!!」


今まで出演した全てのキャラクター(下等魔族スライムはアヘ顔のまま、著者 監督不行届けの様子)はその場でこの世の終わり、というかある意味既に終わっていたのだが。皆おうおうと泣き崩れた。



ジピルアの世界に再び平和が訪れた。多分。










出演キャスト


偉大なる魔王様 -魔王様


ライトハンドオーマ -閣下の右腕



勇者 -変態クズ


ルカジマ☆ドーザウィ -とりあえず魔法使い



ルディ -Dカップ


エレナ・パフェヌドール -1日3食パフェ!


ジュゼット -元気、なのかな


キンゲ -魔王倒した元兎


幼体ドラゴン -名前はまだ無い


猛烈魔獣幹部たち -城の管理ご苦労様です


村人の子供達 -とても楽しそうです




密林オウサマタコガエル -肉片





その他


死神


-いや待てよおいっ!おいー!!


紫色ピエロ仮面の男


-えっ?僕がその他なの?こいつはわかるけど、俺その他なの!?えええーっ!!?









そして読者の皆様


-次々と迫り来る駄文を躱して、最後の最後までこの作品をお読み下さって本当に感謝、感謝でございます-







原作/原案 カクヨム掲載 著者さま/飯田乃生


企画 飯田 乃生


シリーズ構成 飯田 乃生


キャラクターデザイン 飯田 乃生


プロップデザイン 飯田 乃生


美術監督 飯田 乃生


色彩設定 飯田 乃生


音響・撮影監督/編集 飯田 乃生


音楽/プロデューサー 飯田 乃生


音楽制作/ビラ配り 飯田 乃生


アニメーション制作 飯田 乃生


協力


著者の勝手極まりない独断によっていずれは協力してくれるかもしれない会社や社員の方々。






制作 飯田 乃生














監督 飯田 乃生









割と魔王はポジティブです! -完














次回お楽しみに!!

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