ep.10 割と魔王は鈍感なんです
魔王くんはその白く透き通ったしなやかな腕にまとわりつく貴族娘を睨みつけた。
「お前いつまでくっついてんだ!離れろ!」
「えへ、だってワッくんかっこいいんですもの!」
「なんだ?ワッくんて?馬鹿にしてるのか人間!!」
エレナは少し困った顔をする。
「まだ早かったのかしらワレノアくん?ワッくんのワはワレノアのワよ!」
魔王くんは呆れて物も言えない。
幸せなのよ!私とっても幸せだわ!
エレナ・パフェヌドールは掴んだ魔王くんの腕をその豊満な胸で揺さぶりながら笑った。
「いつまでもここでラブラブしてんじゃないわよ!早くどっか行っちゃいな!!」
ジュゼットは鼻を鳴らしてぷんぷんいいながらすぐさま帰って行った。キンゲを置いて。
「よし、エレナとかいうやつ。これから俺の城へ向かうぞ!」
眉間に皺が寄る魔王くん。
「はああっ!!私いきなり貴方の愛の巣へ
魔王くんはエレナ・パフェヌドールの豊満な身体を抱き上げて、まあお姫様抱っこをしてサカエテル城下町の空を飛んだっつーことだ。あー、ロマンティックの鏡やー。
2人は子兎のキンゲが魔王くんのマントにしがみついていたことも知らずに魔王城の方向へと飛んだ。
「おい人間!動くな!落ちるぞ!!」
「私!空は初めてなんですううううう!!」
大方の予想通り、キンゲは揺れに耐えきれず密林に落ちていった。そしてあの紫づくめの仮面の男に拾われた。
-魔王城門前にて。
「いいか!?絶対お前は自分が人間だって城の中で言いふらすなよ!いいか!?」
魔王くんは片手をエレナの肩口に、もう一方の手でエレナに消臭呪文カオリナクナールを放ちながら警告した。(カオリナクナールはいつもトイレの消臭に使っているのだがこれをかけると文字通り無臭になるのだ!人間臭も加齢臭ももれなく無くなるのだ!)
「えっ?なんでですの?もしかしてそういう家訓のご家族の方々なんですの?」
エレナは真剣な顔で質問する。
「あ、ああ!そういう家族なんだ!」
魔王くんはよくわからないが返事だけはした。
「俺は家ン中だと雰囲気変わって、なんか見た目ゴツくなっちゃうかもしれないけど。驚くなよな」
「ももも!もしかして家の中では裸一貫が家訓なんですの!?わわ、私そんな厳しい家訓でもワッくんのためならば!この身を捧げますわ!!」
なんか変な情熱の炎がエレナに巻き起こっている。かなりアブない。
「そういうことじゃない!だから俺はその…魔王だからな」
「あ!家族揃って魔物系コスプレイヤーとかそういう家訓ですか?お家の飾り付けも凝ってますし!!…でも私、脱いだら凄いんですよ。だから裸一貫でも私は……」
だからなぜそうなるのか、筆者にもよくわからない。恋の力、恐るべし。
「まあいいから、とりあえず入るぞ!ほれ衣装!」
魔王くんは威厳が漂う魔王様へと戻り、エレナは魔王様のかけた魔法によって何やら花魁姿になっている。
「これだと胸が落ち着きませんわ、ワッくん」
胸の谷間を眺めるエレナ、視線を魔王様に戻すと全く別方向を向いていたことに少しばかり腹を立てた。
「あと、最後に。我を呼ぶときは閣下と呼べ、いいな?」
魔王様は花魁姿のエレナ・パフェヌドールを脅すためにその顎をその禍々しい指先でくいと引き寄せた。
「はうっ!閣下!そういうのも嫌いじゃありませんわ!」
興奮して身をよじるエレナを見てなんか色々と間違って伝わっている気がした魔王様だったが。とりあえず城内へ2人で入っていった。
「閣下との初めてのデートはT○Lに行きたかったのですけど、こんな感じの暗いお城もロマンティックでエロティックでとってもいいですわ!!」
花魁姿のエレナは肩を露わにして色めき立った。つまりは最終形態一つ前である。それとはお構いなしに魔王様。
「ネズミならあれよりでかいのが沢山いるぞ」
魔王様は少しばかり世界中に植民地を作って世界転覆を狙うあのネズミの視線を背中に感じて身震いした。
割と魔王は色々と鈍感です。
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