ep.9 神患いの少年
「-さあ、やっと全てがぼくの思い通りになる-」
いかにも怪しく背の高い謎の男。彼は枯れた紫色の魔法使いのとんがり帽子に丈長の紫色のコートと怪しげな口を尖らせて笑っているピエロの仮面で顔と身体を全て覆い隠している。
「ウルルル?ウルル…!」
か弱い兎の背中をその長い爪の先で触れる。
男の頭の上に乗っているとんがり帽子に巨大な一つ目が浮き上がった。その紫色の瞳が怯える兎を真っ直ぐに見つめている。
「ハッハア!ウケるねホント!!子兎とこんな奴合成しちゃうなんて!!ハッハア!お前やっぱ天才だよ!俺の目に狂いは無かったねえ、ヒャッハアア!」
「帽子くん、少し静かにしてよ。兎ちゃんが怯えてる。優しくしなくちゃ」
兎を撫でる男。その恐ろしさのあまり子兎は震えている。
「ハアア?まーったくおめえさんは面白え!この兎にこの後何をするのか、何をさせるのか考えただけでも鳥肌が立つゼ!ヒャッハア!!」
帽子はざわざわと揺れながら笑う。
「この子だってこの密林の奥地に捨てられてしまった捨て子なんだ。ほら見てよ[キンゲ]だってよ。いい名前じゃないか、僕にも名前くらい欲しかったけど。神患いの少年なんて、酷すぎるじゃないか。でも名前を貰っていたのにこの子は捨てられた、可哀想じゃないかい?」
仮面の奥の顔はきっと、悲しそうにしている。
「お前は良いやつなんだか悪いやつなんだか時々わかんねえんだよな。ハッハア!まあ、面白いからいいんだけどよ!」
帽子と会話していた仮面の男の背後には丘のように大きな影が聳えている。
怯える兎はその大きな影と目が合った。
仮面の男は再びその長い爪で兎の背中に触れた。つよい風が吹き渡り仮面の男のコートをばさばさと揺らす。ざわざわと大きな影の鋭い無数の鱗が音を立てた。
「君は空を飛んだことがあるかい?」
その場に凄まじい光が溢れた。その時けたたましい怪物の叫びが不吉の狼煙のように密林の夜の闇に響き渡った。
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