ep.5.1 魔法少女は割と…

魔王様は泣き喚いております。何故かって?当たり前でしょう。それは私が魔王様の所有する漫画・ゲームを先週、全て処分致したからに御座います。それ故に魔王様は泣き喚いているのです。そもそも魔王様から涙が出ることなどあり得ませんが。


「ぐおああああああああああ!初回限定の書物コミックやソフトまでもがあああああ!!!」


魔王様の放つが城中の電気点検をしていた猛烈魔獣幹部たちを氷漬けにしました。


やがて魔王様は腑抜けた村人モブのように魔王様の書斎前にてただ呆然と立ち尽くしています。話しかけてくる勇者をひたすら待つ村人モブが如く魔王様は同じ位置同じ向き同じ姿勢でずっと立っております。


ただ最近、そんな魔王様の独り言が廊下から聞こえてくることがあるのです。


「ああ、もういーよこんな話。ありきたりでしょ、魔○の秘書とか、はたらく魔○さまとかいちばんうしろの大魔○とかま○ゆう魔○勇者とか○ver l○ad とか○様ゲームとかS.A.○とかガンダム○○とか割と魔○はポジティブですとかこの素晴らしい世界に祝福○とか…-…小坂大魔○とか浅田真○引退とか餃子の○将とか、○ドリー・ヘップバーンとかミヤザキ・ハヤ○とか……。もう、ネタが尽きてんだよね!打ち切り!打ち切り!ああもうやってらんないね!割と魔王はポジティブじゃありませーん!はい!終了!」


何やら魔○様は呪文を唱えつづけているご様子です。しかしながら私にはやはり漫画やゲーム等を捨てられたことに対して拗ねているように見えなくもありません。皆様だったらどう思われるのでしょうか。しかしながら私自身もあれはやりすぎだったかと悔やんではいるのです。


「閣下、あの漫画やらゲームやらのことなんですが」


魔王は棒読みで答える。


「返事ガナイ、タダノシカバネノヨウダ」


「閣下、ゲームのやり過ぎです。喋れたらしかばねではありませんよ。それかもしかして閣下は割と○ver l○ad のアイン-」

「待てエエエ!!ミギウデ!!!!その名をこのジピルアで口にするのは禁忌中の禁忌!!ズとかウルとかゴウンとか言ってたら我らジピルアから消滅してたよ!もしくはジピルア自体消滅してたよ!!本当に終了だよ!?」


魔王はアルマゲドンの恐怖に怯える村人モブのようにガタガタと震えている。まあ彼は起こす側の魔王なのですが。


ミギウデが笑う。


「閣下の漫画やらゲームやらは全て私の千里眼の届く範囲に保管してあります。返納を望むのであれば早速、魔王様らしく人間を滅ぼして下さい!閣下!!」


ミギウデは両手を胸前で組み、その美しく紅い千里眼を輝かせた。


「ぬうううう、何故我は上位魔法が全て使えて千里眼と千里耳だけ習得できぬのだ!しかし嗜好マンガ逸品とゲームが存在するとあらば我の嗜好の逸品達よ、今しばらく我を待っておれ!必ずこのジピルアが誇る魔王が手に入れてみせるぞ!!!」


魔王様の瞳に一筋の炎が湧き立つのがわかりました。これはチャンスかもしれません!!


「閣下!まずは何故我々が人間を滅ぼさなくてはならないのかの説明から入りましょう!!!名付けて3秒で魔王になれる!!ライトハンドオーマ先生の魔・王・講・座ぁーー!!!」

パンパカパーン!!!

どこからか効果音。


ミギウデはアイドル的なポーズを決めて佇んでいる。


そしてどこからかRock調のBGM!


どこからか大きなホワイトボード!


どこからか大きな教壇!!


どこからか学習机の大群!!!


何故かミギウデの服装が高校教師!!!!


「な、なんか我は凄まじい勢いを感じるよミギウデ」


城外の落ち葉拾いをしていた猛烈魔獣幹部たちも訳もわからず並べられた学習机に座らされている、ミギウデに巻き込まれたようだ。


ミギウデの今までに見ない溌剌とした紅い覇気は活火山の如く全開である。


「魔王とは!!本来仏教用語で、魔王は実は六道輪廻世界観において欲界の第六天にあたる他化自在天にあって仏道修行を妨げる「第六天魔王波旬」のことなんです。織田信長がどこかしらの渡来人に「我は第六天魔王である」と自己紹介したという逸話がありますね。まあそれは仏教的な観点に基づいた魔王なんですけどその後にその他の神話や伝説における邪悪な神格の頂点!!もしくは悪魔や怪物、妖怪などの頭領の呼称として幅広く使用されはじめて-(以下超倍々速)-これでイブリスやサタン、ベルゼブブという魔王の基礎形が出来上がった訳です!!」


猛烈魔獣幹部たちはあまりのミギウデの覇気に机の上での垂れ死んでいる。


「ミ、ミギウデよ。なんだかかなり長かった気がしたけど?もう終わりでいいのかな?いいんだよね?」


魔王は疲れ切っている様子だ。


「あの閣下、まだ序盤のなのですが」


「一体なんて本なんだ!!20時間くらい経ってって、えええ!?」


「あと459ページくらいありますね」


「ぐっほおええ」


魔王は机の上で死んだ。彼は死ねないのですが。


割と魔王はポジティブです。



サカエテル王国領外デロデロ密林にて同時刻-


「なあルカ、やっぱりお前Aカップだろ」


割と勇者はしつこい。


「あの、正直にこの密林で私を犯したいとか言ったらどうでしょうか。ちなみに吊り橋効果は私の場合可能性0ですから、危険な状況になる前に勇者さまを転移魔法マニューバで私は勇者さまを置いて危険な状況から逃げますから。あと私、Aじゃありませんから」


ルカジマは密林の木々の隙間を抜けながら後ろから下ネタ全開のピンク色の視線を送る勇者を冷凍光線を発したが如き瞳で一瞥する。


「いやいや誤解しないで!!俺はクエストクリア報酬が高かったからこのの討伐クエストをえらんだの!俺にはルカと密林でなんかするとかしないとか考える余裕ないの!だってクリア報酬60000,000ルアだよこのクエスト!!!」


ルカジマはとんだ阿呆を見るような冷たい目で勇者を見る。


「報酬が高いということはそれなりの危険が伴うんですよ。クエスト内容に商業旅団全滅とか騎士団に甚大な被害とかクエスト的に問題有りとか書いてありましたよ。ふしだらなことしか考えない今の勇者さまなら今日密林タコガエルに捕食されてこの密林にその骨が密林タコガエルの糞にまみれて埋まることになりそうですね」


「えっ?カエルだよ?ゲコゲコ言うやつだよ?!それがクエスト的に問題有りなの?!」


勇者はそれを聞いて一気に不安を露わにした。


「なあルカ、やっぱりお前ほんとはEカップなんだろ、わかるよ隠した巨乳ってやつ。それが、いいんだよなあ」


勇者はルカジマに媚びているようだ。


「なんか私に助けてほしいのか知りませんが、それ全くもって逆効果なんで。勇者さま、勝手にタコガエルの糞になって下さい--!」


振り返ったルカジマは勇者の頭上に姿を現した大きな影と目が合った。


-シュルシュルシュルシュル-

巨大な大量の触手が2人のまわりを荒れた海のように畝る。

「-ゲエコ、ゲエエコ!ゲエコオオオオオオ!!!」


勇者は笑っている。


「ははっ!ルカ今のカエルの声真似上手すぎ!!凄くいいよ!それ!あっはっはっはっ!ひっひっ!---えっ?--」


勇者の肩の上に粘着度の高い生暖かい液体が垂れ落ちてきた。


ルカが青ざめて勇者を見ている。


勇者も青ざめている。


「でっ出たああああああああああああああ!!!!!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る