ダメっぽい店主だけどどことなく憎めないユージーン、面倒見の良い郵便屋のオルト、腹ペコ系謎の少女の織り成す穏やかファンタジー。シリーズものらしく今作では謎が多いまま終わりますが、優しいファンタジーの空気と愛着持てるキャラクターの空気は十分楽しめました。コレ読んだ後にシリーズ二作目と気づいたんですが、単体でも大丈夫。幕間として挟まれる詩的な文章がファンタジック。間奏・人形の夢の少女の心情とリンクした詩や、綺麗な花々を語った古歌がとても良いです。
訪れる人々と彼らの騒動を見守り、非日常をも取り込んでやがては日常と成して行く骨董店。その懐の広さは、頭上に広がるあの樹にも似て―――十二番街にある、おんぼろで雑然とした(という表現では済まない)骨董店。そこにとんでもない"荷物"が運ばれて来るところから始まります。当初文字通りの"お荷物"であったものが、ユージーンの言葉やオルトの態度にひとつひとつ輝きを得て行くさまに、えも言われぬ美しさを感じます。今後どんな非日常が転がり込むのか。続きが楽しみです。