第6話 ロボットVS人間
人体機械化規制法案討論会の当日。ホテルにあるテレビを数分見たが、どの番組も今日の討論会の内容で持ちきりだった。ニュースによると、多くの会社が今日を休暇にして、社員がことの顛末を見届けられるようにという準備がなされていた。多くの人が注目する巨大なイベントということで、それを意識すると自然と自分の中でも士気が上がった。
討論が始まった。まず機械化についてなぜ賛成なのかを、規制反対派が壇上でスピーチした。会場は熱気に満ち溢れていた。そのボルテージと相互反応して、議論をするディベーターも熱量あるスピーチへと変わっていく。ディヴィッドさんの演説が終わり、いよいよ両チームのこり一人となった。規制反対派の最後、壇上に上がった者の姿を見て、会場がどよめく。
「あ、あれは……」
「まじか。ソウタの予想が当たったとはね……」
そこにはロボットが立っていた。ヒト型の形状をしながらも、鋼鉄の金属により作られた手足の生えた、正真正銘のロボットの姿がそこにはあった。
「はじめまして、私の名はパンドアといいます。パーフェクトボディ社の出資により完成した、ヒト型ロボットです。今回私に使われている生命維持システムは、先ほど説明のあった人体機械化に使われる予定のものと全て同じです。つまり、皆さんがこれから機械化によりなるであろう新しい自分のプロトタイプのようなものです。お気になされる方がいらしたらぜひしかとご自分の目でご確認のほどをよろしくお願いします。さて、私の目から見ると、この世界でやりたいことが沢山あります。この世界で成し遂げたいことが沢山あります。私はまだまだこの世界をよくしたいと思いますし、この世界のまだ見ぬ物に対する果てることのない興味があります。今、人類の知能を持ってしても、まだ解明されていないことは山ほどあります。今の未熟な自分に満足するほどつまらないことはありません。私の今はとても楽しいです。どうぞ、皆さんの幸せが増えることを私は願います」
スピーチが終わった。観衆の顔は、興奮ととても刺激的なものを見たという笑顔に包まれていた。
今度は自分の番だ。とても緊張がこみ上げる中、一歩一歩足を進める。
「あの、私は機械化に賛成ではありません。なぜかというと、それは人として今まで培ってきたことを捨てるということになるからです。あなたが、ロボットになって死んだとき、天国のあなたの両親はたまた先祖は、あたなを見分けることが出来ません。人が人を捨てるということはそういうことなんです。今まで培ってきた多くの人が渡してきたバトンを」
「ギィーーーーー。ギィーーーーーン。ギィギィギィ」
僕のスピーチ中、あのロボットが暴れまわり壇上に上がってきた。どういうことだ? この動き方、壊れてしまったのか?
「ギギギギギイギギギイギギギイギギギギギギイギギギギギギギギギギギギギギギギイギギギギ」
うめき声のようなものを上げながら、そのロボットは停止した。動かない。電源の点灯ランプが消えた。
「うまくいったな」
「裏で尽力を尽くしてくれた、技術部の奴らのおかげだ。本当に素晴らしい」
「あの、これなんですか?」
「我々、規制賛成派の総力を挙げて用意した技術部隊がこのロボットをハッキングすることに成功した、それだけだよ。機械化の脆弱性に問題があることのいいデモンストレーションになった」
技術部隊が裏でハッキングをしていた? それをする準備ができていたということは、ロボットがスピーチすることも分かっていたわけか?
かくして今回の規制化法案をめぐる国民投票は賛成は多数で、続投が決まった。
不滅の規制法案 @laplacegalass
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