第157話 テレビ出演

 仕事が終わると一人ボッチの時間になる。


 歩いて十分の所に「木の実」という居酒屋がある。僕の幼馴染の正人がやっているお店だ。自分の母親を使い営業していた。


 一回行くと四千円くらい使うので安くは無い。この店に行くと小、中学の友達に会える。僕も大人になりいじめられた時の事は忘れていた。


 店は小さくて十人も入ればいっぱいだ。相席になる事もあり新規のお客さんは入りづらい店だ。


 マンションに引っ越してから週末、川崎に出るのが面倒で、よく木の実に行くようになった。


 僕は正人のお母さんが好きで、お店に行くようなものだ。愛想が良く子供思いの理想的な母親だ。無口の僕は他のお客さんから声をかけられてもあまり喋らない。


 日の出屋の販売食数は一日一万食を越えていた。


 ガオの販売ランキングでは二位になっていた。一位は大手のテレビなどでお馴染みの会社だ。お弁当クラブで販売するのは難しく撤退する会社が続出した。そのうちの何社か、お弁当クラブが原因で倒産した。


 明日は我が身だ。とうとう一位の会社も撤退した。 


 日の出屋が一位になるとテレビ局の取材依頼が来た。兄はガオの許可を取り、取材を受ける事にした。


 夕方のニュース番組の特集で放送になった。僕は木の実でテレビを見た。 


 日の出屋初のテレビ出演だ。


 兄はマスクをして取材に答えていた。顔が見えない。せっかくの全国放送なのに勿体無いと思った。


 後から兄にマスクの事を尋ねると、わざと顔が分からない様にしたと言った。


 正人のお母さんが凄いと喜んでいた。

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