第156話 配送車の盗難

 そんな時、連続自動炊飯器の中古が出たという情報を聞き兄と見に行った。三段釜より優れ、炊き上がりも良く、しかも肉体労働が少ない。


 兄は即決した。


 僕の兄は天才だと思う。どんな逆境にも弱音を吐かず突き進む驚異的な精神力の持ち主だ。


 僕は兄に甘える事しか出来ない。


 日の出屋の外人は旦那さんが日本人の人が多くなった。総務部長に聞いたら十一か国の国籍を持つ人達が働いていると言っていた。


 三階建てのワンルームマンションが完成した。一人暮らしには勿体無かった。ペットは家が傷むので禁止になった。


 家の前にはコンビニ、ラーメン屋、ファミレスもある。駅も近いし兄の建てたワンルームマンションはすぐに満室になった。


 マンションには軽自動車の駐車場があり僕が使わせてもらった。


 夜間、工場前の私道に配送車を停めていた時期がある。


 車には看板が入っておらず、それを狙われた。車を朝移動するのは店長の原口だ。車が無い!しかも三台も!


 日の出屋は大騒ぎになった。


 三台分の配送車を揃えるのが先決だ。兄は自分のワゴン車のベンツも出して対応した。


 警察に届けたが出て来る可能性は低いと言われた。


 事務所で幹部会議が開かれた。僕はある事に気が付いた。配送車は無線でのやり取りを止め、全て携帯電話で事務所と個数の確認をしていて、電源を入れたまま車の中に置いてある。携帯電話の会社に連絡して逆探知出来るのではないか?


 兄はすぐに反応した。問い合わせると、横浜の元町近辺で電波が確認出来ると言う。詳しい場所も教えてくれた。半径一キロの確立であるという。


 幹部の一人が見に行く事になった。三十分後、この幹部から連絡が有り二台見つけたと言う。


 ナンバープレートは、湘南ナンバーに付け替えられていた。


 車の鍵穴からエンジンに直結されていて、明らかにプロの仕業だ。 


警察に通報して、翌日の現場検証に僕も立ち会った。


 残りの一台も後日見つかり犯人も逮捕されたと聞いた。以後、駐車場所を確保して防犯カメラを設置した。


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