第94話 妹の結婚

 妹の美沙が、結婚する事になった。


 相手は職場の先輩で、歳が十歳上だ。親父は大反対して、結婚するなら縁を切るとまで言った。 


美沙には悲しい過去がある。母親の正美が美沙を身ごもった時、親父は母に金銭的に育てられないから中絶するように命令した。


 母は体を張り、産むと美沙を守った。姉と僕の様に、奇形児が生まれるのを親父は恐れていた。


 母は中絶させるなら、私を殺せと親父に迫った。


 そうこうしている間に美沙は生まれた。そこで親父は困り、自分の兄に美沙を預けたのだ。


 母は美沙を守り抜いたが、親父を敵に回してっしまった。


 僕の保育園時代、母が迎えに来ていた時期がある。母は毎週歯を一本ずつ抜いていた。僕が何故そんな事をするのか尋ねると、親父が歯を全部抜き総入れ歯にしろと命令されたからだと言う。


 下話しになるが、歯の無い口で男のアレを含むと男はかなり気持ち良いそうだ。ソープランドでも人気が欲しくて、総入れ歯にしている嬢もいるらしい。


 親父はなぜ避妊しないのだろう。男の傲慢さを感じる。


 親父は、その代わりと言っては何だが、ギャンブルは一切しないし風俗も行かない。ストレスのはけ口を母に求めたのだろうか。


 恵美姉さんの話だと、親父が恵美姉さんの母と別れた理由が、卵巣に腫瘍が出来、夜の相手が出来なくなったのが原因だと言っていた。


 その後の正美母さんの時、四人も子供を作っている事から見て、余程の好きモノなのだろう。


美沙は結婚を許され、埼玉に二千万円で家を買った。男の子二人の子宝に恵まれ、旦那と仲良く暮らしている。

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