第92話 勉強会
兄は、積極的に日給研に参加していた。
年に三度、神谷会長が指名して全国の仲間の元へ出向き、工場見学など勉強会を開催していた。
僕も兄に同行して、いろんな所へ連れていってくれた。広島、仙台、京都、八王子など一泊二日で勉強した。
弁当コンクールも行われ、二十社中四位に日の出屋は入賞した。この時、同行した調理師が下手くそな男で、ほとんど僕一人が調理して盛り付けもした。
優勝と準優勝は太陽グループが独占した。
メニューは同じで、材料も同じモノを使い、切り込みと味付け、調理方法、盛り付け方法が審査の対象になる。
参加者全員で試食して投票で順位が決まる。優勝すると表彰状が渡される。太陽グループは、この優勝の賞状を営業に使っていた。さすが神谷会長、抜け目ない。
勉強会の最後に、参加者が小さなグループを作り胴上げをした。ありがとうと言いながら三回宙に舞う。胴上げされたのは初めてで、とても気持ち良かった。
勉強会が終わり、解散すると地元を観光した。
広島に行った時に、初めて原発ドームを見て、戦争の惨さを感じた。資料館に足を運び見学した。親父は、この悲惨な戦争を体験したのだ。僕が自衛隊に入ると行った時、泣いて止めたのも分かる気がした。
京都に行った時も面白かった。観光タクシーに初めて乗った。金閣寺、清水寺など有名な場所を案内してもらった。高校時代、修学旅行に行った時の事を思いだしていた。
日給研の勉強会は、仕事のマンネリ化を解消して、常に新しい事にチャレンジしようと言う気持ちにさせてくれた。
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