第83話 面倒見の良い先輩との出逢い
仕事の時間に余裕が出来ると、僕はパチンコ、パチスロにハマる様になった。川崎大師のパチンコ屋に行くと、どこかで見た人がいた。澤田さんだ。
東新電気のバスケット部のレギュラーで、外角のシュートを得意とするプレーヤーだ。澤田さんに声をかけ、僕はパチンコに興じていた。
しばらくすると澤田さんが「どこかで飲まないか」と声をかけてきた。近くの居酒屋へ入った。澤田さんは東新電気の社員では無く、ハガネ屋を経営しているらしい。知り合いの伝で、東新電気に入ったと言った。同じ経営者側の立場という事もあり話が弾んだ。
これを機会に毎週飲む様になった。澤田さんは、東新電気の女子部のユウさんと結婚を前提に付き合っていた。
結婚後間もなく、ユウさんが大病になり子供が産めない体になった。子供を望む澤田さんは諦めきれないようだった。
ユウさんは趣味でオカリナに夢中になり、教室にも通うようになる。そこの先生から、毎日澤田さんの家に電話が入る様になった。
澤田さんは気分を害していた。オカリナの飲み会が川崎の沖縄料理店であると聞き、部外者の僕も澤田さんについて行った。勿論、この先生に文句を言うためだ。
十人程度の小さい飲み会だった。先生が僕と澤田さんの前に座ると、一気にビールを飲みほした。
僕の攻撃開始だ。何を考えて毎日澤田さんの家に電話をかけるのか?ユウさんの病気を、澤田さんがどんな気持ちで見ていると思っているのか?経営者としての苦労を考えた事があるのか?
僕の問いに先生は、オカリナがいかに人の癒しになるか、全ての人間は一つにつながっているんだよ、とか見当違いの話を続けた。
僕が言いたいのは、必要以上に先生がユウさんに接近し過ぎていて、旦那である澤田さんが不愉快な思いをしていると言う問題だ。
ユウさんは、先生の隣に座りニコニコしながら話を聞いている。飲み会終了時間になっても、僕の気が済まなかったが、澤田さんがもう十分だと言うので止めた。
後で「昇って凄いな。俺の言いたい事、全部言ってくれたよ。おかげで気分がスッキリした。ありがとう」と澤田さんに褒められた。
しかし、ハガネ屋の仕事をユウさんに手伝って欲しい澤田さんとの間に溝は深まる一方だユウさんも手伝う気がないようで、相変わらずオカリナに夢中になっていた。
澤田さんは離婚を決断した。
バツイチになった澤田さんは僕と飲む回数が増えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます