第73話 飯炊きの妙
弁当箱を並べて作っていたのが嘘の様だった。
僕はおかずの調理を中心に行い、兄はライスを炊く係りを中心にやった。
ライスは炊くのが大変で、五升釜を使用していたのだが薮田さんの指導で三升炊きにした。五升で炊くと火の巡りが悪くなり、パンパンになり美味しく無い。
それが三升で炊くと火の巡りが良くなり、炊きあがるとカニ穴と呼ばれる現象が起きて米に光沢が出る。
ガス釜を使用していたのだが、窯の裏にライスの炊きあがりを知らせるヘソと呼ばれる部分があり、炊き上がるとこのヘソが反応してスイッチが切れる仕組みだ。
ヘソは大量調理用で無い為よく壊れた。ライスを連続で炊くと、ヘソが熱くなり炊き上がりの時に反応しなくて、早くスイッチが切れ生米になったり、逆に遅く切れおこげになったりした。
毎日検査をして状態が悪くなるとヘソを変えたが、それでも炊き上がりが悪い時がある。
薮田さんに三段釜を勧められたが、工場が狭くて置き場所が無くて諦めていた。
三段釜とは、その名の通り鉄釜三段一度に炊ける、大量調理に最適な炊飯器だ。
タイマーが付いていて、自動的に火が切れ、釜の蓋が重くて圧力釜の機能も果たす。
立ち退きで新工場が出来たら三段釜を取り入れる計画をした。
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