第67話 武者修行

 支店が閉鎖された後、僕と親父、千代子、姉さんは、本店の二階へ住んだ。


 給料は安かったが、家賃と食費が無料なのでかなり助かった。しかし、店は年中無休でナオともデート出来なかった。僕の心は荒れていた。


 ふて腐れながら仕事をする僕を見て、兄が前田弁当で修行して来いと言った。前田弁当なら休みもある。僕は喜んで、前田弁当に修行する事に決めた。


 前田弁当は、人手不足に悩んでいた。支店をオープンしたばかりで、僕の入社はとても都合が良かっただろう。


 僕は、支店勤務になった。兄もオープンの手伝いをする事になり、朝だけ来ていた。


 僕は、朝四時から調理して、弁当の盛り付けをやり、終わるとそのまま弁当の配達に出た。


 支店は、大師橋を渡り六郷橋寄りの土手沿いにあった。


 働いているパートさんの中に、アジア系の女性もいた。


 僕と兄に、おにぎりをくれた。僕は「ありがとう」と言い、その場で食べた。兄は、後で食べると言いポケットにしまった。


 後から兄に呼ばれ「そんな外人からもらった物よく食えるな。捨てちゃえよ」そう言うと、おにぎりをゴミ箱へ捨てた。


 僕は、ひどい人だと思った。兄には、外人蔑視の所がある。


 僕には、そういう考えが全くない。兄の考えが遅れていると感じた。

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