第44話 有り得ない出来事

 毎年恒例の日の出屋の年末行事が始まった。


 年末年始に仕事をする店が少しだがあり、コンビニも出来た。お客さんが減る可能があったが親父は強気だった。


 だが僕の予想通り売り上げが落ちた。年越しそばはまだ食えたが年が明ければ価値が下がり売り物にはならない。筈だ…


 親父は、賞味期限が過ぎていないと言って、元旦から残った年越しそばを売った。


 僕は親父の執念に脱帽した。


 高校二年最後の期末テストが終わり僕は赤点も無く、無事三年に進級する事が出来た。相変わらず数学と英語は苦手だったが、レポートを提出する事で赤点を見逃してもらえた。 


 ある日、高校から家に帰って部屋に入ろうとした時、親父の部屋が半開きになっていた。


「昇、ちょっと来い。話がある」


 部屋から親父の声が聞こえた。


「何かある?」

 

僕が尋ねると「今日、千代子と籍を入れて来た。今まで通り面倒を見てくれ。宜しく」


親父は涼しい顔で言うと、煙草を吹かしながら新聞に目を向けた。


「えっ?」


 僕は信じられずしばらく唖然として、その場に立ち尽くした。どこまで身勝手な親父なんだ。親父が死んだら、千代子に財産の半分が行く事になる。


 そして千代子が死ぬまで、僕達兄弟姉妹で面倒を見ろと言うのか。アカの他人の千代子を、僕達に押し付けると言うのか。


しかも親父は、四度目の結婚だ。有り得ない。千代子と一緒に住むのは構わない。だが籍だけは入れないでくれと祈っていた。


しかし認めるしか無かった。


僕は服を着替え、店の開店準備をした。午後十八時、いつも通り店をオープンした。

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