第32話 腐敗した夕食

 配達の弁当は、一日百食を販売する様になっていた。本店も、仕込みなど忙しいと言う理由により、支店で回収した弁当箱を洗う事になった。


 夜は客足が鈍く、僕が一人で店を切り盛りした。昼はパート二人で、十一時から十四時まで営業して、僕が高校から帰る、十八時から二十四時までやった。


 店を開けると回収された弁当箱が運ばれた。


 残飯をゴミ箱に捨て、一人でお客さんに気を配り黙々と百個の弁当箱を洗った。


 気の遠くなる様な作業だった。


 夕食は、配達弁当の残りを食べろと渡された。


 夏の暑い日、午前中に作った弁当は、夕食の時間には腐敗していた。おかずの枕に使用している千切りキャベツは、黒くなり半分傷んで溶けている。煮物は糸が引き、辛うじて焼き魚やコロッケなどの揚げ物が食べられる感じだった。


 ご飯はボロボロになっていたが、お湯をかけて食べた。


 僕は毎日の夕食を、腐っていないか匂いを嗅ぎながら食べた。


 この頃、支店のすぐ向かい側にほか弁がオープンした。


 客足が減り始めた。

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