第16話文化祭の長い1日

「これより我が校の文化祭を始める!今日は存分に楽しみ騒げ!若人よ!」


グラウンドに設置された特別ステージの上で校長が開会を宣言し、ついに始まった文化祭。もう既にあたりは熱狂の渦に飲み込まれている


「へぇ、ライブなんてあるんだな。音楽のことは分からねぇけどいい雰囲気だな」


「そうですね。私の知る音楽と違い随分と激しい物ですが、これはこれで心地の良い爆音ですね」


文化祭最初のステージイベントであるロックフェスは大いに盛り上がっているようだ。スカルとゼクスもなかなか好印象を抱いている


「警備班とはいえ少しぐらいは楽しんでも問題ねぇよな。理事長だって審査員席で座ってライブ楽しんでるわけだし」


「はい。何か魔法による異常があれば私が感知できますし、何か起こらなければ警備など出来ませんからね。パトロールとかこつけて色々見て回りましょう」


今日スカルは警備班として学院の警備任務についていた。教師陣は運営班、設置班、警備班の3つに分かれて編成されたが戦闘力の高いスカルが警備班に分類されるのは当然の流れだった。本人としても運営や設置など出来ないしめんどくさいので警備で良かったと思っているが


「そういやうちのクラスはどうなんだ?結局本番の打ち合わせとかで様子見に行けなかったけど」


学院の敷地を歩きながらスカルはゼクスが指導した自分のクラスの生徒達の事を気にかける


「あぁ、まぁ…学生レベルは抜け出したと思いますよ。未だに見習いと言って過言ではありませんが」


「いや、逆にこの数日の放課後だけで学生レベルを超えるのはすげぇよ。毎夜響く悲鳴が痛々しかったけど」


こんな感じでゼクスと雑談しながら歩いてると前から人を掻き分け1人の生徒が寄ってくる


「やっと見つけた!」


「おう、どうした?エルザ」


それは可憐な金髪のメイド。クラスのムードメーカーのエルザだ


「メイド喫茶が思いの外繁盛してて人手が足りないの!ゼクスさんと先生も手伝って!」


「あ?ゼクスはともかく私に手伝える事なんてないだろ。警備の仕事だって…」


「いいから来て!みんな待ってるから!」


「えっ、ちょっおい、引っ張るなって」


◇◇◇


スカルは困惑していた


なぜか強引に自分のクラスに連れてこられたと思いきや、そこを通り過ぎて更衣室に入室させられた


しかも途中でチラッとクラスを見たが、特に忙しそうにも見えなかった。確かに開始してからあまり時間が経っていないのに対して客が多いと思ったが今いるメンバーで全然回して行けそうな雰囲気だった


「おい、エルザどういうことだ?」


「ゼクスさん、先生のメイド服姿。見たくない?」


エルザはスカルの質問を無視してゼクスに問いかける


「なるほど、状況を理解致しました。では失礼しますねご主人様」


ゼクスはその問いかけの意味を即座に理解してスカルへとにじり寄って行く


「ま、待てゼクス。私は主人だぞ!私の言うことを聞けって!」


「申し訳ございませんご主人様。精霊とは好奇心旺盛な生き物、自身の欲求には逆らえません」


ゼクスは既に化粧道具やメイド服を取り出している


「おい、やめろ…落ち着けって……私のメイド服なんてどこにも需要が…」


「残念ながら、需要ならこの私が求めていますので」


「来るな!……やめ、あっ!どこ触っ」


ただ着替えさせようとしてるだけだがスカルが激しく抵抗してるため、美女二人が何かいけないことをしてるような雰囲気になっている


「じゃあ私はクラスの方に戻るね。着替えたらすぐ来てねー」


満面の笑みを浮かべながらこの事態を引き起こした少女は部屋を後にした


◇◇◇


「やっぱり私にこんなフリフリした感じの服は似合わねぇよ…」


少し頰を赤らめているスカル。その容姿は普段とはかなり異なっている


いつもボサボサの髪は綺麗に整えられ後ろで纏められ、やる気が微塵も感じられない死んだ目も化粧によって大きくはっきりとしている。元から整った容姿をしているため、これだけでかなり綺麗に見える


男子だけでなく女子も見惚れている。それどころか廊下から教室を除く他クラスの男子や男性客まで居るくらいだ


「やっぱり私にはスーツが似合…」


その時、スカルの言葉を遮り……地震かと間違えてしまいそうな振動と大音量の爆発音が

響く


そして脳内にエルミシアの声が届く


(敵襲だ!敵の数は不明。恐らくは少数犯行だと思われる。警備班は敵の迎撃を、他の教員は生徒や一般客の避難誘導を行え!迅速にだ)


文化祭の長い1日はまだ始まったばかりだ

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