文化祭に潜む悪魔
第15話メイドとは命をかけて尽くす者
「文化祭…?なんですかそれ」
ケイの口から告げられた聞き慣れない単語にスカルは首をかしげる
「文化祭というのは学生達のお祭りですよ。各クラスで出し物をして楽しむイベントです」
(出し物ねぇ……まぁガキ共が勝手にやるんなら私関係ないし、いいか)
「じゃあ教師は楽できますね、休暇とか貰えるんですか?」
スカルの発言に対し、ケイはあり得ないといった表情で告げる
「そんなわけないですよ!スカル先生はもう担任なんですからもう少し自覚を持ってください!」
「えぇ……」
◇◇◇
一連の流れを聞いて、教室は静まり返る
「………と、言うわけでケイ先生に怒られたから今日のホームルームは文化祭の出し物について話し合いたいと思う。私はこういうのは分からないので勝手に決めてください」
その発言の後に即座に生徒たちは各々の意見や質問を話し始める
「それって予算どれくらいなんですか?」
「なんでもいいって悩むよねー」
「定番はお化け屋敷っしょ」
「普通にカフェとかでよくない?あんま調子乗っても黒歴史になりそうだし」
etc…etc
教室中を縦横無尽に飛び交う生徒たちの興奮した声を聞きながらスカルは教卓でボーッとしていた
(随分とテンション高いなぁ……そんなに楽しいイベントなのか?文化祭って…私も学生やってりゃ良かったのかな。まぁ無理か、昔の私はバカだったし、今も昔も魔力は少なすぎるし)
「結構な数意見が出たけど、先生はなんかいいと思うのないのか?」
話についていけてないスカルを見兼ねたのかレッドが話しかけてくる
「はっ!私は柄じゃねぇよ。私には戦いの事と魔法の事しか分からねぇし、お前らが楽しんでるなら私はいいよ」
スカルがレッドの話していると背後の何も無い空間から声が響く
「ご主人様、やはりカフェがいいのではないでしょうか?学生であればクオリティはそこそこでも問題ありませんし、売り上げが出れば皆さん打ち上げ等の費用に出来るでしょう」
その声の主、ゼクスが突如スカルの背後に現れる
「ゼクス、学校ではあまり透明化を解くなって言ってるだろ?」
「なかなか楽しそうでしたので、私も我慢出来ませんでした。それに今はあの凡骨な駄犬も居ませんし」
凡骨な駄犬とはケイの事だ。未だに仲は悪いままだ
「………メイド喫茶」
ニックがゼクスを見てそう呟く。その呟きにクラス中の男子が燃え上がる
「いいじゃんメイド喫茶!ゼクスさん居るならご奉仕?とかも分かるんじゃね?」
「メイド喫茶賛成!」
「これは顧客満足度1位貰ったな!」
この流れはまずいと女子達は他の案を必死に提案する。それもそうだろう、このクラスは男子が16人、女子が14人だ。もし多数決なら女子が負けてしまい、勝手にメイドにされてしまう
「いや私はお化け屋敷が無難でいいと思うよ!」
「奇遇!私もそう思ってた!」
「奇をてらう必要はないんだし、ここはお化け屋敷じゃない?」
そんなこんなで議論は白熱する
◇◇◇
「はい、つーわけで多数決の結果16対14でメイド喫茶が私たちのクラスの出し物になります。予算とか準備とかについては後でケイ先生に聞いてくれ」
男子達は発狂したと思われても仕方がないくらいに飛び上がって喜んでいる
「指導役、やるからには本気でやりますからね。女子は全員メイド、男子は裏方で料理などを担当してもらいます。私は裏方を指導しますね」
「えっ……ゼクスさんは女子の指導じゃないんすか?」
ニックが不安な面持ちで問いかける
「何を言ってるのですか?メイドとは主人に命をかけて尽くす仕事ですよ。メイド喫茶如きの紛い物が本物のメイドになれるはずがないでしょう?ならばお客様の口に入る料理を完璧に仕上げるのが道理です。文化祭まであまり時間は無いのですから、放課後は毎日遅くまで残ってもらいますからね?」
「おぅふ…」
その日から1年A組から放課後、惨たらしい悲鳴が毎夜響き渡る事になるのだった
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