第八話「友情の証」
息をしているだけで、辛かった時があった。
生きたいと思ったことが何度もあった。
だけど、神様は残酷だった。数々の困難と試練を与え、この世で存在していくには難しいと感じてくれた。
「どうして、こんな人生なんだ…?」
「治樹…?大丈夫?」
「うん、ちょっとした考え事さ」
治樹は恵に今まで、遭遇してきた様々な事を全て話した。
「そう…。そんな事があったのね…。たくさん辛い思いしてきたけど、よく耐えてきたね」
「まあな。それ程生きたいって思ったんだ」
「そう…、一緒に頑張ろうね!」
「うん」
翌朝、治樹たちは、大学の同級生と食事をした。
「久しぶりだな〜!二人とも元気そうで良かったよ!」
治樹の親友・濱口拓海だ。明るくて、優しくて、ポジティブ思考の性格から、数々の女性の人気を集めている。
「子供は欲しくないのか?」
「…今の所は欲しくないかな」
「そうだな。病気のこともあるから…治れば欲しがるかもな」
「手術はいつする?」
「一週間後だ」
「頑張れよ!何があっても耐えるんだぞ?」
「ああっもちろんだ」
(この人が親友で良かった。治樹もいつもより嬉しそう…)
「恵」
「なに?」
「君がいるから、誰よりも強くなれるよ」
治樹は、そっと自分の両手を恵の両手に重ねた。
「治樹…」
(二人はこんなに優しい恋をするとは…。ずっと応援してるからな!)
一週間後に、手術が行われた。
肺の移植手術だった。
「息をしやすくなったかも」
「本当?良かった〜」
「そろそろ、子供欲しくなった?」
「うーん、まだ二人でいたいな」
「そっか」
「うん」
「もしかして、欲しいの?」
「え?」
少しドキッとした。
「うっうん」
「治樹は優しいから、素敵なパパになれるよ!」
「恵もだ」
「ふふっ」
「どんな時でも傍にいてくれて、ありがとう」
「当たり前よ。私は治樹の妻だもの」
二人は共に笑い合い、慰め合い、これからの新たな人生を歩むつもりだ。
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