第六話「大切な宝物」
「もうこんな時期か…」
「どうしたの?治樹」
「いやっちょっと、昔のこと思いだしてな」
治樹は少し苦笑をしながら答えた。
恵は首を傾げると、治樹がある物を箱から取り出した。
「これって…?」
「オルゴール。十歳の誕生日に、両親からもらった誕生日プレゼントだ」
「へえー、これって可愛いね」
「うん、そうだな」
治樹が手にしたオルゴールは、濃い茶色に、金色のラインがいくつか刻まれて、中を開けると小さな星屑の欠片と鏡が入っていた。
流れる音楽は「星空の思い出」。治樹の大好きな曲だ。
「優しい曲。こんなにいい物もらえて良かったね」
「うん、本当にそうだよな」
こんなに優しい時間ができて良かったと治樹たちはお互いそう思った。
「結婚式まで一日…」
二人とも無事卒業をして、結婚をしようと考えていた。
「そう…だな」
ガチガチになってる治樹を見て、恵はそっと自分の手を治樹の手に重ねた。
「大丈夫だよ。私が傍にいるから」
「うん、ありがとう」
「どういたしまして」
「治樹!」
「父さん母さん…どうしたんだ?」
「ここにいるって伝えろよ」
治樹の父・詠人と母・優奈が教会へやって来た。
「ごめん。恵と一緒にいたかったんだ」
「…ならいいが、また倒れたりしたらどうする?」
「ごめん」
「まあまあ、あなた。落ち着いて下さい」
「まったく…、心配したよ」
「これからは行き先、伝えておくから」
「うん、そうしろ」
「まあまあ、そういうのは…治樹はもう大人なんだから大丈夫でしょ?」
「まあな、そうだが、心配するさ。いつか恵さんとの間に子供ができて、父親になる。そんな時に倒れるわけにはいかないだろ?」
「そうね…確かに」
「まあ、なんとかなりますよ」
「うん、そうなると願うよ」
教会にある十字架を見つめ、詠人と優奈は密かにそう言った。
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