第五章「花咲く心」

慌ただしく出かけるテルの姿を見たクリスは少し動揺した。

「テル様…」

クリスは城内をフラフラ歩き回ると、そこで侍女のアルに出会った。

「クリス様!どうかなさいましたか?」

「あの、テル様はどちらへ?」

「テル様ですか?テル様なら…隣のお国へ会議に参加しております」

「会議…」

「はい。どうかなさいましたか?」

「いっいえ!何もないです!」

(代償の真実を教えなきゃいけないのに…)


「テル?どうした?」

隣の国のザルトはテルの親友だ。

両目を失いそうになったことを隠してくれて、アルと一緒に世話をしてくれた仲だ。テルは今でもそのことに感謝している。

「い…いや何もない」

「会議はここまでにしましょう!お疲れさまでした!」


「やけにソワソワしてるなと思ったら…クリス様のお誕生日だったのか!」

「ああっそうだ。だから悩んでるんだ。クリスにどんなプレゼントを贈ればいいのか…」

「ネックレスはどうだ?」

「ネックレス?」

「クリス様はダイヤモンド、好きか?」

「うん」

「へえー!いいんじゃない?」

「そうだな。とりあえずジュエリーショップに行ってみるよ。ありがとう!」

「頑張れよ!」


自分の国に戻った後、ジュエリーショップに向かった。

「すみません」

「あっはーい!あら!テル様!いらっしゃいませ!」

「あの…妻にプレゼントを贈りたいのですが…何かおすすめはありませんか?」

「それなら…こちらのがよろしいと思いますよ」

赤いリボンが結ばれた白くて小さな箱を渡してくれた。

「ありがとうございます。妻もきっと喜びます」



その日の夜。

「クリス。お誕生日おめでとう」

「わあっありがとうございます!これは…なんですか?」

「ネックレスだ。つけてあげるよ」

クリスの首元に銀のダイヤモンドがつらさがったネックレスを付けてあげた。

「18歳のお誕生日おめでとう。これからもよろしくな」

そっと優しく頬に触れ、そっと見つめ合い、特別な誕生日を過ごせた。

「あの…テル様」

「なんだ?」

「代償があるんです」

「相手の過去を見た代償が…」

少し不安な予感はした。

だけど、まさかこんなにも早くやって来るとは…。





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