第三章「My Love is only for you.」

(あの能力は、確か…お父様のだったわ)

「クリス?どうしたの?」

「え?ううん、何もないよ!」

「そう…」

天満とクリスは、同い年というのもあって、昔からの付き合いで親友だ。

「ねえ、クリス。テル様とはどう?」

「え?」

クリスは突然テルとの進展を聞かれて、顔が真っ赤になった。

「うまくいってるんだね。良かった」

「う…うん」

「天満は?どう?」

「え?うーん、どうだろうね。黒狼さんはいつもクールだから、なんか付き合ってる感じがしないんだよね…」

「そうなんだ」

黒狼さんの恋人は人間だという噂は聞いている。そして、黒狼さんの正体は天満以外誰も見たことはない。

「黒狼さんの名前は、なんて言うの?」

「銀って言うよ。瞳の色が銀色だから、銀なの!」

「へえー!」

「あっそうだ!テル様って仮面王子って呼ばれてるでしょ?なんでなの?」

「なんか大昔にドラキュラを殺して、それの罰として戦争で危うく両目辺りを火傷して失明しそうになったんだって!」

「え?そうなんだ!」

「うん!」

「でも、人間界にいる時は完璧に隠せるから、大丈夫みたい!」

「そっか。それは良かったね!」

「うん、そうだね!」

闇の過去。突然すぎる両親の死。。いくつものナイフが差し込まれた屍体。

涙か雨か分からないくらい泣いた少女の姿が見えた。

(こんなに悲しい過去があるなんて…!!)

天満のあまりにも意外な闇の過去を見通したクリスは、思わず涙を流した。

「どうしたの?クリス。泣いてるよ?」

「天満。今まで何も知らなくてごめんね」

「なんで…!?こんなに暗い過去があるのに何も言わないの?」

「銀様は知ってるわ。私の過去を…」

「そうだな。天満」

「銀様!!」

突然、黒狼・銀が現れ、涙で顔がボロボロになった天満を優しく抱きしめた。

「天満。もう大丈夫だ。安心しろ」

「銀様、すみません」

「謝るな、天満。君は悪くない」

ポンポンと優しく天満の頭を撫でる銀との姿を見て、クリスはようやく気分が晴れたようだ。


夜になったと同時に、テルはクリスを檻の中に監禁した。

「クリス」

「?」

檻の中でしか愛さない人だ。

「テル様?」

「ッ!!」(どうして、こんな時に…!!)

「クリス?」

「闇の過去を知る事ができるんです。眼差しを見つめれば…」

「そうか。そんな能力まであるんだな」

「はい」

「じゃあ…俺の過去は?」

「見えましたよ」

「残酷でした。一般人には耐えられないような苦痛で、残酷すぎる過去なので…」

「…心痛くないのか?」

「なりますけど、どうにもできません」

「そうだよな。だが、俺には…」

「クリス、君しかいないんだ」

(テル様…?)

(君は…俺だけを見つめてくれ。ほんの少しでもいいんだ)

「テル様。いきなりどうしたんですか?」

顔が熱くなってきた。いきなり過ぎる彼の行動と言葉を受け入れるのに、少し時間がかかった。

「んんっ…」

テルはゆっくりと下へ下へと下ろし、クリスの白くて滑らかな太腿を片手で持ち、そっと優しく噛んだ。そう吸血だ。

ビリビリとした電流が、クリスの全身をそそるように流れ通す。

「んっ…!!ああっ」

徐々に息が荒くなって真っ赤になったクリスの顔を見て、テルは意地悪そうに笑った。

「テルさ、ま?このままだと、私…どうなってしまうんですか?」

「さあな」

「俺と夫婦になるんだから、これくらいは慣れておかないといけないぞ?」

「で、でも…怖いんです。このままだと…」

「いいんだ。俺だけで感じてろ」

チュッチュッとした音を立てて、テルはクリスを太腿をそっと優しく舐めながらクリスを見つめた。

(ああっこの方は本当に…ずるいわ)

「ッ!!テ、テル様…!?」

「少し、食事するぞ」

ガブッとした音。また吸血をした。

「んんっあああっ」

吸血の副作用に耐えられず、テルの行動を受け入れることしかできなかった。

「愛してる。クリス」

「私もです。テル様」


黒い薄い布に両目を覆われたが、テルの動作で愛を感じられ、思わず涙を流した。

この時間を忘れない。

二人は、そっと愛を誓ったのだ。

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