祖父さま
海翔は大広間に行った。この大広間には祖父さまの肖像画が飾ってある。もう見慣れすぎた肖像画だ。しわの一本一本までくっきりと描かれてある肖像画。なにやら有名な絵師によって描かれたものらしいが、その絵師はもうとっくに他界しているそうだ。それと庭にあるのと似たような碑文が壁に刻んである。祖父さまは相当な変わり者だったらしい。
そんな祖父さまは、莫大な遺産を残していった。この翅の園もそうだが、島を一つと沢山の土地、そして金。金というのは俺たちの親父の年収の100倍にもあたるとんでもないものらしい。親父もやばいが、祖父さまはもっとやばい。だが、祖父さまはこの財産を親父にそのまま渡さなかった。別の場所に隠してそのまま死んでいったようだ。ただ一つ、祖父さまが親父に残していったものがある。
碑文だ。
この碑文の内容におそらく財産の行方が書かれていると親父は思っている。
俺たちは祖父さまと会ったことはない。だからどんな人だったのかはわからないし、墓も知らない。祖父さまの墓は俺たちの知らないところにあるそうだ。
一代にして莫大な財産を築き上げた祖父さま、、その戦略性と知性は底知れなかったという。しかし、道徳を持ち合わせてなかったようだ。ライバルを潰して、無一文にさせてわざと憐れむふりをしてその家の娘を人買いに売って、狂ったように笑った、という逸話もある人物だ。真偽はわからないが。
正直、俺は祖父さまが好きではない。会ったことはないが、なぜか不調感を感じる。人を嘲笑うのが至福と考える祖父さまと考えが合うはずがない。
そんなことを考えているうちに、玄関口の方から音がした。親族のうちの誰かが来たのだろう。親族とは久しぶりに会うので気分が高揚したのが分かった。
海翔は鼻歌を歌いながら親族を出迎えに玄関口へ向かった。
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