Gold Island-黄金の島

冬宮よる

翅の園

翅の園

ピロリン、俺のケータイにメールが来た音だ。

朝からこの無機質な音を聞くと急に夢からさめたような感覚に陥る。

ゆっくりと体を起こしてメールを読む。差出人は妹の天音(あまね)だ。

「おはよう!!今日の集まり楽しみだね!!」

これだけの文章なら会ってから言えばいいのに。それにしても天音のメールはビックリマークが多い、、、、

ぶつぶつと小言を言いながら天音にメールを返した。


俺は高校生、夏宮海翔(なつみやかいと)、孤児院「翅の園」の出身。天音も翅の園の出身で俺よりも生まれが遅いらしい。だから妹だ。ほかにも兄弟がいて、今日の昼過ぎに会う約束をしている。

俺たち兄弟には共通の親父がいる。夏宮輪生(なつみやわせい)という名前で、祖父さまから二代に渡って事業を成功させ巨額を築き上げた人物だ。

昼過ぎの集まりは翅の園ですることになっていて、親父が主催だ。相当な金持ちの親父だが、もう先が長くないだろう。俺たちは親父と呼んでいるが実際は77歳で、おじいちゃんなのだ。とんでもない手を使って他人から金を奪い取るような人物だった親父はあまり世間から好かれていない。翅の園出身の俺たちも世間から冷たくみられることもある。

そんな親父だが、祖父さまが死んで夏宮家の主となってから狂ったように没頭していることがある。祖父さまが隠した 莫大な量の財宝探しだ。

もちろん、当てずっぽうで探してるわけではなく、祖父さまの遺したヒントを見ながらだ。

このヒントは翅の園の庭にある少し大きめの石碑に書かれている。

小難しくて俺は覚えていないが。

昼過ぎになった。集まりに遅れないように少し早めに家を出た。翅の園は家からかなり離れている。タクシーで二時間行き、それからしばらく歩いた森の入り口付近にある。

今回の集まりでは何を話すんだろう、、この集まりでいい思いをしたことはない。

親父によるお叱りがメインで、兄弟による成績自慢や彼氏・彼女自慢だったり、夏宮家の跡継ぎをどうするかなど、重苦しい雰囲気なのだ。

親父には子供がいない。だから俺たちを自分の子供のように叱る。それはそれで嬉しいが、かなり強く言われるので俺たちはあまり親父が好きじゃない。

親父は俺たちを平等に扱っていた。理不尽なことを言われた時もあった。そのたびに俺たちは自分たちの境遇を呪った。でも、天音は違った。 天音は自分の境遇は幸せと思っていた。兄弟がたくさんいて広い屋敷で過ごせることだけで、満足だと言っていた。

そんなことを思い出しつつタクシーから降りた。

あたりを見まわした。相変わらず気が生い茂っていて、全然変わっていない。

都会と180度違う環境だが、個人的にはこっちのほうが好きだ。

空気もきれいだし、何より都会特有の喧騒がない。

少し歩くと1キロほど離れた先に屋根が見えた。翅の園は遠くから見てもすぐに分かるほど大きな屋敷だ。

昔風の洋館で、祖父さまによる建築だ。祖父さまは本当にヤバい人物だったのだろう。


翅の園に到着した。相変わらず庭にはバラがいっぱいだ。このにおいは好きだ。

玄関口から中に入る。どうやら誰も来ていないようだった。仕方がないから、庭でも歩こうと思ったら、あるものが目に飛び込んできた。

石碑だ。

自分の記憶よりもそれは少し大きかった。何やら文章が書いてある。

「天地は東西に等し、兵士は女王と寄り添い存在せぬ王を待つ。

女王は王に代わり天にそびえたつ。女王の下にいるものに矢が降る。

わが大地よ、女王のもと繁栄せよ。王の宝を孤独で守れ。」

なんのことだ?女王やら宝やらって、、

そうこうしてるうちに兄弟たちの声が聞こえてきた。どうやら到着したようだ。

海翔は兄弟のいるところへ足を進めた。

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