11章 またデート回か?えっさんぴ……


 約束の週末、今日は、芽唯と黒川と一緒に買い物をする予定の大型デパートで待つことになった。

天気は、晴天。今日も買い物日和。この前といい、俺は、晴れイケメンを名乗ってもいいのかもしれない。

「恭也……楽しみ?私、邪魔なら家で待つ。本の続きを読みたいし。晴れてるから外には出たくない」

「いや、帰りたいだけだろう。それに、本、読みたいって言ってるが、今だって呼んでいるだろう」

 芽唯を連れて行ったのは、ほかでもない。たまには、外に出ないと健康被害が出てしまうかもしれないからである。

まあ、それにこういう時じゃないと、芽唯は俺以外の同い年と出かけないと踏んだからでもある。実際、芽唯は、本ばっかり読んでいて、俺の知る限り、俺以外の友人と休日に出かけたことは、皆無であるのでいい機会でもあるので、強引にここまで連れてきたのだ。

 ちなみに最初は、ジャージで外に出ようとしたが、俺と胡桃の必死の説得により、胡桃セレクションことゴズロリ服で格好になっている。

なんだろう、ジャージの方が、いい気もしたが、なぜか、あの時は、ジャージよりましという謎采配をしてしまった。傍から見れば、文系中二病でしかない。

「気のせい。私が今読んでるのは、外で読む用の別の小説。微エロシーンばっかで、過激な描写は、少ない」

「少ないだけで、あるんだな。そういうエロシーン。その小説にも」

「私の趣味」

「まあそれは、いいんだが……どういう内容だ?」

「聞く?」

表情自体は、そこまで変わらない芽唯だが、声音からわかる、聞かせたいという気持ちが伝わってくる。それにどういう内容か俺も気になる。男の子だし。

「聞きたい」

俺の一言に珍しく目を輝かせた、芽唯は、生き生きと語りだした。

「旧帝国軍の少女サヨリちゃんは、自軍の敗北に気がつかないまま、敵国の兵士に捕まるの。情報を一切遮断された世界でサヨリちゃんは、兵士たちに屈辱的な行為を受け●●を失うけど、彼女は、折れない。負けた自軍が、まだ、敵国と戦っている。ここで負けてはいけない。敵国に情報を流さないため●●に耐え続けるの。もちろん兵士は、そんなサヨリの努力を見て笑うの。外の情報は、一切教えず。敵兵は、賭けをしていた。誰がサヨリを屈服させるか。一日に何人もの敵兵に●●●されても、彼女は、話さない。彼女はそんな、一人すもうにこだわり、快楽に負けないようにしようとして……」

いつもの、クールで口数の少ない芽唯とは、打って変わり、饒舌に語り始めるのだが……

「どこが、微エロだ。ガチエロじゃないか」

「ヒロインが、服を着ているシーンがあるから、微エロ」

「普段どんなだけマニアックなんだよ!」

「それは、恭也も知っているはず」

「全部は、知らないよ!」

「でも、恭也好きでしょ。●●」

「●●……だいす……って!なんで芽唯が俺の性癖を知ってるんだよ!」

「本棚の裏。週刊誌の間に隠したUSB」

……それは、俺の秘蔵物のありか……完璧に偽装したはずなのになんで芽唯が知っているんだ。スケベな隠し場所を漁られている=胡桃も知っている=家族間社会的抹殺。

「シスコンもあそこまでだと……引く」

「俺は、お前がなんで俺についてそこまで詳しいんだよ!」

「親友、幼馴染で家族だから」

「そのセリフは、感動的だよ!今、聞かなきゃな!」

芽唯に家族と言われたりするのは、嬉しい。なにぶん事情は、重いため、こういうことを言われると嬉しい。プライベートさえ守られていれば……

「恭也の困った顔、好き」

「俺は、屈辱的だよ!」

紳士同盟を組んでいる身として、お互いが変態なのは、知っていたが、やはり単純なエロ力なら、確実に芽唯が上だった。

いつの間にか、本を読むのをやめ、普段、学校では、見せない変態紳士特有のねっとりとこびり付くようなニタニタ表情を見ればわかる。芽唯は、真の変態なのだと……しかし変態紳士として、ライバルには負けられない。俺にも意地がある。負けないエロス心とエロ根性。

「けど、芽唯だって、俺に○○して○○○○観察されたら恥ずかしいだろう」

「むしろ、恭也ならいい。○○○○観察どころか、実戦もおっけー」

「なん……だと……」

いいのか、そんなことして……俺の脳がフルスロットルで動き出す。異性に実戦をシといいと言われた妄想がはかどり……震える。そして、導き出された答えは……

「○○○いいぞぉー」

「ふーん。いいのですか。変態」

「そう俺は、へんた……え?」

芽唯と二人で話していたはずなのに、三人目の、よく聞き覚えのある声が聞こえた。俺は、まさかと思い、まるで、壊れかけたブリキ人形のように声の方に顔を動かすとそこには、冷ややかな目をして、こちらを睨む黒川がいた。

「クロカワッサン」

「私をパンみたいな名前で呼ばないでください。変態。ロリコン」

ものすごく冷たい目、いつものツッコミのように暑いわけではなく、とても冷たい……気温ではなく、視線が……

「い……いつからそこに……」

「本棚の裏と週刊誌の間のところからです」

「……うん。それは、聞かなかったことに……本棚の裏とかには、何もありませーん」

「……変態です」

「同意、恭也は、変態」

「いつもだからなれたけれど芽唯は、こっち側だからね!ちゃっかり、まともな類になろうとするのはずるいよ!」

「ぐッ」

 芽唯は親指を立ててまあいいだろう、気にするなと語っていた。うん、君のおかげで、俺の性癖が、バレたけどな!

見てみて、出会って最初に向けられる視線が軽蔑の目ですよ!うん、なんかもういつものことでなれた気もするが、多分気のせい。だって、黒川の表情が普段は見せないような顔になってるんだもん。

「私、思うのです。水上くんって、昔からそんなにスケベなんですか?なんというか、オープンスケベすぎるのに、学園の人気者だなんて、私信じられません」

「……そんなことない。恭也って、見栄っ張りの懐疑的で簡単には、信じない。むしろ、友人に感じられない人には、見栄を張るけれど、友人って認めた人にだけ、こうやって素で話ってくれる。だから、黒川さんは、友人と認められている。いいこと」

真剣に俺の性格分析をする芽唯。本当に恥ずかしいから、やめてほしい。そして、それを真面目に聞き入る黒川さん。

「つまり……ナルシストで疑り深く、行動は、楽天家と」

「まあ、ネガティブに言えば、恭也は、幼馴染ひいきで見ても完全に変態だし、人間のクズだけれど」

「いや、認めるか、貶すかどっちかにしてくれませんか!?」

「?私は、思ったことを言っているだけ。別に、恭也を称えているわけでもなければ、けなしている訳でもない」

……ひどい言い草だった。俺の扱い、芽唯はたまに適当なときがある。今に始まったことではないが、若干不服である。

「……まあ、もういいですが、友人として認められているのなら嬉しいですが」

顔を赤くしているが俺の性癖に対するツッコミを入れていくことはやめたから、個人的には、もう気にしないが……

「それはそうと、黒川。今日も、前と同じ白いワンピースなんだな。相変わらず似合っているぞ。俺の横を歩くにふさわしい服装であるな」

「それは、褒めているのですか?個人的には、あまり嬉しくない褒められ方です」

 しょうがないだろう……褒められることは、多いが俺が他人を心の底から褒めることなんてめったにないから恥ずかしいのだよ……なんて言えないので照れ隠しをするのだが、まあ、黒川がポンコツだからか伝わっていないのか、微妙に不服そうな顔をしてくる。

「黒川さん、恭也は、照れ屋だしあまり、他人を褒めないから、恥ずかしいだけ」

「照れ隠しって……いや私もしますが、なんというか、水上くんの照れ隠しは、よくわからないです」

「……すみませんでした!俺が悪いよ、もう!だから行こうか、買い物に!」

なんだか、恥ずかしくて、強制的に買い物に行くことになった。


 買い物といっても、今日は、今晩の夕食を買いに行くのが、メインであるので、地元のデパートで、食材の買出しがメインである。

というわけで、最初に向かったのは、もちろん……

「きゃあぁぁぁぁ!きた!きました!ゾンビが……ゾンビがぁぁ!」

「死ね……恭也、右」

「任せろ。右の奴らは、掃討するから監視カメラは、絶対に破壊するんだぞ」

「もちろん」

ゲームコーナーの三人でできるボックスタイプの3Dゾンビシューティングゲームだった。

最初は、買い物をさっと済ませるつもりであったが、うちの引きこもりが、外出を学校以外で久しぶりにしたからか、珍しくわがままを言いゲームコーナーにきた。

「まってくだ……ぎゃぁぁぁ!きました!助けてください!」

「今は、無理」

「そうだ。このゲームで重要なのは、誰かを犠牲にしてでも助かるという、人間性を捨てることだ。残念だが、コンテニューしてくれ」

「そ、そんな!鬼!ぎゃぁぁぁぁ!ゾンビの口から触手が……こ……これは」

「コンテニュー早く」

「早く金入れろ、黒川、俺たちの体力を回復させるんだ」

ゲームに対して本気で、叫んでビビっている黒川さんに対して、俺達は、コンテニューさせるために、真ん中に配置。左右を俺と芽唯で固め、筐体の中から脱出させないようにし、絶望まじりの絶叫をする黒川。

「またきた。死ね」

対して対照的に、正確な射撃で、ゾンビを殺していく芽唯。

「有象無象が……死ね。死ね」

そして、ガチ勢こと、俺。俺と芽唯のコンビネーションによってゾンビを掃討する。そして、黒川は、コンテニューボーナスの回復要因……ほぼ連コイン担当になっている。

「よし!ボスを撃破!お、今回は、芽唯とスコアの差があんまりないぞ」

「恭也、これは、共闘のゲーム。競ってない。仲間」

「仲間の私は、ひたすら連コインをしているような……」

「回復ナイス。黒川さんの連コインが助かった。」

「私、ひたすら囮になって死んでるのですが!おかげでおこずかいがどんどん減っちゃうのですが!」

連コインを俺達より倍以上している黒川が文句を言うが受け入れられず……

「さて、次は、三面か、ようやく中盤か。芽唯準備は、いいか?」

「もちろん」

「だから、二人とも話を……って勝手に始めないでください!」

こうして、始まるホラーゲームの続き。俺や芽唯には、完全に無視され先へ進む黒川。

いや……黒川って、ホラー映画ファンじゃなかったのか?なんでこれは怖がるんだ?

そんな疑問を残しながら、俺達は、ゲームを終え、筐体から出ると、青ざめた顔の黒川が恨めしそうな顔で俺を睨んでくる。

「な……なんで、買い出しに来て、3Dホラーをやらないといけないのですか?!」

「そりゃ、うちの引きこもり様たっての希望だし」

「ぐッ!」

親指を立てて楽しかったことを教えてくれる芽唯。個人的には、良かった。

「私の希望だって聞いてくれといいじゃないですか……もっと安全に遊べるゲームだって」

「でも、黒川って、ホラー映画好きだろう?なんでガンシューティングは、興味ないんだ?」

「そ……それは……」

恥ずかしそうに、顔を背ける黒川。

「私、ホラーは、好きですよ。けど、恐怖体験を自分でするのは、本当に怖いんです。映画は、いいけど、お化け屋敷は、嫌いみたいなものです!」

……確かにたまにいる。映画は好きだが、お化け屋敷は、嫌いな奴。だからか、なんとなくわかった気がする。

「だから、この前、二人で出かけた時に行ったゲームセンターでもホラーゲームはしなかったんだな」

「そうですよ。怖い体験は、見るからいいんです。自分の身に起こってしまうと対処のしようがないですから」

まあ、今回は、強引にでも筐体の中から出ればいいのだが最後まで付き合ってゲームをしてくれるあたり、黒川は、真面目なんだとか考えていると、芽唯が俺の襟首を掴んで引き寄せてきた。

「二人で遊ぶ……デート。私、聞いてない」

「そりゃ、芽唯は、休日一歩も家から出てこないだろう……それに俺もいきなりだったし」

「つまり、押しかけ妻……。エロい」

「お……おしかけ……つま……私が!?」

俺の襟首を離し、黒川を見つめる芽唯。それに対して、いきなりエロ認定されて顔を真っ赤にする黒川。

「黒川さん」

「な……なんですか?そ……その私は、おしかけ妻じゃないですよ」

何を考えているか分からないが澄んだ黒い瞳は、黒川を見上げじっくりと観察するように見つめる。なんだか、気まずそうな表情の黒川。

確かに、ハイパーセンスのことについて芽唯に話すわけにもいかないので、どうやって言い訳をしようか考えているのだろう。

「黒川さん、恭也の悪口行ったりする時あるけど、実は、ツンデレ?」

「えッ……何を突然」

いきなり、予想外の質問をする芽唯に戸惑う黒川。俺は、最初助け舟でも出そうか迷ったが、なんだか面白い展開になりそうだったので、ニヤニヤと傍観することにした。

「え……だって、恭也のことが好きだから、わざと憎まれ口を言うんじゃないの?」

不思議そうに言う芽唯。

「だ……誰が、こんな変態盗撮魔のこと!私は、そんなではありません!」

全力で、否定する黒川さん。なんというか、うん。そのセリフ、正しくツンデレなのではないのだろうか……

「でも、おしかけ妻」

「そ……そんなでは、ないです!私としては、深い事情があって、泣く泣く一緒に出かけただけで……」

「ないす、ツンデレ!」

親指を立てて褒め称える芽唯。なんだかとても嬉しそうだが、その状態に疑問を持った黒川は、恐る恐る、芽唯に疑問をぶつけた。

「あ……あの、道後さんは、私が水上くんと遊びに行ったことを伝えなかったことに対して、水上くんに怒って、私に嫉妬したんじゃないですか?」

「?」

首をかしげる芽唯。

「ち……違うのですか?」

「なんで私が恭也と黒川さん遊びに行ったことに対して嫉妬するの?」

「違うのですか?」

「うん。私は、恭也がそんな面白そうなネタを私に提供しなかったことに対して怒った」

「へ?」

理解が追いつかないのか、間の抜けたような表情をする黒川。大変シリアスになりそうな修羅場フラグと一瞬でも勘違いした自分が恥ずかしい。

「だって、おしかけ妻がきて、恭也とただれた肉体関係を持ち、快楽に溺れるおしかけ妻。しかし、その情事を目撃し、盗撮されたキモ男によって脅迫されるおしかけ妻は、一度だけと信じて応じてしまい、夫以外の肉棒を受け入れてしまう罪悪感と快楽に苦悩するが、地獄は、終わらなかった。今度は、一度だけ受け入れた快楽を夫にばらすと脅され、週末、女の肉体に飢えたキモ男たちの慰みものとなり、嬲られ、屈辱を与えられる。もう、あの頃の幸せには戻れない。そんな絶望の中、誰の子かもわからない子供を授かる。下ろすことも許されず、その子を夫の子供として育てていくことになる夫妻。そしてそれから数十年。子供は、父親の子供ではないことに気がつき、唯一の肉親である母親に反抗。娘は、不特定多数の男と関係を持ち、いずれ、子を宿す。おしかけ妻は、自分の人生とはなんだったのか……そう考えながら、生きていかなくてはいけなくなった。なんていう妄想エロ小説がかけたのに……恭也は、それを私に教えてくれないんだもん……」

早い語り口調の芽唯。その声は、普段よりもずっと大きな声で、周りの親子連れや、おばちゃんが冷たい目でこっちを見てくる。

「な……なにを語っているんですか道後さん!」

「何ってエロ小説?」

当たり前のようにいう芽唯だが、黒川は、今の妄想エロ小説の内容か、周りの視線に赤面したのか、どちらか分からないが声を上げてしまう。

「こ……こんなところで語らないでください!ほら!水上くんも何か言ってください!幼馴染じゃないですか!」

「今日は、あんまり、エロくないぞ。どうした芽唯?」

「つっこむのはそこですか!?」

まあ、こういう言い方は、好きじゃないのだが、黒川が来る前は、もっと衝撃的な話していたしあまり驚かない。

「まあ、今日は、周りに子供がいるかあら、あまり刺激の強いことは言えない」

「なるほど。一理ある」

「一理無いです。絶対こんなところで話すような話じゃないです!」

うん、まあ昼間からNTRについての話は、過激だったかもしれない。

反省はするが、後悔をしない俺と芽唯であった。


「さて、お兄ちゃん、聞くけど。買い物に行っただけなのに帰りが遅くなったのか」 

結局その後も買い物途中に本屋に寄ったりしていたら、夕方になってしまっていた。胡桃が心配して電話をかけてこなかったら未だに遊んでいたかもしれない。

そして帰宅後、玄関で正座させられる俺と芽唯。何故か一緒にいた黒川だけは、正座させられなかったのだが、自分だけ許されている状態に戸惑っているのか、胡桃の横で立ち尽くしていた。

「いや、そのなんですか。黒川いじりに興が乗ってしまい……」

「……」

「お姉さまいじりに興が乗ったぁ……お兄ちゃん!理由になってない!それに芽唯ちゃん!人が話しているときは、本を読まない!」

「す……すみません!」

「あっ、いいところだったのに……」

妹の怒りに耐え切れずひたすら謝ることしかできない俺と、本を取られ、悲しそうな声で本を目で追う芽唯。多分反省してない。

「あ……あの胡桃ちゃん……私も一緒に遊んでいたのでそこまで二人を怒らないでください……」

胡桃を止めようとしようとする黒川だが、胡桃の雰囲気に押され、いつもみたいなツッコミが入れられなくなっていた。

「お姉さま。これは、家族の問題です。すぐ終わるので、お料理の下ごしらえをして待っていてください。流石にお客様にまで、正座させるわけにもいかないので」

「そ……そうですよね!か……家族の問題ですもんね!私、先に行っていますね!」

黒川は、胡桃の怒りを我慢して笑う笑顔を見て耐えられなくなったのか、珍しく怯えた顔で、すたこらとキッチンの方に向かってしまう。

残されたのは、不安そうな顔をした俺と、奪われた本を愛おしそうに目で追いかける芽唯、それに見るに堪えないほど恐ろしい形相をした胡桃だった。

「……絶体絶命」

ぼそっと恐ろしいことをつぶやく芽唯、やめてくれませんか!?

「さて、兄さん。まず聞きたいのは、なぜ遊ぶのなら私にも声をかけてくれなかったの?」

「そりゃ、胡桃は、行かないって言うから……」

俺は、事実を述べるのだが……

「それは、買い物が終わったら、すぐ帰ってくるってお兄ちゃんが言ったからでしょ!私だって遊びたかったもんお姉様と!」

「すまん!次は、連れて行くから!」

「それは嬉しいんだけれど、問題は、今日だよ!ずるいよ!買い出しだけだから、私は、今日は、家の掃除とかしてたのに!それに、珍しく芽唯ちゃんが、家から出るから私も張り切って洋服をコーディネートしたのに!」

完全に火が付いたのか段々、胡桃は、駄々子のようになってくる。俺は、もう自分が悪いと思ったからか、言いくるめるしかなかった。

「まぁ……安心しろ、次は、絶対連れて行く。お兄ちゃんが言うんだ、間違えない」

「でももう今日は来ないんですよ!」

「そうだが、明日はある!」

「嘘だもん!お兄ちゃん口がうまいから!」

「なら、次の予定をもう決めよう!もちろん、芽唯、黒川、胡桃。全員連れて行く!」

「ほ……本当」

俺の必死の説得に何となく胡桃も表情が和らいでいく……そう、説教から解放されるのだ!そんなことを考え、早く時間よ進めと願っていると、芽唯がとんでもないことを口走った。

「ぶう、胡桃のちょろヒステリック」

「おま……芽唯!?ようやく、説教から解放されると思っていたのに!」

俺たちのセリフが、火に油だった。

「そうですか。私の心の叫びは、お兄ちゃん達には、届かないのですか……ふーん、そうですか……そうですか」

「あの胡桃さん、芽唯も悪気があったわけでもなかったんだ。許してくれ!」

俺が、必死に弁解したのだが、芽唯は、さらに続けた。

「私のわがままで、黒川さんや恭也を、ゲームセンターに連れてった。だから悪いのは、私なのに、恭也も怒るのは、おかしい」

「けど!結果としてはお兄ちゃんだって、芽唯ちゃんの片棒を担いだのだから同罪!」

「胡桃が恭也を独占したいのは、分かる。けれど私も恭也は、大切」

淡々ととんでもなくそうだったら嬉しいことを言ってくれる芽唯。

「ちがうよ!お……お兄ちゃんなんて関係ないもん!お兄ちゃんなんてきらい!」

しかし、反対に悲しいことを言う、マイシスター。正直お兄ちゃんは悲しいよ……

「じゃあ、恭也のお嫁さんが、クソビッチの浮気性でもいい?」

「な!そそそ……そんなの許さない!お兄ちゃんを幸せにしない女なんて……うっ」

芽唯の作戦、例え話は、上手く決まったのか、今度は、嬉しいことを言ってくれるマイシスター……愛してるぞ。

そして二ヤッとする芽唯は、さらに畳み掛けに入る。

「けどないことじゃない。胡桃が恭也を守らないなら、私が恭也を守る。私にとって恭也は、世界そのもの。恭也を不幸にするなら、その女は、私が脅迫して、キモ男たちの●●●になるようにし向け、脅迫した時にした約束を目の前で破ってやるわ」

その後、芽唯と胡桃は、十分以上、俺をたぶらかすとされる仮想敵にどのような報復をするかで盛り上がった。大切にされるのは、嬉しいのだが、話が物騒で、最後の方は、記憶から消したいランキングベスト3にランクインするような内容であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る