六章 ご飯くえ!
映画が終わったあと、俺たちは、近くのファミレスで、食事を取ることにしたのだが、互いに映画を見たあとは、グロッキーな状態になっていた。
「ま……まさか、あそこまで、状況がかぶるとは、私も考えていませんでした」
「俺だって、考えもしなかったよ。互の遺族の家が血のついた手形でいっぱいになるシーンがあるだなんて……やっぱり呪われてるのか?俺たち」
「た……たまたまですよ!たまたま、私たちの家で起きた怪現象が映画でも起きただけなんです!よよよ……よくあることです!」
「……そんなことがよくあったら今頃、世界は、怪現象ばっかり起こるような危ない世界みたいだぞ。そんなことよくあってたまるものか」
「な……なんでそうやって人が明るくなる話題話そうとしたのになんでそうやって空気を読まないんですか!」
いつもみたいに怒っている黒川だが、今日に関しては、完全に怯えがあった。
まあ、確かに、怖いことを忘れようと映画に行ったのに映画でも同じようなことやられたら、そりゃ、トラウマになるだろう。
「まあ、おちつけ、黒川さん。いいかこう考えるんだ。これからどんなことがあろうとも、目の前にいるイケメンな俺が格好良く黒川さんを助けに行く。そうして、黒川さんは、恐怖を忘れるようにその身を俺によがらせて、恐怖を自らの性欲を発散していけば、もう怖いことなんて考えなくて済むぞ!だって、あとは、天井のシミを数えているうちに黒川さんは、何も考えられなくぐらいの性に溺れるのだから!」
「少なくとも、盗撮魔が、イケメンになることなんてないでしょう」
俺の発言を冷たい目で言い放つ黒川さん。正直に言ってその温度差には、恐怖を感じるぞ俺は……
「まあそれは、いいんです。けれど意外ですね」
いいのかい!てっきり心霊現象について言及していくのかとばかり思っていたよ!
「何が意外なんだよ。俺は、いつでもありのままに生きているぞ」
「それは知っています。じゃなくて、水上くんのことだからもっとおしゃれなところに行くのかと思いました。スタ○とか」
「いや……ス○バってご飯を食べるとこじゃないだろう」
「え……ケーキとかサンドウィッチがあるじゃないですか?私、あそこでご飯食べに行ったことありますよ」
本当に不思議である。なぜ、女性という生き物は、昼ご飯にケーキが食べられるのだろうか?ああいうには、軽食であって、別にご飯を食べに行く場所では、ないと俺は、思うのだ。以前に胡桃がダイエットとか言ってご飯を自分だけこんにゃくゼリーにしたりとかして、成長しないから、ごはんは、しっかり食べなといったのだが、なぜかセクハラ扱いを受けたりしたな……
「まあ、女性の胃袋なら良いが、育ち盛りの男っていうのは、質より量なんだよ。けど、女の子を牛丼屋に連れて行くわけにはいかないだろう」
「まあ流石に、私でもそれは引きます」
「そう!それなら、女子でも男子でも満足するには、ファミレスだと思う。ガッツリ食ったり、できるし、デザートも豊富!」
「はぁ……そうですか」
「なんだよ、興味なさそうだな」
つまらなそうにため息をつく黒川さん、どうやらそこまで興味がなさそうに返答してきた。
「まあ、なんでしょう、こんな普通の感性も持ち合わせているのにそんなに、水上くんは、ナルシストなんでしょうか?」
「それは、語弊だ。ナルシストは、自分のことを理解しないでうぬぼれている。しかし俺はうぬぼれなんて一切ない。客観的に見てもイケメンだからな!」
「いや、盗撮魔風情が、何を言っているのですか?」
「俺は、完璧じゃない。弱点がないような、完璧な存在は、嫌われる。例えば、RPGの勇者も魔王が倒したあとどうなると思う?あいつらは、やることがなくなって畏怖され迫害を受ける。結果闇落ちしてしまうかもしれないだろう」
「まあ、そうかもしれないですね。人って自分より強いものを見てしまうと迫害するか、へりくだるかのどちらかですから……人って矛盾の塊ですからね」
珍しく、黒川さんと意見があった。なんというか、これは、これで怖い。
「まあ、そうだよな。黒川さんも、芽唯にいきなり話しかけられたときビビっていたくせに好きな映画は、ホラー映画だもんな」
「悪いですか?私だって人間です。矛盾の一つや二つあります」
少し、不機嫌そうな顔をする黒川さん。
「そうか?怖がりって、もう、ホラー映画どころか、夜道を歩くのも苦手じゃないか?」
「まあ、夜道になにか出てきても、変質者程度なら、ハイパーセンスを使って追っ払えるんですけれど。やはり、実体のないのには、物理攻撃が効かないじゃないですか」
「まあ、そうだわ。けれど、じゃあ、なんで、ホラー映画は好きなんだ?」
「それは、私、死水監督とは、昔馴染みなんですよ。私が辛い時に、いてくれたのは、母さんと死水さんで」
……まさかの有名人と知り合いときた。まあ、裏社会によくありそうな機関に保護されている黒川さんだからな、そういうコネクションがあっても不思議でない。
「じゃあ、今度サインくれよ。死水さんの、ヤフオクで錬金術してくるから」
「クズですか!なんでそんなことばっかりあなたは、考えるんですか!やはり内面が腐ってます!」
「まあイケメンは、何をやっても許されるからな」
「いや、内面腐ってたら、ブサイクですよ!」
「いや!腐っているのは、黒川さんの目だ!どっからどう見ても俺はイケメンだぞ」
そんな話をしていると店員さんが、ものすごく申し訳なさそうに、話しかけてきた。
「あ……あの、お客様……その、痴話喧嘩は、ほかのお客様のご迷惑になりますので……控えていただけますか」
「あ……あ、あの、すみませんでした。その、海鮮サラダをください。……本当にすみませんでした。」
「俺は、ハンバーグにドリアをお願いします。あと、お姉さんも笑顔でいいんですよ。綺麗な顔が台無しですよ」
「あ……ありがとうございます!」
店員さんは、少し顔を赤らめて、そのままバックヤードに行ってしまう。
冷たい目をして俺を睨む黒川さん、まあ、目の前の俺というイケメンが自分以外に声をかけ口説き落としたのだから当たり前か……罪な男だな、俺は……
「いや、なんとなく、水上くんの考えていることが数日一緒にいてなんとなく理解ができます。自惚れ、しない方がいいですよ」
「俺は、至って正常だ」
「どうだか……早く、水上くんの検査結果が出ないですかね……中身の腐ったイケメンとずっと一緒にいたら脳みそが腐りそうです」
「俺は、腐ったミカンか、なにかか……」
非常に不服だったが、この後も同じように他愛もない話をしながら、時間は過ぎていった。
そして、そのあとも、黒川さんとデパートで、買い物をし、センスの悪い洋服を買おうとし俺が止め、結局討論になり、ゲームセンターでは、女性に大人気のキャラクターが景品のユーフォーキャッチャーに大量の連コインをして結局取れず、俺がワンコインで取ってあげたら、何故かものすごく不服そうな顔で睨みつけられる。
俺は、いたって普通な女の子とデートをしている。普段みたいに一人だったり、気のしれた友人だったりとは違い、とても新鮮で黒川さんには、言いたくないが、とても楽しく感じる時間だった。
しかしそんな楽しい時間は、日暮れとともに過ぎて行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます